13団体の競演と特別出演1団体、まさに記念すべき大イベントとなった「第60回西中国選抜神楽競演大会」が、9月8日に安芸太田町の加計体育館で行われました。まだまだ残暑の厳しい時期で、ご覧になるファンの方も大変だったことと思います。儀式舞が始まったのがお昼の12時半で、すべての上演が終了したのが夜11時半すぎ。しかし、ほぼ予定通りの時間進行で、途中の休憩もちゃんとあり、スタッフのみなさんの働きぶりのよさがうかがえました。また記念大会ということで、上演前に祭典があったのも、個人的にはすごくよかったと思います。では競演の部を見ていきましょう!
まずあさひが丘神楽団「源頼政ぬえ退治」。鬼でも狐でもない、「ぬえ」という怪物を表現しながら舞うということは、舞った方にしかわからない難しさがあるように思います。出幕などは特に「塵輪」と似てきてしまうので、ぬえらしい舞はどうすればいいか、あれこれ考えられていることでしょう。それと神のお二人のキビキビした舞が印象的でした。
上河内神楽団「紅葉狩」。鬼女大王を舞われたのは、「神楽リレー」4人目のランナー石川啓介さんでしたが、みなさんご注目していただけたでしょうか。平維茂たちが酔いつぶれて食いかかろうとする場面、「骨をば噛みくだぁ~かん~!」の口上は本当に力強く、会場の空気をガラッと変えてしまうほどインパクトがありました。
津浪神楽団「塵倫」。旧舞の部で準優勝されました。やはりこの演目の最大の見せ場と言えば、鬼が出てくる出幕の場面でしょうね!ゆっくりと、恐ろしさを表現しながら、あるいは辺りの様子をうかがうようにしながらの登場は、舞手さんの芸の見せ所であり、個人の見せ方の工夫が見られるところではないでしょうか。これで完成!というのはないと思いますので、何回もじっくり見たいところですね!
東山神楽団「滝夜叉姫」。今週の見どころでもポイントにあげた、面を変えるタイミング。東山さんもいろいろな工夫でファンの方を楽しませてくれますが、今回も見事でしたね!特にこの演目は、クライマックスにまた面を外すという見せ場もありますから、最後まで目が離せません。また迫力ある大太鼓をはじめ、奏楽の方の盛り上げ方も素晴らしかったです。
細谷社中「岩戸」。この演目は、神楽団にとって儀式舞と同じくらい大切な演目ではないかと思うのですが、なかなか競演では上演が少ないように思います。確かにこれと言った見せ場もなく、口上も難しいし、立ち合いもない、と地味な演目ですが、この演目で優勝されるということは非常に価値のあることかもしれません。今回は残念ながら入賞はありませんでしたが、51回大会で見事優勝されています。
大塚神楽団「戻り橋」。この演目もなかなか競演では珍しいかと思います。傘売り善兵衛さんも、アドリブのセリフなく、台本通りでしたので、少し物足りないと思われた方もおられるかもしれませんね。しかし大太鼓の方が個人賞を取られたように、とても完成度の高い上演だったように思います。酒呑童子が現れる場面はドライアイスの効果もあって、いかにも主役登場!という雰囲気がとてもよかったですね。
旧舞の部で見事優勝された三谷神楽団「大江山」。酒呑童子を舞われた方、そして大太鼓の方が個人賞と、まさに総なめ状態。それほど素晴らしい上演だったことは間違いないでしょう。一体どこまで速くなるんだろうと思うほどの立ち合いのテンポ。奏楽も舞手も一緒になった感じで、まさに大熱演でしたね。6月の戸河内での大会では惜しくも準優勝だっただけに、ファンの方も今回の優勝がより一層喜ばしい結果となったことでしょう。
広森神楽団「土蜘蛛」。この演目の主役は何と言っても土蜘蛛の精魂を舞われた方だと思いますが、その演技、存在感は圧倒的と言えるほど。指先の角度や、その視線など、独特の怪しさに、すっかりファンになられた方も多いでしょうね。頼光を取り食らおうとする前、「我が思い届く今宵のさや風に雲の流れに月も隠るる」という歌を歌われるのですが、これがまさに見せ場。だんだんと正体を現す土蜘蛛の姿が見えるようでした。
苅屋形神楽団「塵輪」。先に上演された津浪神楽団さんとの違いに注目していただけたでしょうか。まずは衣装がずいぶん違っていたと思います。神は帯中津彦命(たらしなかつひこのみこと)と高丸ですが、位の高いほうが水干(すいかん)、家来の方が鎧という衣装でしたね。また鬼も重たい四天(よてん)を着たまま、激しい立ち合いをされます。これは相当しんどいでしょうね…。
