広島市のALSOKホールで、1月9日から11日までの三日間に渡って開催された「全国神楽フェスティバルinひろしま」。北は北海道から南は宮崎県まで、日本各地に伝わる様々な神楽が一堂に会するというまさにビッグイベントでした。広島・島根の神楽ファンのみなさんのみならず、全国からの注目度も高かったようです。このたびの特派員報告はその最終日からいくつかご紹介していきます。
まずは千年以上の歴史を誇る、あの高千穂神楽の登場。宮崎県の三田井地区神楽保存会「手力雄(たぢからお)の舞」です。この演目は広島・島根でいうところの「天の岩戸」の前半部分にあたるようです。こう書くと、おそらくみなさんは「児屋根命と太玉命が出るんじゃない?」と思われるでしょうが、なんとこちらでは力の強い手力雄命が岩戸を探し出すという内容なのです。お馴染みの「天の岩戸」を見慣れている自分にとっても、非常に興味深いものでした。しかしその舞を見ると、やはり神楽の基本は同じということなんでしょうか、まったく新しいものを見るという感覚はありませんでした。これは後でご紹介する静岡県の神楽でも同じでしたね。その手力雄の舞ですが、わかりやすく言うならば、広島の山県舞の鬼のような感じ。腰を落として力強くゆったりと進み、回るところではスッと高くなって回り、再び腰を落として決める。そして機敏な頭の動きで辺りを見回すといった具合。続いて「鈿女の舞」が始まりました。こちらは広島と同じく、岩戸の前で神楽を舞って天照大神に出てきていただこうとする内容です。手力雄と入れ替わるように舞殿に現れた鈿女命。小さな赤い御幣と扇子を持っての舞でしたが、幣を右手に持って舞われていたのが興味深かったです。また先ほどの手力雄の舞と見比べることによって、基本の舞の形がなんとなく見てとれたのも面白く感じられました。最後は「戸取(ととり)の舞」。流れで想像はつきますが、手力雄がいよいよ天の岩戸を開く内容です。この演目では手力雄ではなく戸取という役名で登場します。その面は先ほどの「手力雄の舞」では白でしたが、この演目では赤いものが使われていました。みなさんも思いっきり力を入れると顔が赤くなったりということがあるかと思いますが、千年以上の歴史がある高千穂の神楽でもこういった演出があるんですね。また決して派手さがあるわけではありませんが、戸取が岩戸を持ち上げた時は客席から大きな拍手があったのが嬉しかったですね。
次はお馴染みの芸北神楽より三谷神楽団「矢旗」。質素でありながら厳かな高千穂神楽の後でしたので、いつも見慣れたはずの広島の神楽でも、ちょっと新鮮な感じで見ることができました。およそ百年前に広島に伝わった矢上系石見神楽、そして旧舞の「矢旗」。現代の私達が見ると十分伝統的な神楽ですが、先ほどの高千穂神楽の影響でずいぶん進化したものに見えました。一見同じ舞をしている二人の神ですが、よく見ると微妙に違いがあったりして、それが役の違いに反映されていると思うと本当に面白く感じます。二匹の鬼についても同じで、こちらは舞手さんの個性といったほうがいいのかもしれませんが、回ったり入れ替わったりしてもどっちがどうだかハッキリとわかるんですよね。舞手さんの技量の高さや舞い込み具合がしっかりと感じられました。
そして静岡県の有東木(うとうぎ)芸能保存会「高嶺(たかね)の舞」。この有東木の神楽は太鼓が一人で笛がなんと七人登場されました。そして四人の舞手さんが右手に鈴、左手に刀を持っての舞を披露。四人が同じ動きをしながら、右に周ったり、中に集まったり、外に広がったりといった感じで淡々と舞われていきます。一体どんな意味合いの舞なのかわからなかったのですが、最後までしっかり見せていただきました。そしてもう一つ「松竹梅の舞」。三人の舞手さんが背中に松、竹、梅の入ったかごを背負われて舞うという内容で、とても珍しい印象を受けました。先ほどの高嶺の舞にしても、広島でいうところの「儀式舞」といった感じなのですが、儀式舞を思い起こしてみると、一人で舞う「神降し」、地域によっては「潮祓」を二人で舞ったり、そして「神迎え」では四人舞というふうに、三人での舞はちょっと記憶にありません。ということで舞手さんの舞う位置取りが非常に興味深かったのですが、舞殿の四隅に位置し、一つの隅が空いた状態で順番に周ったり、一人が待つ間に二人が交差したり、一人が中央に来て三人で同じ方向に拝んだりと、とにかく新鮮な感じで拝見させていただきました。
以上、今回は三団体六演目をご紹介させていただきました。「その2」に続きますのでお楽しみに!
