2月13日は千代田開発センターで「月一の舞」が行われました。今回のテーマは「仁・義・礼 神楽の物語」。親子、兄弟、君臣など、いろいろな関係における絆や愛といった、人の心に強く訴える物語が、神楽の中で語られます。そんな熱い4演目のご紹介です。
まずは原田神楽団「桜井の駅」。後醍醐(ごだいご)天皇に味方した楠木正成(くすのきまさしげ)は、足利軍と戦うために弟の正季(まさすえ)とともに出陣します。最初の神の舞はとても落ち着いた舞で、まさにこれから死地に赴く(おもむく)という印象を受けました。奏楽も静かに響き渡るような感じで、二人の秘めた覚悟を表しているように思いました。そんな序盤の雰囲気が、中盤に設けられた親子別れの場面をより一層感動的にしているのでしょう。死んでも親について行きたいという、息子正行(まさつら)の必死の思い、その気持ちを十分に理解しながらも追い返す正成。上演前の団員の方のお話でも、「合戦を短くしてでも別れの場面を」ということでしたので、きっと見ているみなさんにもその情熱が伝わったことと思います。
続いて梶矢神楽団「勿来(なこそ)の関」。この神楽のぶろぐに初登場の演目ですが、今回初めてご覧になった方も多くおられたことと思います。源義家(みなもとのよしいえ)が安倍貞任(あべのさだとう)とその弟、宗任(むねとう)を討つという物語で、歴史では前九年の役にあたります。しかし神楽では、義家が安倍氏討伐に向かう途中で、安達ヶ原の鬼女お岩を退治するというエピソードが追加されています。さらに安達ヶ原の案内をするチャリ役まで登場し、バラエティ豊かな内容で楽しませてくださいました。中でも鬼女お岩はあっと驚く手法で変化し、きっと多くの方がその恐ろしい顔に釘付けになられたことでしょう!初めてご覧になった方には強烈なインパクトだったと思います…。そしてお岩を退治した後は安倍氏と合戦、これにも勝利するのですが、注目は最後の最後。兄の貞任は討ち取られますが弟の宗任は降伏します。義家は文武両道に長けた宗任を討つのは惜しいとして、源家に仕えるように言い渡します。命を救ってもらった礼として忠義を尽くすというドラマが最後に待っていました。
前九年の役に続いて起こったのが後三年の役、これを舞台にしたのが宮乃木神楽団「新羅三郎(しんらさぶろう)」です。前九年の役では出羽(でわ)国の豪族、清原氏の加勢を得て安倍氏を討伐した義家でしたが、今度はその清原一族の内乱を治める戦いへ参戦。しかし清原家衡(いえひら)と武衡(たけひら)の軍勢の前に苦戦を強いられます。それを聞いた義家の弟、新羅三郎源義光(よしみつ)は京を離れ奥州へと向かいます。その途中、義光を慕う豊原時秋(とよはらのときあき)が参戦を願い出ますが、義光はこれを諭(さと)します。「桜井の駅」と同じように、行く者と帰る者の別れの場面が、二人の絆を結ぶ笙(しょう)の秘曲と共に演じられました。そして別れの後は出会い。兄義家と弟義光の再会で、物語はいよいよクライマックスへ。弟の参戦で「百万の軍勢を得た」と勢いづく義家らと家衡・武衡の激しい合戦。「いかに叔父上!」と残して討たれた家衡の最期を目の当たりにした武衡。その怒り狂う様子にも思わず胸が熱くなりました。
そして最後は浜田市の後野神楽社中「鏡山」。地元に残る「烈女お初」の物語を神楽化したものです。侮辱を受けて自害した主の仇を討つという、日本人にお馴染みの「忠臣蔵」に通じる物語がこの神楽の元になっています。尾上(おのえ)に仕えるお初(おはつ)、そして尾上を自害に追いやった岩藤(いわふじ)と諏訪(すわ)、登場人物はすべて女性。しかしそれぞれの舞は実に個性的で、見ていて非常に興味深いと思います。そして岩藤が魅せる面の早変わりもこの演目の見どころ。どれも印象的な面で、特に物語が進むにつれて段々と恐ろしい面になってくるところにこだわりを感じました。そしてその悪役の存在感が、主役のお初をさらに引き立たせ、その舞はより凛々しく力強く見えましたね。主の仇を討ち、そして舞い終えてピシっと一点を見つめる姿は、今回のテーマを改めて考えさせてくださいました。
そして上演後は恒例の撮影会で、今回は後野神楽社中さんが登場。神楽の中では激しく戦ったお初と岩藤の怨霊が仲良く?協力してくださいました。これは貴重な写真が撮れたのではないでしょうか。先月ほどではありませんでしたが、大雪に見舞われた今回の月一。さらに開発センターの空調も故障して、会場内は外と変わらぬくらいの寒さに。しかしそんな中、最後まで応援してくださったファンのみなさんが、大勢おられたことはとても嬉しかったですね。同じく寒い中、しっかりと舞い切った神楽団の熱演に、途中で帰ることなく最後まで拍手を送られていた光景に、ここにも今回のテーマ「仁・義・礼」を見た気がしました。さて来月の月一は年度を締めくくる開催となります。たくさんの方のご来場をお待ちしております。