新舞の部で見事優勝された横田神楽団「吾妻山」。こちらも、旧舞の部で優勝された三谷さんのように、どこまで速くなるのかと思わせる立ち合いが素晴らしいですね!あれだけ速く回っているのに、少しも舞手さんの動きがブレず、きちんとそろっているのは本当にお見事の一言。ムダな動きが一切ない、まさに洗練された舞ではなかったでしょうか。ファンの方の声援も一段と大きかったように思います。
川北神楽団「鍾馗」。先ほどの苅屋形さんの「塵輪」のように、神も鬼も最後まで重たい衣装を着たまま舞われるので、本当にしんどい演目だと思います。神は立ち合いが終わってもまだ喜びの舞がありますし、鍾馗の鬼は低い姿勢で舞うことが多いので、これもまた相当な体力が必要です。今年、川北さんはこの「鍾馗」を中心にして上演されていますが、この演目での優勝はまだありません。ファンの方も次回こそは!と応援に力が入ることでしょう。
原田神楽団「大江山」は、新舞の部で準優勝と、紅葉姫を舞われた方が個人賞を受賞されました。この役で個人賞というのは、ちょっと過去に聞いた記憶がないですね。特に「大江山」でメインとなるのはやはり鬼たちですから、紅葉姫は脇役になってしまうかもしれません。口上、それから布をさらす場面の舞はもちろん、個人的には童子たちに酒を注ぐ場面がよかったと思います。あの場面で一番あちこち動くのは紅葉姫ですが、あくまで童子たちが目立つように立ち回り、見る人に自分の印象を残さないようにされていたのはさすがです。なかなかこういう芸は見れるものではありませんね!
上府社中「大蛇」。ちょうど1年前のこの大会で初めて拝見し、その大蛇の舞と優勝という結果に衝撃を受けたのをよく覚えています。何回見ても大蛇のなめらかな動きは素晴らしいですね。本当に生きているかのような、作り物と思わせない芸。これまたなかなか見ることはできません。派手さはないかもしれませんが、息のそろった「大蛇」は本当に必見ですよ!まだご覧になったことのない方は是非!
最後は特別出演の琴庄神楽団「奥州平泉」。夜遅くなり、さすがにお客さんの数も減ってしまいましたが、最後までしっかりご覧になったファンの方には自分からも感謝したいですね。この演目は琴庄さんの創作ということもあり、団員の方の思い入れも相当なものがあると思います。それだけに、安宅関(あたかのせき)や、その直後の義経と弁慶のやり取りなど、見ていて胸が熱くなる場面ばかり。お客さんの大きな声援と拍手はしっかりと団員さんに届いたことでしょう。
というように、長時間に渡る大イベントが無事終了しました。最後に少し気になったことを記したいと思います。幕間で、「お客様にお願いします。神楽上演中はお静かにご鑑賞されるようにお願い申し上げます。」という内容のアナウンスが流れたことなんですが、パッと聞いて、みなさんはどう思われるでしょうか。ファンの方からすれば、好きな神楽団への応援はしたいでしょうし、神楽団の方も、お客さんの反応が全く無いのは寂しいことだと思います。ただそれでもあえてこのアナウンスということは、もしかしたら一部の方のマナーの悪さで、迷惑された方がいらっしゃったのかもしれません。もちろん真意はわかりませんが、もしそうだとしてもこのアナウンスでは違和感を感じざるをえません。上演された神楽と直接関係はないかもしれませんが、ちょっとみなさんに考えていただきたく、あえて書かせていただきました。ファンのみなさん、くれぐれも他の方の迷惑にならないよう、お気をつけください。
この記事が面白い・勉強になったと思われたら迷わずクリック
まずあさひが丘神楽団「源頼政ぬえ退治」。鬼でも狐でもない、「ぬえ」という怪物を表現しながら舞うということは、舞った方にしかわからない難しさがあるように思います。出幕などは特に「塵輪」と似てきてしまうので、ぬえらしい舞はどうすればいいか、あれこれ考えられていることでしょう。それと神のお二人のキビキビした舞が印象的でした。
上河内神楽団「紅葉狩」。鬼女大王を舞われたのは、「神楽リレー」4人目のランナー石川啓介さんでしたが、みなさんご注目していただけたでしょうか。平維茂たちが酔いつぶれて食いかかろうとする場面、「骨をば噛みくだぁ~かん~!」の口上は本当に力強く、会場の空気をガラッと変えてしまうほどインパクトがありました。
津浪神楽団「塵倫」。旧舞の部で準優勝されました。やはりこの演目の最大の見せ場と言えば、鬼が出てくる出幕の場面でしょうね!ゆっくりと、恐ろしさを表現しながら、あるいは辺りの様子をうかがうようにしながらの登場は、舞手さんの芸の見せ所であり、個人の見せ方の工夫が見られるところではないでしょうか。これで完成!というのはないと思いますので、何回もじっくり見たいところですね!
