第三部「新たなる神楽への挑戦」
琴庄神楽団「厳島」。今回この上演を楽しみに来られた方も多くおられたことでしょう。昨年9月に初演を向かえたばかりの、まさに最新の演目です。厳島を拠点とした平清盛の物語がメインとして語られます。ホールでの演出が存分に生かされた場面が随所に見られるあたり、この第三部にピッタリの上演だったように思います。後に厳島に鎮まる三女神が登場するところは、幕が開いた時の背景の鮮やかな青色が印象的で、天からやってきた様子か、あるいは瀬戸内海の美しい海を表しているのかといった感じ。清盛が沈んだ太陽を再び呼び戻す場面は、いったん落とされた照明が、舞に合わせて次第に強くなっていくのがわかりました。やはりもっとも印象的だったのは怨霊が登場する場面でしょうか。青暗いステージにスモークが立ちこめ、ゆっくりと怨霊がその不気味な姿を現します。見に行かれた方はどんな場面が印象に残りましたか?
原田神楽団「戻り橋(前編)」。いよいよ大江山三段返しの始まりです。まずは都、戻り橋がその舞台となります。夜な夜な悪事をはたらく茨木童子を成敗するため、四天王の渡辺綱が戻り橋へと向かいます。対する茨木童子は老婆に化けて同じく戻り橋へ。これから始まる壮大な物語が、静かに幕を開けていくようでワクワクしますね。そして戻り橋と言えば忘れてはなりません、傘売り善兵衛さん。第二部で「笑いの魔術師」が登場されたため、かなりプレッシャーを感じていたそうですが、負けず劣らすの笑いを誘っていましたよ!そして後半は茨木童子の加勢に酒呑童子が参戦。その駆けつけた時の様子がとてもリアルで、「どうした?」「あいつが綱じゃ!」というような会話が聞こえてきそうでした。そして激しい戦いの末、綱は茨木童子を左腕を切り落とします。腕を切られ、大江山へと逃げ去る様子も、悔しさを爆発させながらといった感じで印象的でした!
そしてその左腕を取り返すのが大塚神楽団「羅生門」の物語。まずは仕返しとばかり、綱の乳母を手にかける茨木童子。そして酒呑童子はその乳母に化け、綱の館へ。変化自在の鬼ならではの術を、舞手さんの巧みな演技で見事に表現。会場のみなさんも注目されたことでしょう!そしてついに左腕を取り返した酒呑童子。早速茨木童子へともみつけ…しかしここで腕がまた無くなった?というお馴染みの展開に。ここもいかにも仲良さげな鬼たちのリアルなやり取りに笑わせていただきました。そして綱の加勢に源頼光が現れ、酒呑童子との初顔合わせ。激しい戦いを表すように、息もつかせぬほどの速いテンポで五人の舞手さんが舞っていきます。奏楽さんもここぞとばかりに一気に盛り上げ、会場も興奮状態に。しかし鬼たちは逃げ失せ、そして最後の一戦が始まります!
