第三部「新たなる神楽への挑戦」
琴庄神楽団「義経平氏追討」。戦後新しく創作された新作神楽、いわゆる新舞は、多くの人に受け入れられ、現在に至っています。この演目もそんな新舞の一つ。それまでの古典曲目にはない新しい魅力を見ることができます。例えば前半、壇ノ浦の戦いに敗れた平知盛が霊魂となる場面。身体に碇を巻きつけ、海底から這い上がろうとする知盛の姿。照明も青暗く、まさに海の底でもがき苦しんでいる様子が伝わります。ただ退治されるだけではない、奥行きのある悪役とでも言いましょうか、そういった個性が新舞の魅力の一つではないでしょうか。また最後には義経と静御前の別れの場面があります。神楽で恋愛模様が演じられるのは珍しいほうですが、そういった別れの悲しみも盛り込まれています。色々な魅力にみなさんもたっぷり楽しまれたことでしょう。
続いて東山神楽団「戻り橋」。上演が始まると渡辺綱と茨木童子がいきなり対決。薄暗い舞台にスポットライトという照明効果で、まるで月明かりに照らされた戻り橋の情景が浮かんでくるようです。綱の奮闘も空しく茨木童子は逃げ去りますが、後に残された傘には生々しい左の腕が。東山神楽団さんのリアルな演出に、なるほどと頷かれた方もいらしゃったと思います。この演目は切り取られた腕を取り返すという物語がメインとなっています。「戻り橋」と聞くとつい傘売り善兵衛さんを期待してしまいますが、後編の物語だったんですね。ということで見どころはやはり化身の変化。先ほどの茨木童子もそうでしたが、後半登場の酒呑童子の化身。いったい何種類の面で何回変わったんだろうか、という大活躍を見せてくださいました。
大塚神楽団「頼政」。病にかかった帝のために料理をすることになった料理人の平野庄内。選び抜いた食材を持って東三条ヶ森を通ろうとします。すると小さなお猿さんたちに遭遇。小猿たちは庄内の持っている食べ物目当てで出てきた様子。その可愛らしいしぐさに思わず頬が緩んでしまいます。ところが大猿の登場で事態は一変。舞台だけでなく客席にも進出して大暴れの猿達。しかし駆けつけた楓姫によって猿達は退治されてしまいます。小猿さんが転がりながら退場していく姿が、これまた可愛らしかったですね。そして後半は源頼政と鵺の対決。この「頼政」という演目は石見神楽の中でも比較的新しいようですが、大塚さんはそれを色々と調べ上げてより見応えのある、魅力的なものに仕上げられているように感じました。
上河内神楽団「滝夜叉姫」。貴船の荒御霊より妖術を授かった五月姫ですが、序盤は手下二人と穏やかに舞う場面がありました。そこでは神楽歌も歌われ、他ではない優雅な滝夜叉姫を見せていただきました。しかし戦いは避けられません。神楽が進むと、戦が近づくにつれ険しくなる様子が伝わってきます。合戦は複雑かつ速いもので、穏やかだった序盤から段々と盛り上がって、ついに最後にと向かう感覚。一つ一つの舞だけでなく、全体の流れを見ても非常にまとまり感がありましたね。しかし滝夜叉姫の最期は激しさではなく、はかなさを感じました。無念な感情をいっぱいに表し、一刀のもとに斬られて倒れ込む姿。この演目の堂々たる主役に、多くの方が拍手を送られたことと思います。
最後は中川戸神楽団「紅葉狩」。上演前に「あれ、ブラックライトの準備がないなぁ」と思ったのですが、今までと少し変わった内容で魅せてくださいました。中盤、鬼となった紅葉からニョキ~っと角が生えてくる演出は健在だったのですが、個人的にも好きな場面だったのでホッとしました(笑)。後は勢い良くクモの糸が飛び出す仕掛け、これも効果的だったと思います。きっとビックリされた方も多かったことでしょう。そして最後、一度は斬られた紅葉が再び反撃し、随身を棒で突き倒そうとするところ、ここは見ていて力が入りましたね。奏楽さんの盛り上げ方も舞との一体感が感じられてよかったと思います。「ホール神楽」の先駆けとして、そして常に新しい神楽に挑戦される中川戸神楽団さん。今回のイベントに相応しいトリを飾ってくださいました。
以上、全10演目のご紹介でした。そしてパンフレット購入でチャレンジできるガラガラの抽選、今年もしっかりやってきましたよ! 今年こそはと気合を入れたものの、出てきたのは無情にも?白玉…。はい、高級醤油でした(笑) みなさんは何が当たりましたか!?来年も素晴らしい神楽の上演と、ステキな景品を楽しみにしたいですね!!