東山神楽団「滝夜叉姫」。今週の見どころでもポイントにあげた、面を変えるタイミング。東山さんもいろいろな工夫でファンの方を楽しませてくれますが、今回も見事でしたね!特にこの演目は、クライマックスにまた面を外すという見せ場もありますから、最後まで目が離せません。また迫力ある大太鼓をはじめ、奏楽の方の盛り上げ方も素晴らしかったです。
細谷社中「岩戸」。この演目は、神楽団にとって儀式舞と同じくらい大切な演目ではないかと思うのですが、なかなか競演では上演が少ないように思います。確かにこれと言った見せ場もなく、口上も難しいし、立ち合いもない、と地味な演目ですが、この演目で優勝されるということは非常に価値のあることかもしれません。今回は残念ながら入賞はありませんでしたが、51回大会で見事優勝されています。
大塚神楽団「戻り橋」。この演目もなかなか競演では珍しいかと思います。傘売り善兵衛さんも、アドリブのセリフなく、台本通りでしたので、少し物足りないと思われた方もおられるかもしれませんね。しかし大太鼓の方が個人賞を取られたように、とても完成度の高い上演だったように思います。酒呑童子が現れる場面はドライアイスの効果もあって、いかにも主役登場!という雰囲気がとてもよかったですね。
旧舞の部で見事優勝された三谷神楽団「大江山」。酒呑童子を舞われた方、そして大太鼓の方が個人賞と、まさに総なめ状態。それほど素晴らしい上演だったことは間違いないでしょう。一体どこまで速くなるんだろうと思うほどの立ち合いのテンポ。奏楽も舞手も一緒になった感じで、まさに大熱演でしたね。6月の戸河内での大会では惜しくも準優勝だっただけに、ファンの方も今回の優勝がより一層喜ばしい結果となったことでしょう。
広森神楽団「土蜘蛛」。この演目の主役は何と言っても土蜘蛛の精魂を舞われた方だと思いますが、その演技、存在感は圧倒的と言えるほど。指先の角度や、その視線など、独特の怪しさに、すっかりファンになられた方も多いでしょうね。頼光を取り食らおうとする前、「我が思い届く今宵のさや風に雲の流れに月も隠るる」という歌を歌われるのですが、これがまさに見せ場。だんだんと正体を現す土蜘蛛の姿が見えるようでした。
苅屋形神楽団「塵輪」。先に上演された津浪神楽団さんとの違いに注目していただけたでしょうか。まずは衣装がずいぶん違っていたと思います。神は帯中津彦命(たらしなかつひこのみこと)と高丸ですが、位の高いほうが水干(すいかん)、家来の方が鎧という衣装でしたね。また鬼も重たい四天(よてん)を着たまま、激しい立ち合いをされます。これは相当しんどいでしょうね…。
新舞の部で見事優勝された横田神楽団「吾妻山」。こちらも、旧舞の部で優勝された三谷さんのように、どこまで速くなるのかと思わせる立ち合いが素晴らしいですね!あれだけ速く回っているのに、少しも舞手さんの動きがブレず、きちんとそろっているのは本当にお見事の一言。ムダな動きが一切ない、まさに洗練された舞ではなかったでしょうか。ファンの方の声援も一段と大きかったように思います。
川北神楽団「鍾馗」。先ほどの苅屋形さんの「塵輪」のように、神も鬼も最後まで重たい衣装を着たまま舞われるので、本当にしんどい演目だと思います。神は立ち合いが終わってもまだ喜びの舞がありますし、鍾馗の鬼は低い姿勢で舞うことが多いので、これもまた相当な体力が必要です。今年、川北さんはこの「鍾馗」を中心にして上演されていますが、この演目での優勝はまだありません。ファンの方も次回こそは!と応援に力が入ることでしょう。
原田神楽団「大江山」は、新舞の部で準優勝と、紅葉姫を舞われた方が個人賞を受賞されました。この役で個人賞というのは、ちょっと過去に聞いた記憶がないですね。特に「大江山」でメインとなるのはやはり鬼たちですから、紅葉姫は脇役になってしまうかもしれません。口上、それから布をさらす場面の舞はもちろん、個人的には童子たちに酒を注ぐ場面がよかったと思います。あの場面で一番あちこち動くのは紅葉姫ですが、あくまで童子たちが目立つように立ち回り、見る人に自分の印象を残さないようにされていたのはさすがです。なかなかこういう芸は見れるものではありませんね!