上河内神楽団「大江山」。まずは頼光たちの登場です。豪華な衣装に身を包んだ三人の神は、いづれも若い舞手さんのようでしたが、今回のようなホールでの一大イベント、どんな気持ちで迎えられていたのでしょうね。そんなことを思うと、見ている側も応援に力が入ります。最初の神の舞では、元気良さというよりは「焦らず、落ち着いて。」という感じで丁寧な印象を受けました。そして一歩ずつ、しっかりと大江山千丈ケ岳へと登って行きます。そしてついに岩屋へと辿り着いた頼光たち。2枚目の画像をご覧いただくとおわかりのように、酒呑童子のこの迫力!大きな面ですね~。どっしりと構えてグッと睨みつける、そんなことをされたら怖くて逃げ出しそうになってしまいますが、頼光たちは動じません。酒に酔ったところを逃さず切りかかります。これまたテンポの速い合戦の舞、煌びやかな衣装が目に焼きつくようです。三人の渾身の一撃がついに酒呑童子を捕らえ、長い戦いが幕を閉じました。
横田神楽団「紅葉狩」。広島を代表する人気の神楽団と人気演目で、上演中はたくさんの声援が飛んでいましたね。舞台演出は控えめですが、そのぶんじっくりと神楽そのものを見ることができたように思います。各地の競演大会で優秀な成績を収められている実績、さすがですね。見ていて本当に安定感を感じます。舞と楽のテンポ、バランス。見ているとなんとも言えない心地よさに包まれます。さらには神楽歌や掛け声で舞台が盛り上がり、見ている側もどんどん神楽の世界に引き込まれていくようです。すべてにおいて洗練されたという印象で、本当に小さいことにまで雑なところがなく、とても綺麗に見えますよね。それでなおかつ、合戦ではスピード感ある速い舞をたっぷりと見せてくださいました。
最後は中川戸神楽団「青葉の笛」。大事にしていた青葉の笛を盗まれた官那羅(かんなら)は、自分の手下を向かわせます。そして笛を奪い返すも、人の業によって鬼にされ、ついには退治されてしまいます。中川戸さんのオリジナル演目ですが、とても深い物語ですよね。それでも見る人にちゃんと伝わるよう、舞や楽はもちろん、セリフや展開、舞手の立ち位置など、本当にいろんなところに工夫されていると思います。古典曲目の場合、このような物語があっても単純に鬼退治といった感じで省略されてしまい、なかなか深い意味や物語などを知ることが少ないと思いますが、この演目のような新しい試みによって、この地域の神楽はより多くのファンを獲得してきたのです。20年前に「板蓋宮」というオリジナル神楽を発表されて以来、新しい神楽に挑戦され続けている中川戸神楽団さん。これからも多くのファンを魅了してくださることでしょう。
以上、後半の演目のご紹介でした。「その3」は密かに楽しみにされている方もいる?番外編です。
琴庄神楽団「厳島」。今回この上演を楽しみに来られた方も多くおられたことでしょう。昨年9月に初演を向かえたばかりの、まさに最新の演目です。厳島を拠点とした平清盛の物語がメインとして語られます。ホールでの演出が存分に生かされた場面が随所に見られるあたり、この第三部にピッタリの上演だったように思います。後に厳島に鎮まる三女神が登場するところは、幕が開いた時の背景の鮮やかな青色が印象的で、天からやってきた様子か、あるいは瀬戸内海の美しい海を表しているのかといった感じ。清盛が沈んだ太陽を再び呼び戻す場面は、いったん落とされた照明が、舞に合わせて次第に強くなっていくのがわかりました。やはりもっとも印象的だったのは怨霊が登場する場面でしょうか。青暗いステージにスモークが立ちこめ、ゆっくりと怨霊がその不気味な姿を現します。見に行かれた方はどんな場面が印象に残りましたか?
原田神楽団「戻り橋(前編)」。いよいよ大江山三段返しの始まりです。まずは都、戻り橋がその舞台となります。夜な夜な悪事をはたらく茨木童子を成敗するため、四天王の渡辺綱が戻り橋へと向かいます。対する茨木童子は老婆に化けて同じく戻り橋へ。これから始まる壮大な物語が、静かに幕を開けていくようでワクワクしますね。そして戻り橋と言えば忘れてはなりません、傘売り善兵衛さん。第二部で「笑いの魔術師」が登場されたため、かなりプレッシャーを感じていたそうですが、負けず劣らすの笑いを誘っていましたよ!そして後半は茨木童子の加勢に酒呑童子が参戦。その駆けつけた時の様子がとてもリアルで、「どうした?」「あいつが綱じゃ!」というような会話が聞こえてきそうでした。そして激しい戦いの末、綱は茨木童子を左腕を切り落とします。腕を切られ、大江山へと逃げ去る様子も、悔しさを爆発させながらといった感じで印象的でした!
