6月7日は安芸太田町の戸河内ふれあいセンターで第29回中国地方選抜神楽競演大会が行われました。暑過ぎず寒すぎず、わりと過ごしやすい一日だったと思います。開場の11時には、早くから来られた方が長蛇の列。競演大会でおなじみの光景でしたね!
新舞の部で優勝された横田神楽団「伊吹山」。横田神楽団と言えば「紅葉狩」「葛城山」「滝夜叉姫」などのいわゆる鬼女もの、というイメージを持たれている方も多くおられると思います。しかしこの演目は鬼女が出たりしませんし、面の早変わりなどもありません。一昨年、途絶えていたものを20数年ぶりに復活させたとお聞きしました。その演目でこういう結果を出されたことは、神楽団のみなさんにとって大変意義あることではないかと思います。一度途絶えたものを再び、というのは並大抵のことではありませんが、これに続く神楽団がドンドン出てきて欲しいですね!
新舞の部、準優勝は大塚神楽団「土蜘蛛」。胡蝶を舞われた方、笛を吹かれた方がそれぞれ個人賞と、完成度の高い上演だったように思います。しかし、どちらかと言うとベテランというよりは若手中心のメンバーだったように思います。もちろん若くしてベテラン、という方もおられるかもですが(笑) そして大塚神楽団の「土蜘蛛」の特徴の一つに、立ち合いの前のセリフが挙げられます。鬼が言う「汝ら両名、我が命までも取ろうとやぁ~!?」のセリフ。悪役として登場しますが、討ち取られる者のはかなさを感じる部分ではないかと思います。
旧舞の部の優勝は津浪神楽団「鍾馗」。スサノオと疫病神だけが登場しますが、それぞれの見事な舞が魅力です。例えばこの画像、疫病神の登場の場面。スサノオが茅の輪をかざして待ち構え、幕の下からじわじわと出てくる疫病神。普通の演目なら鬼のほうが迫力ありますが、この演目はどちらかと言うと逆。いかなる鬼でも退治せん、という気迫を感じるスサノオの舞は本当に迫力タップリです。対して鬼のほうは、全ての病気を司るというように、にじみ出るような怖さを舞で表現されていると思います。実に見応えのある大熱演でしたね。
そして旧舞の準優勝は龍南神楽団「大江山」。前回の特派員報告で、苅屋形さんの「塵輪」はキビキビした印象と書いたんですが、こちらの龍南さんはゆったりとした印象。特に神舞と姫舞は、一歩ずつ丁寧に歩まれ、ムダな動きが全く無いような感じです。しかし回るところでは素早くサッと回るなど、メリハリの利いた舞です。この緩急のリズムが非常に心地よいですね。立ち合いでもこれは同じです。ゆっくりするところ、速くするところ、止まるところ。こういった基本的なことを追求するだけでも、さらに技量が上達するように感じられました。
その他では、珍しい演目だった佐々部神楽団「玉藻前」。いわゆる悪狐伝三部作の前編の物語です。ファンのみなさんにおなじみなのは、ユーモラスな珍斉和尚さんが登場して、三浦介らが狐を退治する中編だと思いますが、これはその前の話になるわけですね!金毛白面九尾の狐が玉藻前となって宮中に入り込みますが、安部泰親に正体を見破られ、那須野ヶ原へと逃げ去るというあらすじ。ちょっと見栄えはしないかもしれませんが、セリフでのやり取りが実に見応えありです。特に中盤で泰親と玉藻前の問答が素晴らしいもの。「降りおろうぞ、泰親よ!」と清明が意外にも破れるところは実に興味深い場面です。
そして旧舞の部、舞の個人賞を受賞されたのが松原神楽社中「十羅刹女」。こちらも「鍾馗」と同じく、神一人鬼一人の演目です。そして個人賞を受賞されたのが、神である十羅刹女を舞われた方。この十羅刹女は、スサノオの末娘という役で、柔らかさの中に力強さがあるというような、難しい役柄ではないかと思います。非常にダイナミックな楽に合わせて、時にゆったり、時に激しく、そしてビシっと決めたり。こちらも見応え抜群でした。
そして最後に後野神楽社中「鏡山」。約一年ぶりに拝見しましたが、前半が少し変わっていたのはすぐに気付きました。諏訪(すわ)が草履(ぞうり)をすり替える場面から始まりました。以前はセリフで語るのみだったのですが、こちらのほうがよりわかりやすいですね!そして次に、尾上(おのえ)とお初の登場。以前は一人ずつ登場だったと思うのですが、二人舞での登場で、(誤解を恐れずに言えば)より神楽らしくなったのでは、という感じがしました。地元に伝わる物語の創作演目というだけに、より良い神楽にしようという思いが伝わってきました。
