今月は、特派員不在により急遽指名されました臨時特派員です。
あらかじめ、申し上げます。私の話は、頭が爆発するらしいんで、ご注意ください。(爆)
今月のテーマは、「十八番(オハコ)」です。歌舞伎の七代目市川団十郎が歴代の得意演目「18番」をまとめ、その台本を箱に納め、家伝としたことから、「十八番」と書いて、「オハコ」と読むそうです。さて、ここでは、各神楽団らしい演目(世界観)。ということで、まとめさせて頂きます。
トップバッターは、石見国は、江津市「大津神楽団」さんの「貴布禰」です。その陰惨極まりない内容から、上演が禁じられた禁忌の演目であり、それゆえ、現在でも保持する団体の少ない演目ですが、、、大都さんワールド全開の世界です。
空舞台に「青木葉・・・」と声が響き、世の全てを恨むかの如きその声は、自分の不遇を訴え、女の一人舞いが始まります。
その足取りは、夫に捨てられた悲しみにくれ、「カカカ・・・」と響くカバチの音は、北山貴船の社へと続く参道に響く女の足音か・・・積る恨みの重なる音か・・・
「五徳」を逆さに頭に頂き、その足には、蝋燭を灯し、赤い衣を身にまとい、宇治の流れに身を浸せば、汝の望みのとおり、生きながら鬼女となろう・・・・
神のお告げに小躍りすれば、舞台に立ちこめるドライアイスは、夜道に立ち込める霞か、宇治の川の流れにも見えました。
さて、舞台は、変わり。ぼーっと舞台に現れた男とそれを見つけた通行人「京男」。男を陰陽師「阿部清明」の所に連れて行けば、現れたのは、小顔長身の美形天才陰陽師!!!!!!でなく、杖を突いて、小刻みに震える老人陰陽師。
みなさんご存知の「安倍晴明」のイメージとは、かなりかけ離れた容貌ですが、清明が歴史に登場するのは、かなり年をとってからの話。
ここからは、もう一つの大都さんワールド全開!! 一転、耳の遠いのをいいことにハチャメチャ占い師清明様におもちゃにされる京男。しまいにゃ、占い代金と身ぐるみまで剥がされ、あられもない姿。これは、昔からある演出だそう・・・です。(^_^.)
胡散臭さ大爆発!!しかし、インチキ占い師かとおもいきや・・・やる事やって帰ります。「男」の元妻の貴船参りが病の原因であると見抜いた声明は、鬼となった女が命を取りに来る。と、藁人形を男と見立て、形代として舞台に残します。
鬼となった妻の目には、藁人形が憎き夫の姿と移り、もっている杖(ザイ)で恨みの限りを晴らさんと杖を振り上げますが、最初動きが止まります。
その姿は、「愛しいが故に憎く、憎いが故に愛しい限り・・・」その葛藤の姿にも、「一思いには・・・」自分を裏切った夫を容易く殺さずと、恨み骨髄に達し、怒りに、恨みに打ち震える姿にも・・・思う存分打ち据えた鬼女は、藁人形(夫)を掴み、何れともなく虚空へと飛び去って行きました・・・
「心も変わる、身も変わる、一念化生の鬼女(おにおんな)」
心が鬼となれば、やがては、その姿をも変え鬼と化生してしまう・・・その言葉にいろいろ考えてしまいました。
長いでしょ?長いんです。
頭がそろそろ沸騰してきました?(^u^)
長いけど、どんどん行きます!!
次の演目!!
東山神楽団さんの「滝夜叉姫」です。
大都さんの「来布禰」から、くしくも「貴船参り」つながりです。
競演大会でもおなじみのメジャーな演目の一つですが、ここでは、一歩!掘り下げてお伝えしてみましょう。
冒頭座付けの笛の音によって、舞台は、あっという間に貴船神社の参道へと変わり、
天慶の昔、坂東下総に立ち上がった梟雄「平将門」。その行いに何の罪があったのか?