琴庄神楽団「義経平氏追討」。戦後新しく創作された新作神楽、いわゆる新舞は、多くの人に受け入れられ、現在に至っています。この演目もそんな新舞の一つ。それまでの古典曲目にはない新しい魅力を見ることができます。例えば前半、壇ノ浦の戦いに敗れた平知盛が霊魂となる場面。身体に碇を巻きつけ、海底から這い上がろうとする知盛の姿。照明も青暗く、まさに海の底でもがき苦しんでいる様子が伝わります。ただ退治されるだけではない、奥行きのある悪役とでも言いましょうか、そういった個性が新舞の魅力の一つではないでしょうか。また最後には義経と静御前の別れの場面があります。神楽で恋愛模様が演じられるのは珍しいほうですが、そういった別れの悲しみも盛り込まれています。色々な魅力にみなさんもたっぷり楽しまれたことでしょう。
続いて東山神楽団「戻り橋」。上演が始まると渡辺綱と茨木童子がいきなり対決。薄暗い舞台にスポットライトという照明効果で、まるで月明かりに照らされた戻り橋の情景が浮かんでくるようです。綱の奮闘も空しく茨木童子は逃げ去りますが、後に残された傘には生々しい左の腕が。東山神楽団さんのリアルな演出に、なるほどと頷かれた方もいらしゃったと思います。この演目は切り取られた腕を取り返すという物語がメインとなっています。「戻り橋」と聞くとつい傘売り善兵衛さんを期待してしまいますが、後編の物語だったんですね。ということで見どころはやはり化身の変化。先ほどの茨木童子もそうでしたが、後半登場の酒呑童子の化身。いったい何種類の面で何回変わったんだろうか、という大活躍を見せてくださいました。
大塚神楽団「頼政」。病にかかった帝のために料理をすることになった料理人の平野庄内。選び抜いた食材を持って東三条ヶ森を通ろうとします。すると小さなお猿さんたちに遭遇。小猿たちは庄内の持っている食べ物目当てで出てきた様子。その可愛らしいしぐさに思わず頬が緩んでしまいます。ところが大猿の登場で事態は一変。舞台だけでなく客席にも進出して大暴れの猿達。しかし駆けつけた楓姫によって猿達は退治されてしまいます。小猿さんが転がりながら退場していく姿が、これまた可愛らしかったですね。そして後半は源頼政と鵺の対決。この「頼政」という演目は石見神楽の中でも比較的新しいようですが、大塚さんはそれを色々と調べ上げてより見応えのある、魅力的なものに仕上げられているように感じました。
上河内神楽団「滝夜叉姫」。貴船の荒御霊より妖術を授かった五月姫ですが、序盤は手下二人と穏やかに舞う場面がありました。そこでは神楽歌も歌われ、他ではない優雅な滝夜叉姫を見せていただきました。しかし戦いは避けられません。神楽が進むと、戦が近づくにつれ険しくなる様子が伝わってきます。合戦は複雑かつ速いもので、穏やかだった序盤から段々と盛り上がって、ついに最後にと向かう感覚。一つ一つの舞だけでなく、全体の流れを見ても非常にまとまり感がありましたね。しかし滝夜叉姫の最期は激しさではなく、はかなさを感じました。無念な感情をいっぱいに表し、一刀のもとに斬られて倒れ込む姿。この演目の堂々たる主役に、多くの方が拍手を送られたことと思います。
最後は中川戸神楽団「紅葉狩」。上演前に「あれ、ブラックライトの準備がないなぁ」と思ったのですが、今までと少し変わった内容で魅せてくださいました。中盤、鬼となった紅葉からニョキ~っと角が生えてくる演出は健在だったのですが、個人的にも好きな場面だったのでホッとしました(笑)。後は勢い良くクモの糸が飛び出す仕掛け、これも効果的だったと思います。きっとビックリされた方も多かったことでしょう。そして最後、一度は斬られた紅葉が再び反撃し、随身を棒で突き倒そうとするところ、ここは見ていて力が入りましたね。奏楽さんの盛り上げ方も舞との一体感が感じられてよかったと思います。「ホール神楽」の先駆けとして、そして常に新しい神楽に挑戦される中川戸神楽団さん。今回のイベントに相応しいトリを飾ってくださいました。
以上、全10演目のご紹介でした。そしてパンフレット購入でチャレンジできるガラガラの抽選、今年もしっかりやってきましたよ! 今年こそはと気合を入れたものの、出てきたのは無情にも?白玉…。はい、高級醤油でした(笑) みなさんは何が当たりましたか!?来年も素晴らしい神楽の上演と、ステキな景品を楽しみにしたいですね!!
2010,03,02 Tue 19:55
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