本当にたくさんの大熱演、ファンのみなさんにも満足な一日になったと思います。ついでに一つ付け加えを。新舞の舞の部で個人賞を取られたのが、大塚神楽団の井上隆太さんでした。以前神楽リレーにもご出演いただいたので、個人的にも非常に嬉しかったですね!で、表彰式で登場…と思ったのですが、どうやらお父様が代わりに出てこられた様子。にも関わらず、場内からはわざと「隆太!隆太!!」の掛け声が飛んでいたのには笑いました。というわけで、ちょっと番外な報告もありましたが、以上で今回の記事を終わります。
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新舞の部で優勝された横田神楽団「伊吹山」。横田神楽団と言えば「紅葉狩」「葛城山」「滝夜叉姫」などのいわゆる鬼女もの、というイメージを持たれている方も多くおられると思います。しかしこの演目は鬼女が出たりしませんし、面の早変わりなどもありません。一昨年、途絶えていたものを20数年ぶりに復活させたとお聞きしました。その演目でこういう結果を出されたことは、神楽団のみなさんにとって大変意義あることではないかと思います。一度途絶えたものを再び、というのは並大抵のことではありませんが、これに続く神楽団がドンドン出てきて欲しいですね!
新舞の部、準優勝は大塚神楽団「土蜘蛛」。胡蝶を舞われた方、笛を吹かれた方がそれぞれ個人賞と、完成度の高い上演だったように思います。しかし、どちらかと言うとベテランというよりは若手中心のメンバーだったように思います。もちろん若くしてベテラン、という方もおられるかもですが(笑) そして大塚神楽団の「土蜘蛛」の特徴の一つに、立ち合いの前のセリフが挙げられます。鬼が言う「汝ら両名、我が命までも取ろうとやぁ~!?」のセリフ。悪役として登場しますが、討ち取られる者のはかなさを感じる部分ではないかと思います。
旧舞の部の優勝は津浪神楽団「鍾馗」。スサノオと疫病神だけが登場しますが、それぞれの見事な舞が魅力です。例えばこの画像、疫病神の登場の場面。スサノオが茅の輪をかざして待ち構え、幕の下からじわじわと出てくる疫病神。普通の演目なら鬼のほうが迫力ありますが、この演目はどちらかと言うと逆。いかなる鬼でも退治せん、という気迫を感じるスサノオの舞は本当に迫力タップリです。対して鬼のほうは、全ての病気を司るというように、にじみ出るような怖さを舞で表現されていると思います。実に見応えのある大熱演でしたね。
そして旧舞の準優勝は龍南神楽団「大江山」。前回の特派員報告で、苅屋形さんの「塵輪」はキビキビした印象と書いたんですが、こちらの龍南さんはゆったりとした印象。特に神舞と姫舞は、一歩ずつ丁寧に歩まれ、ムダな動きが全く無いような感じです。しかし回るところでは素早くサッと回るなど、メリハリの利いた舞です。この緩急のリズムが非常に心地よいですね。立ち合いでもこれは同じです。ゆっくりするところ、速くするところ、止まるところ。こういった基本的なことを追求するだけでも、さらに技量が上達するように感じられました。
その他では、珍しい演目だった佐々部神楽団「玉藻前」。いわゆる悪狐伝三部作の前編の物語です。ファンのみなさんにおなじみなのは、ユーモラスな珍斉和尚さんが登場して、三浦介らが狐を退治する中編だと思いますが、これはその前の話になるわけですね!金毛白面九尾の狐が玉藻前となって宮中に入り込みますが、安部泰親に正体を見破られ、那須野ヶ原へと逃げ去るというあらすじ。ちょっと見栄えはしないかもしれませんが、セリフでのやり取りが実に見応えありです。特に中盤で泰親と玉藻前の問答が素晴らしいもの。「降りおろうぞ、泰親よ!」と清明が意外にも破れるところは実に興味深い場面です。
そして旧舞の部、舞の個人賞を受賞されたのが松原神楽社中「十羅刹女」。こちらも「鍾馗」と同じく、神一人鬼一人の演目です。そして個人賞を受賞されたのが、神である十羅刹女を舞われた方。この十羅刹女は、スサノオの末娘という役で、柔らかさの中に力強さがあるというような、難しい役柄ではないかと思います。非常にダイナミックな楽に合わせて、時にゆったり、時に激しく、そしてビシっと決めたり。こちらも見応え抜群でした。
