後半はいよいよ大江山の酒呑童子退治の物語です。まずは広森神楽団「戻橋」。最初に酒呑童子の手下、茨木童子の化身が現れます。老婆となって都へと向かう場面、かなりゆっくりとしたテンポで舞っていきます。これから始まる激闘の物語を思えば、まさに嵐の前の静けさといったところでしょうか。そしてこの演目と言えば、傘売り善兵衛さん!会場の一番後ろから登場し、お客さんにクリスマスプレゼントをばらまいていました。舞台に上がると巧みな話術で会場を沸かせた善兵衛さんですが、そこへ茨木童子の化身が現れます。しかし善兵衛さんのペースに巻き込まれ、思わず化身さんもセリフを間違える始末…。さらに善兵衛さん、続いて登場した渡辺綱にもちょっかいを出してみたり…最後まで笑わせてもらいました。後半はついに酒呑童子が出現。その迫力ある姿が明らかになると、客席からは「おお~」という感嘆の声が。そして坂田金時も加わり、第一戦が始まりました。結果はみなさんご存知のように、茨木童子が左腕を切られるんですが、酒呑童子がその腕をいったん取り返すという演出がありました。お決まりの結果でも、ちょっとした工夫で見る人を引き付けることができるんですね。
続いて山王神楽団「羅生門」。最初にいきなり酒呑童子と茨木童子が登場します。あっという間に老婆へと変化した酒呑童子は、綱の乳母白妙を手にかけ、綱の館へと向かう…。冒頭からかなり激しい内容ですが、これも中盤の演目ならではの面白さ。続けて見ることによって、先の上演の興奮がそのまま持ち越されるように思います。そして綱をだまし、見事左腕を取り返した酒呑童子。白妙に化けた時と鬼の時、その演じ分けも見事で、特に声の変化が素晴らしかったように思います。舞手さんのこだわりを強く感じました。そして一命危うしの綱のもとへ源頼光が参上し、ついに頼光と酒呑童子、この二人が初めて対決。ファンのみなさんの中には、つい鬼のほうを応援したくなる方もおられるかと思います。しかし冒頭の残酷な場面を忘れてはいけません。あくまでも鬼は鬼、そして酒呑童子は絶対的な悪役であることを印象付ける、山王さんならではのこだわりの演出ではないでしょうか。そして鬼人たちは大江山へと逃げ去り、ついに物語はクライマックスを迎えます!
待ちに待った合同演目「大江山」。待ちわびたお客さんの気持ちが溢れ返るような雰囲気の中で始まりました。最初は姫の舞…しかし、会場が何やら騒がしい…どうしてだろうとよく見てみれば、なんと二匹の鬼が客席に現れているではありませんか。そして舞台の上の姫を見つけた鬼は、一気に襲い掛かります。なす術もなく捕らわれてしまった姫、それに追い討ちをかけるように幕からさらに二匹の鬼が出現。この豪華な演出に会場からは大きな歓声と拍手が。ますます興奮が高まる場内、そこへ続いて登場したのは主役の源頼光と四天王の面々。五人の神が勢ぞろいした場面に、これまた大きな歓声と拍手が。今までたくさんの神楽を見てきましたが、神が登場しただけでこんなに大きな拍手が上がったのは記憶にありません。その声援に応えるかのように、勇ましく舞う五人の神たち。その表情からも、大江山へ向かう決意が見てとれるようです。
次は姫の舞。高ぶった気持ちを静めてくれる、寂しさを感じさせる丁寧な舞でした。そして再び五人の神が山伏姿で登場。そしていよいよ鬼の岩屋へと舞台を移します。「童子さん童子さん」。姫の呼びかけに対し、地の底から湧き上がるかのような酒呑童子の声が会場に響きます。さぁ出てくるぞ…と待ち構えた瞬間、七匹もの鬼が一斉に登場。その迫力の前に、今まで勇ましく見えた頼光たちも小さくなったかのようです。広かったはずのステージも埋め尽くされ、一体どこを見ていいものかという豪華な舞台。神が五人、鬼が七匹、姫が三人。今まで見たこともないスケールの大きさで、酒宴が始まりました。黒髪を振り乱し、身体全体で味わうように豪快に酒を飲む童子たち。「ドドンドドン!」と連続する大太鼓の音は、好物の酒を味わう鬼たちの喉が鳴っているかのようです。酒を飲み干した酒呑童子、大声で「酔うたれし、酔うたれしぃ~!」 ファンのみなさんの間でお馴染みのセリフ。しかし酔ったのは鬼だけではありません。会場のみなさんも神楽に酔いしれている状態。
そんな興奮の中、最後の一戦が始まりました。ここで一番興奮していたのはお客さんでも舞手でもなく、おそらくあの方でしょう。見に行かれた方はすぐおわかりかと思いますが、そう、原田神楽団の団長さん。今回も見事なチャンチキの名人芸を披露されました!座っているだけでは足らず、思わず立ち上がりながら鐘を打ち鳴らしたりと大活躍。もうこれ以上やったら会場全体、いや空間自体が壊れてしまうんじゃないかというほどの盛り上がり。舞と楽、そして見る人が一体となり、合同演目「大江山」、そして頼光武勇伝が幕を閉じました。
上演後は神楽団のみなさんがステージに勢ぞろい。それぞれの上演、そして合同演目を見事に成功させた団員さんの努力、それは十分すぎるほどファンの方に伝わったはずです。この合同演目がこれからの「神楽スペシャル」の定番となって欲しい…と思ったのは自分だけではないでしょう。神楽団のみなさん、スタッフのみなさん、本当にお疲れ様でした。そして神楽ファンのみなさん、これからも神楽の応援よろしくお願いします。
2008,12,24 Wed 22:58
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DVDは、キャビネットさんのHPに情報があります。
現在予約受付中です。
キャビネットさんのHP
http://www.kagurajp.com/
です。よ!!
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| 神楽好き | EMAIL | URL | 08/12/30 21:36 | bRN13JE2 |
DVDはいつ頃販売されますか?
| 神楽ファン | EMAIL | URL | 08/12/26 23:16 | iV95cbPg |
ジェラードさん、コメントありがとうございます。
合同演目で楽しむことができるのも、この地域の特徴かもしれませんね!
それにしても豪華な演目でした☆
神楽大好きさん、コメントありがとうございます。
ぜひ、来年も見てみたいですよね!
本当に団員のみなさん、お疲れ様でした。
お正月も神楽イベントがたくさんですね!
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| 特派員 | EMAIL | URL | 08/12/25 20:07 | qi6UEqak |
いやーすごかったですね!解説も丁寧で分かりやすかったですよ!!
合同の練習も大変だと思いますが、定番になればいいですね!!
神楽団のみなさん本当にありがとうございました。
おっと特派員さんも新人さんと一緒に頑張ってくださいね!
お正月の神楽も見に行く予定です。
合同の練習も大変だと思いますが、定番になればいいですね!!
神楽団のみなさん本当にありがとうございました。
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| 神楽大好き | EMAIL | URL | 08/12/25 18:24 | pgrtCzf. |
なんと、頼光主従は豪華な面々ですね~
いつもは競演で舞を競いあっている者同士が一緒に一つの演目に挑むのも大事かもしれませんね。
いつもは競演で舞を競いあっている者同士が一緒に一つの演目に挑むのも大事かもしれませんね。
| ジェラード | EMAIL | URL | 08/12/25 15:58 | IuiyJ9B2 |