宮乃木神楽団「滝夜叉姫」。照明が落とされたステージに、父、平将門の恨みを晴らそうとする五月姫が登場。その姿は先月の月一の舞いで亀山社中さんが上演された「貴船」を彷彿とさせるものでした。そして会場全体に響き渡る、不気味な貴船の荒御霊の声。序盤の大きな見せ場であり、五月姫から滝夜叉姫へと変貌する重要な場面ですね。次に滝夜叉姫が姿を見せた時は、二人の手下を従えて迫力たっぷりの堂々たる姿。それに負けじと、大宅中将光圀らが切り込みます。昨年は宮乃木神楽団さんが10周年を迎えられ、そのイベントでは亀山社中さんの上演もありました。今回はそのお返しとばかりに、いつも以上に熱い舞ぶりだったように思います。
そして続いての上演は深野神楽保存会「国譲(くにゆずり)」。これは出雲神楽になり、普段ファンのみなさんが目にするものとかなり違った印象だったと思います。天照大神の詔に従い、国土を譲るように言われた大国主命。使いの武見雷槌(たけみかづち)との話し合いの結果、詔に従うことになりました。ここで会場のみなさんに餅まきのサービス。中にはわざわざ前の方まで行ってお餅をゲットする方もおられましたね。これでめでたし…と終わるのかと思いきや、大きな面をつけた健御名方(たけみなかた)神が登場し、武見雷槌に力比べを挑んできます。とても印象的な面だな~と見ていると、なんとまゆげと口がガバっと動くではありませんか!この意表を付かれた仕掛けに、会場からはたびたびどよめきが。そして大きな俵を投げ合って力を競うのですが、これを客席に投げて、それをお客さんが投げ返したりという一幕も。今回の上演で、出雲神楽に興味を持たれた方が多くいらっしゃったのではないでしょうか。
再び広島の神楽で山王神楽団「羅生門」。先ほどのほのぼのとした雰囲気とは打って変わり、いきなり茨木童子が荒々しく登場。左腕を失ったその姿を見て、酒呑童子は妖術を使って老婆へと変化。一瞬の早変わりはもちろん、声や舞い方もガラっとチェンジ。本当に見事な変化ぶりで、その後の展開から目が離せません。そして渡辺綱の乳母を手にかけ、今度はその乳母へと成り代わります。この場面は山王さんならではの独特な演出。それと奏楽の盛り上げ方がいいなぁと感じました。石見神楽と比べると、広島の神楽の奏楽はかなりバリエーション豊かに感じますよね。新しい演目や複雑な役どころが多くあるので、その辺のちょっとした違いを上手く表しているように思います。
周布青少年保存会「新日本武尊」。東国征伐を命じられ、吉備の武彦を連れて出発した日本武尊。それを聞いた駿河国の賊たちが、計略を持って命を待ち伏せるのですが、いつもなら兄ぎし弟ぎしの二人が今回は四人登場!しかも二人は客席から登場し、お客さんにサービス。そして賊首神(ひとこのかみ)に教えられた通り、日本武尊をだますのですが、その場面はいろんなアドリブで会場を沸かせておられました。思わず日本武尊さんも笑顔になってましたが、すかさず「あの笑いをこらえとるんが日本武尊で。」というツッコミもあり。やはり一番の爆笑は鹿のモノマネだったでしょうかね(笑) その直後は火花が吹き荒れ、赤い照明の中で合計6人が入り乱れる壮絶な合戦。見どころ満載の上演でした。
琴庄神楽団「奥州平泉」。兄、源頼朝に追われ、奥州平泉の藤原氏を頼って旅路を急ぐ義経一行。冒頭は山伏姿の舞人が四人登場して、丁寧な神舞を披露。衣装も質素で、ちょっと見た目は地味かもしれませんが、舞自体の持つ美しさをじっくりと見ることができたと思います。その後の安宅関で繰り広げられる問答は、もはや説明不要と言ってもいいくらい。何が何でも義経を守ろうとする弁慶、それに心打たれる関守(せきもり)、二人の心情がヒシヒシと伝わってきます。そんな前半があるからこそ、後半の立ち合いもより白熱するはず。最後は弁慶の仁王立ちで幕を閉じるわけですが、照明やドライアイスの演出もあって、まさに戦火の中で無数の矢を受ける情景が浮かんでくるようでした。
最後は亀山社中「八岐大蛇」。今大会を締めくくるべく、社中員全員参加で、登場した大蛇はなんと10頭!!8頭の大蛇はだいぶ見慣れた感がありますが、2匹増えるだけでやはり豪華さが違いますね。前半の舞で大蛇を簡単に退治しそうな、強くて余裕たっぷりといった印象を受けた須佐之男命でしたが、さすがに一度に襲い掛かられると分が悪いようで…。たくさんの大蛇たちに巻かれ、客席からは全く須佐之男命が見えなくなってしまう場面もありました。それに加えて遠慮なく火を吹くんですから、見ている側はハラハラドキドキ。会場のみなさん、見ていた出演者のみなさんで、亀山社中さんの須佐之男命を応援していたように思います。その期待に応えるかのように、一匹ずつ大蛇を払いのけ、そして退治していく須佐之男命。10頭の大蛇=10年の道のりとすれば、切り取られて舞台に並べられた大蛇の頭がとても印象に残りましたね。
以上、全12演目のご紹介でした。そして「その3」で恒例の番外編をお届けします!お楽しみに!
2009,04,21 Tue 23:31
新着コメント
神楽好きさん、コメントありがとうございます。
今回の天蓋、とてもキレイだったと思います!
色が変わってるの気付かれましたか☆
相当マニアックな方ですね~!?
今回の天蓋、とてもキレイだったと思います!
色が変わってるの気付かれましたか☆
相当マニアックな方ですね~!?
| 特派員Y | EMAIL | URL | 09/04/22 21:49 | 3ewNch1A |
1F席の後ろの方の席でみていました。
天蓋が譜第の大会と違ってましたね?
額座も位置で色が変わっていたような気がするのですが・・・???
天蓋が譜第の大会と違ってましたね?
額座も位置で色が変わっていたような気がするのですが・・・???
| 神楽好き | EMAIL | URL | 09/04/22 15:57 | tTBCbx1A |