まずは原田神楽団「桜井の駅」。後醍醐(ごだいご)天皇に味方した楠木正成(くすのきまさしげ)は、足利軍と戦うために弟の正季(まさすえ)とともに出陣します。最初の神の舞はとても落ち着いた舞で、まさにこれから死地に赴く(おもむく)という印象を受けました。奏楽も静かに響き渡るような感じで、二人の秘めた覚悟を表しているように思いました。そんな序盤の雰囲気が、中盤に設けられた親子別れの場面をより一層感動的にしているのでしょう。死んでも親について行きたいという、息子正行(まさつら)の必死の思い、その気持ちを十分に理解しながらも追い返す正成。上演前の団員の方のお話でも、「合戦を短くしてでも別れの場面を」ということでしたので、きっと見ているみなさんにもその情熱が伝わったことと思います。
続いて梶矢神楽団「勿来(なこそ)の関」。この神楽のぶろぐに初登場の演目ですが、今回初めてご覧になった方も多くおられたことと思います。源義家(みなもとのよしいえ)が安倍貞任(あべのさだとう)とその弟、宗任(むねとう)を討つという物語で、歴史では前九年の役にあたります。しかし神楽では、義家が安倍氏討伐に向かう途中で、安達ヶ原の鬼女お岩を退治するというエピソードが追加されています。さらに安達ヶ原の案内をするチャリ役まで登場し、バラエティ豊かな内容で楽しませてくださいました。中でも鬼女お岩はあっと驚く手法で変化し、きっと多くの方がその恐ろしい顔に釘付けになられたことでしょう!初めてご覧になった方には強烈なインパクトだったと思います…。そしてお岩を退治した後は安倍氏と合戦、これにも勝利するのですが、注目は最後の最後。兄の貞任は討ち取られますが弟の宗任は降伏します。義家は文武両道に長けた宗任を討つのは惜しいとして、源家に仕えるように言い渡します。命を救ってもらった礼として忠義を尽くすというドラマが最後に待っていました。
前九年の役に続いて起こったのが後三年の役、これを舞台にしたのが宮乃木神楽団「新羅三郎(しんらさぶろう)」です。前九年の役では出羽(でわ)国の豪族、清原氏の加勢を得て安倍氏を討伐した義家でしたが、今度はその清原一族の内乱を治める戦いへ参戦。しかし清原家衡(いえひら)と武衡(たけひら)の軍勢の前に苦戦を強いられます。それを聞いた義家の弟、新羅三郎源義光(よしみつ)は京を離れ奥州へと向かいます。その途中、義光を慕う豊原時秋(とよはらのときあき)が参戦を願い出ますが、義光はこれを諭(さと)します。「桜井の駅」と同じように、行く者と帰る者の別れの場面が、二人の絆を結ぶ笙(しょう)の秘曲と共に演じられました。そして別れの後は出会い。兄義家と弟義光の再会で、物語はいよいよクライマックスへ。弟の参戦で「百万の軍勢を得た」と勢いづく義家らと家衡・武衡の激しい合戦。「いかに叔父上!」と残して討たれた家衡の最期を目の当たりにした武衡。その怒り狂う様子にも思わず胸が熱くなりました。
そして最後は浜田市の後野神楽社中「鏡山」。地元に残る「烈女お初」の物語を神楽化したものです。侮辱を受けて自害した主の仇を討つという、日本人にお馴染みの「忠臣蔵」に通じる物語がこの神楽の元になっています。尾上(おのえ)に仕えるお初(おはつ)、そして尾上を自害に追いやった岩藤(いわふじ)と諏訪(すわ)、登場人物はすべて女性。しかしそれぞれの舞は実に個性的で、見ていて非常に興味深いと思います。そして岩藤が魅せる面の早変わりもこの演目の見どころ。どれも印象的な面で、特に物語が進むにつれて段々と恐ろしい面になってくるところにこだわりを感じました。そしてその悪役の存在感が、主役のお初をさらに引き立たせ、その舞はより凛々しく力強く見えましたね。主の仇を討ち、そして舞い終えてピシっと一点を見つめる姿は、今回のテーマを改めて考えさせてくださいました。
そして上演後は恒例の撮影会で、今回は後野神楽社中さんが登場。神楽の中では激しく戦ったお初と岩藤の怨霊が仲良く?協力してくださいました。これは貴重な写真が撮れたのではないでしょうか。先月ほどではありませんでしたが、大雪に見舞われた今回の月一。さらに開発センターの空調も故障して、会場内は外と変わらぬくらいの寒さに。しかしそんな中、最後まで応援してくださったファンのみなさんが、大勢おられたことはとても嬉しかったですね。同じく寒い中、しっかりと舞い切った神楽団の熱演に、途中で帰ることなく最後まで拍手を送られていた光景に、ここにも今回のテーマ「仁・義・礼」を見た気がしました。さて来月の月一は年度を締めくくる開催となります。たくさんの方のご来場をお待ちしております。
2011,02,15 Tue 00:24
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