中川戸神楽団「板蓋宮」は、奈良県明日香村にその舞台があります。歴史の授業で習った方も多くおられると思いますが、645年に中大兄皇子が蘇我入鹿を討ったクーデター、乙巳の変(いっしのへん)、そして大化の改新。これらがこの演目の元になっています。台詞の中には歴史のテストに出てきそうなキーワードがあったりして、歴史好きな方にはより楽しめる神楽かもしれませんね。さて「板蓋宮」と言えばファンのみなさんもよくご存知のように、ホール神楽の先駆け、あるいは神楽ブームの火付け役の代表的な演目です。今回のイベントでは舞台にスクリーンという新しい試みがされましたが、そこに映し出された迫力ある鬼の面を見ながら、「これからは新演目だけではなく、神楽の見せ方、楽しませ方も進化していくのかもしれない」という思いを抱きました。
そして原田神楽団「大江山」、これはもちろん京都府にある大江山が舞台です。紹介映像では山中に残された「鬼の足跡」「頼光の腰掛岩」など史跡の紹介もありました。神楽の中で大江山に向かう場面、いつものように舞う頼光たちが、険しい山道を踏み分けて岩屋に登っているような感覚を覚えた方もいらっしゃったことでしょう。この「大江山」という演目は比較的新しいもののようで、「塵倫」や「鍾馗」などと違って昔からある石見神楽の演目ではありません。それだけに神楽団ごとにバラバラと言っていいほど違いがあります。もともとこの大江山の酒呑童子にはいくつもの伝説があり、その中でどのように神楽の演目としてまとめたかで何通りものパターンが出来上がると思います。伝説の地を訪ねたり、あるいは研究することによってさらに楽しみ方が広がることでしょう。
大塚神楽団「悪狐伝」は先に上演された梶矢神楽団「山伏」と同じく、金毛白面九尾の狐が登場します。しかし「山伏」で福島県の安達ヶ原が紹介されたのに対し、この「悪狐伝」は栃木県の那須野ヶ原が舞台となります。これは「山伏」という演目が、安達ヶ原の鬼婆と那須野ヶ原の悪狐の物語を一緒にしているためで、ここが「悪狐伝」との大きな違いとなります。それぞれの地を訪ねればその違いは一目瞭然ですね。さて九尾の狐に負けず劣らずの活躍、十念寺の珍斉和尚さん。きっと楽しみにされていた方も多かったことでしょう!一言しゃべれば客席がドッと沸き、また玉藻前や奏楽さんも苦笑い。実際に十念寺というお寺はいくつかあるそうですが、この珍斉和尚のモデルとなった人物がいたかどうかは定かではありません。ちょっと想像もつかないですよね(笑)。
そして最後は上河内神楽団「紅葉狩」。舞台となった信州戸隠山は長野県にあります。神代の昔に手力男命が投げ捨てた大岩がこの地に落ちて戸隠山となった、というエピソードはこれまで何度かご紹介しましたが、さて「天の岩戸」の舞台と言えば?いくつかの説はありますが、代表的なのはやはり宮崎県の高千穂でしょうね。ということは、手力男命は宮崎から長野まで岩戸を放り投げたことになりますね!さすが力持ちの神様です…。ちょっと話がそれてしまいましたが、鬼女伝説だけでなく、こういう物語もあるくらい、この戸隠山は昔から神秘の山として知られていたんでしょうね。そして山に入り込んでしまった者は紅葉の錦、鬼女の美しさに惑わされて二度と戻らなくなってしまった。豪華絢爛な衣装に身を包み、ドライアイスが立ち込める中でゆったりと舞う鬼女の姿。あるいは一瞬の内に姫から恐ろしい鬼へと変わる姿。伝説の神秘的な魅力を見事な舞と演出で見せてくださいました。
RCC神楽スペシャル、伝説の地を訪ねて。ほとんどの演目がみなさんにお馴染みのものだったと思いますが、こういった企画で改めて見てみると、随分と新鮮な印象を受けられたのではないでしょうか。神楽に限らず、「わからないから面白くない」「わかるから面白い」と感じることは多々あると思います。ファンのみなさんがご自身だけでいろいろ調べようというのはそう簡単なことではないかもしれませんが、今回のイベントでわかったことや新しい発見がきっとあったはず。新しい演目、派手な場面を求めるだけでなく、神楽や伝説に興味を持っていただければいいなと感じた、今回のイベントでした。
2010,07,20 Tue 22:10
新着コメント
KAGURA FAN さん、コメントありがとうございます。
2階席だと舞手さんの顔とか面がよく見えないですよね。
スクリーンが役立ったようですね!
これから活用方法がいろいろ考えられてくるかもしれません。
またコメントお願いします。
2階席だと舞手さんの顔とか面がよく見えないですよね。
スクリーンが役立ったようですね!
これから活用方法がいろいろ考えられてくるかもしれません。
またコメントお願いします。
| 特派員Y | EMAIL | URL | 10/07/22 23:18 | QQdyFAoo |
当日2階席で鑑賞しました。
スクリーンでのアップはいいですね!
演目の解説もわかりやすくでよかったですよ!
ナレーションと写真での紹介でしたが、動画もあればもっとよかったかも?
伝説の地をめぐるツアーも魅力的ですね!
今後の展開に期待しています!
スクリーンでのアップはいいですね!
演目の解説もわかりやすくでよかったですよ!
ナレーションと写真での紹介でしたが、動画もあればもっとよかったかも?
伝説の地をめぐるツアーも魅力的ですね!
今後の展開に期待しています!
| KAGURA FAN | EMAIL | URL | 10/07/21 11:59 | PF8WiEZ. |