4月19日は島根県浜田市の石央文化ホールで「石見神楽亀山社中10周年記念神楽大会」が行われました。神楽上演前には亀山社中の小川さんよりご挨拶があり、そこで印象的なお話を伺うことができました。少し前の時代、石見神楽が広島の大会に呼ばれた時、たいてい「大蛇をやってくれ」と言われていたんだそうです。しかしいざ上演してみると、多くのお客さんが席を立って休憩に行ってしまう。見栄えのする広島の新舞を見慣れたお客さんからしたら、地味なものに見えたのかもしれません。このお話を聞いて残念な気持ちになりましたが、逆に言えば、こういった時代があったからこそ、「もっと石見神楽を発展させたい」とたくさんの若い方が立ち上がられたのだと思います。「石見と広島の神楽を通した交流が必要」とのお言葉もありましたが、今回の大会がまさにその大きな通過点になったことは間違いないでしょう。この日上演された、いつも以上に熱のこもった12演目をご紹介します。
まずは今大会の主役、亀山社中による「鞨鼓」。神禰宜(かんねぎ)が天から頂いた鞨鼓(かっこ)という太鼓を適当な場所に置こうとするのですが、なかなか神様の気に入る位置に置くことができず、悪戦苦闘します。大太鼓の音に合わせて、大きく頷いたり、手を叩いたり、鞨鼓を打ってみたり。それぞれの舞を見ていると、神禰宜の感情がわかりやすく、今は何をしているのか、どうしたいのかというのが伝わってきました。登場人物は神禰宜の一人だけで、実にシンプルな内容ですが、最後まで飽きずにじっくりと見せていただきました。
続いて都治神楽社中「塵輪」。同じ舞い方でも、堂々とした仲哀天皇と、それに控える感じで続く高麻呂。セリフを聞かなくてもどちらがどうかすぐにわかるようになれば、立派な神楽通ですよ!そして鬼のほうは女鬼と男鬼の二匹。広島では出てきたり隠れたりと幕を使った舞がよく見られますが、勢いよくバッと飛び出すのが浜田八調子流のようです。神二人鬼二匹の合戦となりますが、それぞれの個性がハッキリしており、なおかつそのコンビネーションも抜群。息つくヒマもない激しい立ち合いは実に見応えがありました。
西村神楽社中「黒塚」。那須野ヶ原を訪れた法印と剛力の前に、怪しい女が現れます。みなさんご存知の通り、これが悪狐なんですが、そんなことを忘れてしまうかのような、剛力さんとのやり取り。のんきな雰囲気の剛力さんに笑わせてもらったかと思えば、その剛力さんをバシバシ叩く妖女にこれまた大笑い。しかし後半では不気味な鬼が姿を現します。ドライアイスに包まれて火を吹きながら登場し、三浦介らと激しい合戦を演じます。もともとこの「黒塚」という演目が、那須野ヶ原と安達ヶ原の鬼女伝説を組み合わせたものですから、見どころ満載、いろんな見せ場のある豪華な神楽なんでしょうね。
ここで広島神楽の登場、中川戸神楽団「紅葉狩」。初めてご覧になる方も多くおられたようで、上演中は客席からの歓声やどよめきが多く聞かれましたね。十数年前にオリジナル神楽を発表し、神楽ブームの火付け役となった中川戸神楽団さん。現在、広島市で最も大きな神楽イベントとして定着した「RCC早春神楽共演大会」、その原点となった「スーパー神楽」の本家本元ですが、今大会で新たな一歩を踏み出された亀山社中さんも、石見全体にとってはそんな開拓者的な存在であると思います。今大会で上演された中川戸さん、それを見守る亀山さん、もちろん会場のみなさんにとっても何か感慨深いものがあったのではないでしょうか。
再び石見神楽に戻り、松原神楽社中「頼政」。登場する役の多さもあってか、とにかく見どころ満載の演目です。今までに何回か拝見してますが、そのたびにお猿さんたちのネタと言うか、いろんな演出がされていて面白いですよね。今回は、ステージの一番前で変な動作を繰り返す小猿さんに気をとられた頼政に、残りの猿たちが一斉に飛び掛るという演出が。しばらく神楽の物語を忘れて楽しんでしまいました。後半は迫力満点の鵺が登場。まさに怪物といった感じの見た目、激しい舞ぶりは目が離せません。大激闘の末、ついに鵺を退治した頼政さんには、会場から大きな拍手がありましたね!
長浜神楽社中「鍾馗」。歴史のある社中さんによる、伝統の舞。そんな印象を受けるものでした。全体的にゆったりとした楽で、見ているとなんだか時間さえもゆっくり流れているような感覚にとらわれます。中盤、鍾馗と疫神がお互いをさぐり合いながら舞う場面。いつこの二人が激突するのかというワクワク感を持ちながら見ることができました。聞いたところによると、今大会で一番最初に上演された亀山社中さんの「鞨鼓」は、この長浜社中さんに指導を受けたものだったそうです。亀山社中さんの師匠役とも言える長浜社中さん、落ち着いていて余裕を感じさせるような神楽だったと思います。
以上、前半の6演目の報告でした。「その2」では後半6演目をご紹介します!
2009,04,20 Mon 23:07
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