そして最後に後野神楽社中「鏡山」。約一年ぶりに拝見しましたが、前半が少し変わっていたのはすぐに気付きました。諏訪(すわ)が草履(ぞうり)をすり替える場面から始まりました。以前はセリフで語るのみだったのですが、こちらのほうがよりわかりやすいですね!そして次に、尾上(おのえ)とお初の登場。以前は一人ずつ登場だったと思うのですが、二人舞での登場で、(誤解を恐れずに言えば)より神楽らしくなったのでは、という感じがしました。地元に伝わる物語の創作演目というだけに、より良い神楽にしようという思いが伝わってきました。
本当にたくさんの大熱演、ファンのみなさんにも満足な一日になったと思います。ついでに一つ付け加えを。新舞の舞の部で個人賞を取られたのが、大塚神楽団の井上隆太さんでした。以前神楽リレーにもご出演いただいたので、個人的にも非常に嬉しかったですね!で、表彰式で登場…と思ったのですが、どうやらお父様が代わりに出てこられた様子。にも関わらず、場内からはわざと「隆太!隆太!!」の掛け声が飛んでいたのには笑いました。というわけで、ちょっと番外な報告もありましたが、以上で今回の記事を終わります。
この記事が面白い・勉強になったと思われたら迷わずクリック
2008,06,09 Mon 19:49
コメント
特派員さん☆復帰うれしいです☆☆(≧▽≦)b
久しぶりに来てみたら報告が…すぐにコメントしたかったのですが遅れました(^_^;)
また、報告楽しみにしています☆
だけど無理をしないで下さい。
久しぶりに来てみたら報告が…すぐにコメントしたかったのですが遅れました(^_^;)
また、報告楽しみにしています☆
だけど無理をしないで下さい。
| 五月 | EMAIL | URL | 08/06/13 01:21 | zu9D2WXg |
にゃろめさん、コメントありがとうございます。
こちらも誤りがありまして、大変失礼しました。
ご指摘ありがとうございます。
ご遠慮なさらず、どんどん書き込みしてくださいね!
来年は記念大会として、という話もありましたね。
ぜひ来年も会場にお越しください!!
こちらも誤りがありまして、大変失礼しました。
ご指摘ありがとうございます。
ご遠慮なさらず、どんどん書き込みしてくださいね!
来年は記念大会として、という話もありましたね。
ぜひ来年も会場にお越しください!!
| 特派員 | EMAIL | URL | 08/06/10 00:09 | JOhM8KQo |
佐々部神楽広報部?さん、コメントありがとうございます。
数々の誤字脱字、大変失礼いたしました。
台本など正確な資料があればよいのですが、見たり聞いたりの感想ですので、こういった間違いもあることもご理解いただいて、何とぞご容赦のほど、よろしくお願いします。
さっそく訂正させていただきました。
今後ともよろしくお願いします。
数々の誤字脱字、大変失礼いたしました。
台本など正確な資料があればよいのですが、見たり聞いたりの感想ですので、こういった間違いもあることもご理解いただいて、何とぞご容赦のほど、よろしくお願いします。
さっそく訂正させていただきました。
今後ともよろしくお願いします。
| 特派員 | EMAIL | URL | 08/06/10 00:07 | JOhM8KQo |
競演行きました!
とっても楽しかったです!!
来年は記念大会になるんでしょうか!?
それもまた楽しみです(^O^)
ところで十\羅さんはスサノオさんの娘さんと記憶していたんですが・・・・・
間違いだったらごめんなさい<m(__)m>
とっても楽しかったです!!
来年は記念大会になるんでしょうか!?
それもまた楽しみです(^O^)
ところで十\羅さんはスサノオさんの娘さんと記憶していたんですが・・・・・
間違いだったらごめんなさい<m(__)m>
| にゃろめ | EMAIL | URL | 08/06/09 21:16 | rVqS3ygI |
ちなみにですが、うちの神楽団では、安部清明でなくて、安倍泰親です。はい、パンフレットには、違う表記で出てたかも、、、ということです。
ちなみに、
「降りおろうぞ、泰親よ!」
ですわ。
ちなみに、
「降りおろうぞ、泰親よ!」
ですわ。
| 佐々部神楽広報部? | EMAIL | URL | 08/06/09 21:15 | U4EPaMDU |
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