上府社中「大蛇」。ちょうど1年前のこの大会で初めて拝見し、その大蛇の舞と優勝という結果に衝撃を受けたのをよく覚えています。何回見ても大蛇のなめらかな動きは素晴らしいですね。本当に生きているかのような、作り物と思わせない芸。これまたなかなか見ることはできません。派手さはないかもしれませんが、息のそろった「大蛇」は本当に必見ですよ!まだご覧になったことのない方は是非!
最後は特別出演の琴庄神楽団「奥州平泉」。夜遅くなり、さすがにお客さんの数も減ってしまいましたが、最後までしっかりご覧になったファンの方には自分からも感謝したいですね。この演目は琴庄さんの創作ということもあり、団員の方の思い入れも相当なものがあると思います。それだけに、安宅関(あたかのせき)や、その直後の義経と弁慶のやり取りなど、見ていて胸が熱くなる場面ばかり。お客さんの大きな声援と拍手はしっかりと団員さんに届いたことでしょう。
というように、長時間に渡る大イベントが無事終了しました。最後に少し気になったことを記したいと思います。幕間で、「お客様にお願いします。神楽上演中はお静かにご鑑賞されるようにお願い申し上げます。」という内容のアナウンスが流れたことなんですが、パッと聞いて、みなさんはどう思われるでしょうか。ファンの方からすれば、好きな神楽団への応援はしたいでしょうし、神楽団の方も、お客さんの反応が全く無いのは寂しいことだと思います。ただそれでもあえてこのアナウンスということは、もしかしたら一部の方のマナーの悪さで、迷惑された方がいらっしゃったのかもしれません。もちろん真意はわかりませんが、もしそうだとしてもこのアナウンスでは違和感を感じざるをえません。上演された神楽と直接関係はないかもしれませんが、ちょっとみなさんに考えていただきたく、あえて書かせていただきました。ファンのみなさん、くれぐれも他の方の迷惑にならないよう、お気をつけください。
この記事が面白い・勉強になったと思われたら迷わずクリック
2007,09,09 Sun 22:48
コメント
とおりすがり・・・・さん、コメントありがとうございます。
そうだったんですか!
それはまた、素晴らしいことですね!!
自分は第一回のグランプリのころは大会やイベントに行ってませんでしたねぇ…^^;
貴重な情報、ありがとうございました☆
またコメントお願いします!
そうだったんですか!
それはまた、素晴らしいことですね!!
自分は第一回のグランプリのころは大会やイベントに行ってませんでしたねぇ…^^;
貴重な情報、ありがとうございました☆
またコメントお願いします!
| 特派員 | EMAIL | URL | 07/09/11 18:51 | BFfnvy1Y |
私目の記憶が確かならば、同じ原田神楽団さんで、第1回のグランプリかなにかで、大江山の紅葉姫で個人賞があったかと・・・・・・
| とおりすがり・・・・ | EMAIL | URL | 07/09/11 12:34 | /EioC4jQ |
五月さん、コメントありがとうございます。
とっても暑い会場で、自分も含めみなさん大変だったと思います^^;
少しでも雰囲気伝わりましたかね☆
また今週も視察に行ってきます!
とっても暑い会場で、自分も含めみなさん大変だったと思います^^;
少しでも雰囲気伝わりましたかね☆
また今週も視察に行ってきます!
| 特派員 | EMAIL | URL | 07/09/10 18:43 | BFfnvy1Y |
競演大会遅くまでお疲れ様でした。さぞかし暑かったのでは…
夜中掲示板で結果を知り、横田の優勝にテンション上がりました。
報告ありがとうございました。
夜中掲示板で結果を知り、横田の優勝にテンション上がりました。
報告ありがとうございました。
| 五月 | EMAIL | URL | 07/09/09 23:39 | MZc4TY.E |
コメントする
この記事のトラックバックURL
http://www.npo-hiroshima.jp/blogn/tb.php/157
トラックバック