そしてその左腕を取り返すのが大塚神楽団「羅生門」の物語。まずは仕返しとばかり、綱の乳母を手にかける茨木童子。そして酒呑童子はその乳母に化け、綱の館へ。変化自在の鬼ならではの術を、舞手さんの巧みな演技で見事に表現。会場のみなさんも注目されたことでしょう!そしてついに左腕を取り返した酒呑童子。早速茨木童子へともみつけ…しかしここで腕がまた無くなった?というお馴染みの展開に。ここもいかにも仲良さげな鬼たちのリアルなやり取りに笑わせていただきました。そして綱の加勢に源頼光が現れ、酒呑童子との初顔合わせ。激しい戦いを表すように、息もつかせぬほどの速いテンポで五人の舞手さんが舞っていきます。奏楽さんもここぞとばかりに一気に盛り上げ、会場も興奮状態に。しかし鬼たちは逃げ失せ、そして最後の一戦が始まります!
上河内神楽団「大江山」。まずは頼光たちの登場です。豪華な衣装に身を包んだ三人の神は、いづれも若い舞手さんのようでしたが、今回のようなホールでの一大イベント、どんな気持ちで迎えられていたのでしょうね。そんなことを思うと、見ている側も応援に力が入ります。最初の神の舞では、元気良さというよりは「焦らず、落ち着いて。」という感じで丁寧な印象を受けました。そして一歩ずつ、しっかりと大江山千丈ケ岳へと登って行きます。そしてついに岩屋へと辿り着いた頼光たち。2枚目の画像をご覧いただくとおわかりのように、酒呑童子のこの迫力!大きな面ですね~。どっしりと構えてグッと睨みつける、そんなことをされたら怖くて逃げ出しそうになってしまいますが、頼光たちは動じません。酒に酔ったところを逃さず切りかかります。これまたテンポの速い合戦の舞、煌びやかな衣装が目に焼きつくようです。三人の渾身の一撃がついに酒呑童子を捕らえ、長い戦いが幕を閉じました。
横田神楽団「紅葉狩」。広島を代表する人気の神楽団と人気演目で、上演中はたくさんの声援が飛んでいましたね。舞台演出は控えめですが、そのぶんじっくりと神楽そのものを見ることができたように思います。各地の競演大会で優秀な成績を収められている実績、さすがですね。見ていて本当に安定感を感じます。舞と楽のテンポ、バランス。見ているとなんとも言えない心地よさに包まれます。さらには神楽歌や掛け声で舞台が盛り上がり、見ている側もどんどん神楽の世界に引き込まれていくようです。すべてにおいて洗練されたという印象で、本当に小さいことにまで雑なところがなく、とても綺麗に見えますよね。それでなおかつ、合戦ではスピード感ある速い舞をたっぷりと見せてくださいました。
最後は中川戸神楽団「青葉の笛」。大事にしていた青葉の笛を盗まれた官那羅(かんなら)は、自分の手下を向かわせます。そして笛を奪い返すも、人の業によって鬼にされ、ついには退治されてしまいます。中川戸さんのオリジナル演目ですが、とても深い物語ですよね。それでも見る人にちゃんと伝わるよう、舞や楽はもちろん、セリフや展開、舞手の立ち位置など、本当にいろんなところに工夫されていると思います。古典曲目の場合、このような物語があっても単純に鬼退治といった感じで省略されてしまい、なかなか深い意味や物語などを知ることが少ないと思いますが、この演目のような新しい試みによって、この地域の神楽はより多くのファンを獲得してきたのです。20年前に「板蓋宮」というオリジナル神楽を発表されて以来、新しい神楽に挑戦され続けている中川戸神楽団さん。これからも多くのファンを魅了してくださることでしょう。
以上、後半の演目のご紹介でした。「その3」は密かに楽しみにされている方もいる?番外編です。
2011,03,02 Wed 22:45
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