(画像は主催者の許可を得て撮影および掲載しております。 撮影 yuk☆kiiさん)
まずは千年以上の歴史を誇る、あの高千穂神楽の登場。宮崎県の三田井地区神楽保存会「手力雄(たぢからお)の舞」です。この演目は広島・島根でいうところの「天の岩戸」の前半部分にあたるようです。こう書くと、おそらくみなさんは「児屋根命と太玉命が出るんじゃない?」と思われるでしょうが、なんとこちらでは力の強い手力雄命が岩戸を探し出すという内容なのです。お馴染みの「天の岩戸」を見慣れている自分にとっても、非常に興味深いものでした。しかしその舞を見ると、やはり神楽の基本は同じということなんでしょうか、まったく新しいものを見るという感覚はありませんでした。これは後でご紹介する静岡県の神楽でも同じでしたね。その手力雄の舞ですが、わかりやすく言うならば、広島の山県舞の鬼のような感じ。腰を落として力強くゆったりと進み、回るところではスッと高くなって回り、再び腰を落として決める。そして機敏な頭の動きで辺りを見回すといった具合。続いて「鈿女の舞」が始まりました。こちらは広島と同じく、岩戸の前で神楽を舞って天照大神に出てきていただこうとする内容です。手力雄と入れ替わるように舞殿に現れた鈿女命。小さな赤い御幣と扇子を持っての舞でしたが、幣を右手に持って舞われていたのが興味深かったです。また先ほどの手力雄の舞と見比べることによって、基本の舞の形がなんとなく見てとれたのも面白く感じられました。最後は「戸取(ととり)の舞」。流れで想像はつきますが、手力雄がいよいよ天の岩戸を開く内容です。この演目では手力雄ではなく戸取という役名で登場します。その面は先ほどの「手力雄の舞」では白でしたが、この演目では赤いものが使われていました。みなさんも思いっきり力を入れると顔が赤くなったりということがあるかと思いますが、千年以上の歴史がある高千穂の神楽でもこういった演出があるんですね。また決して派手さがあるわけではありませんが、戸取が岩戸を持ち上げた時は客席から大きな拍手があったのが嬉しかったですね。
次はお馴染みの芸北神楽より三谷神楽団「矢旗」。質素でありながら厳かな高千穂神楽の後でしたので、いつも見慣れたはずの広島の神楽でも、ちょっと新鮮な感じで見ることができました。およそ百年前に広島に伝わった矢上系石見神楽、そして旧舞の「矢旗」。現代の私達が見ると十分伝統的な神楽ですが、先ほどの高千穂神楽の影響でずいぶん進化したものに見えました。一見同じ舞をしている二人の神ですが、よく見ると微妙に違いがあったりして、それが役の違いに反映されていると思うと本当に面白く感じます。二匹の鬼についても同じで、こちらは舞手さんの個性といったほうがいいのかもしれませんが、回ったり入れ替わったりしてもどっちがどうだかハッキリとわかるんですよね。舞手さんの技量の高さや舞い込み具合がしっかりと感じられました。
そして静岡県の有東木(うとうぎ)芸能保存会「高嶺(たかね)の舞」。この有東木の神楽は太鼓が一人で笛がなんと七人登場されました。そして四人の舞手さんが右手に鈴、左手に刀を持っての舞を披露。四人が同じ動きをしながら、右に周ったり、中に集まったり、外に広がったりといった感じで淡々と舞われていきます。一体どんな意味合いの舞なのかわからなかったのですが、最後までしっかり見せていただきました。そしてもう一つ「松竹梅の舞」。三人の舞手さんが背中に松、竹、梅の入ったかごを背負われて舞うという内容で、とても珍しい印象を受けました。先ほどの高嶺の舞にしても、広島でいうところの「儀式舞」といった感じなのですが、儀式舞を思い起こしてみると、一人で舞う「神降し」、地域によっては「潮祓」を二人で舞ったり、そして「神迎え」では四人舞というふうに、三人での舞はちょっと記憶にありません。ということで舞手さんの舞う位置取りが非常に興味深かったのですが、舞殿の四隅に位置し、一つの隅が空いた状態で順番に周ったり、一人が待つ間に二人が交差したり、一人が中央に来て三人で同じ方向に拝んだりと、とにかく新鮮な感じで拝見させていただきました。
以上、今回は三団体六演目をご紹介させていただきました。「その2」に続きますのでお楽しみに!
(画像は主催者の許可を得て撮影および掲載しております。 撮影 yuk☆kiiさん)
2010,01,12 Tue 21:28
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