朝廷の非道を訴える娘「五月姫」は、洛外北山貴船の参道を踏み急ぐ・・・
非常に個人的見解ですが、この演目は、奏楽(特に笛)が世界観を作り上げるのにかなりのウエイトを占める演目であると思います。五月姫の口上にかかる笛の音は、姫の恨み、悲しみの声のすすり泣きにも、参道に響く夏虫の声とも聞こえます。
父将門に背負わされた謀反人の汚名を払わんが為、必死に訴える少女の声なき声は、神へと通じ、その訴えは、都人から見れば、蛮行・凶行とも映ったのでしょうか。
純粋なる少女から、狂気の妖女「滝夜叉姫」と変じる五月姫の演技は、息をのむ凄みを孕んでいます。
陰陽博士「大宅中将光圀」主従が差し向けられ、滝夜叉姫一党は、激戦を繰り広げますが、
手下たちは、次々と倒れ、最後の一人となった貴船の荒御霊より授かった秘術の粋を尽くし、その身を夜叉となって命続く限りの抵抗を見せますが、光圀の陰陽の秘術の前に倒れ、神徳を断たれた滝夜叉は、姫の姿へと戻されます。
「父の下へと昇天する。」と、偉大なる父将門への慕情ともいえる気持ちと「新皇」平将門 の娘としてのプライドの一返り。(この演目にかける神楽団の皆さんの心意気のようでもありました。)
その姿に儚くも強く時代の潮流に翻弄されながらも、駆け抜けた一人の少女の姿を見つけた気がしました。
さて、頭の中が小爆発しはじめましたか?まだ、大丈夫です。
続いて、いきますよっ!?
3つ目!!
琴庄神楽団さん、「義経奥州平泉」です。
この神楽は、正しく「琴庄さんの代名詞」(オハコ)ともいえる「源義経」を題材とした神楽演目の一つであると思います。
お伺いしたところ、かなりの間上演されていなかったようですが、流石の琴庄クオリティ、
しっかりと仕上げられていましたね。
上演に先立って、崎内団長のお話に「感情移入」の事がありましたが、随所に観客を物語へと引き込む趣向が尽くされていましたし、やはり、舞い手一人一人が、その役に入り込み、なりきっているからこその芸当ですね。
また、この神楽には、2つの見せ場があり、前半の歌舞伎でおなじみの「安宅の関」と後半戦の「平泉 高館」の場ですね。
では、順を追って、いってみよう!(^_^.)/
源平の合戦において平家討滅の立役者である源義経は、その存在を恐れた実の兄「源頼
朝」の手によって、謀反人として都を追われ、山伏と偽り、奥州「藤原氏」を頼ろうと北陸路を急ぎます。
やはり、ここでも「笛」の仕事は、絶大ですね。悲しくもあり、義経たちの歩く寂しき山道の風音とも聞こえ、その中を進む義経主従、はたして、その一歩は、安息の地への歩みか、絶望の死地への行進か・・・いろいろな思いが駆け巡ります。
安宅の関に差し掛かり、一戦交えてでも強行突破を主張する義経。その言葉には、天才軍略家のプライドか、「死」という安息を求め、捨てばちの発言か・・・・
主君の無事を思う弁慶の安息を祈る弁慶の進言によって、剛力と身をやつした義経を伴い、関守「富樫左衛門」に対面し、歌舞伎でもおなじみの「白紙の勧進帳」を読み上げる場面となります。
この場面は、淀みの無い弁慶の「勧進帳」の読み上げ、見破られないかと言う薄氷を踏むかのような綱渡り、しかし、剛力の姿に違和感を覚えた富樫、疑念をか
けられた義経を救うため、弁慶は、義経を杖で打ち付けます。
主義経を救うための弁慶の行い、覚悟に感じ入った富樫は、これを通してしまいます。
「如何に剛力殿・・・御武運、お祈り申し候わん。」
背中で語り、送り出す富樫。これも義経のカリスマのなせる業か・・・舞の無い富樫という存在が口上で魅せる一場面です。
無事、難関を切り抜けた主従。弁慶は、たとえ、切り抜ける為といえ、主君を打った自分の不忠を詫び、断罪を請いますが、義経は、自分を打った弁慶の手は、八幡の神の御手である、その慈悲の深さ、誠有難い事と、主従の結束を更に深め、平泉へと急ぎます。
さて、「藤原秀衡」亡きあと、鎌倉殿「頼朝」に詰め寄られた藤原家は、庇護していた義経を急襲します。まぁ、やらなきゃ、頼朝にやられますから・・・・(涙)
後継者「藤原泰衡」の家来「川田氏」の両名。陣羽織に太刀舞ですが、お気づきですかね?この陣羽織、賊舞用に作られた特注品だそうで、通常の陣羽織より丈が非常に長いんです。こうした衣装も舞への思い入れの強さの一つでしょう。
義経の住む衣川高館へと攻め入った両名の前に郎党の三郎‘s・・・(鷲尾三郎と伊勢三郎)が立ちはだかり、弁慶も加わっての激戦となります。
多勢に無勢ながら義経を護る郎党達の奮戦で一進一退の戦いとなり、川田勢を退けます。
義経は、最後を覚悟し、郎党達を前に主従を越えた関係を感じ、全てを任せ、最後の時を迎えます。
主「義経」の安息の瞬間=死を護るため、伊勢・鷲尾の両名は、押し寄せる藤原勢に立ち向かっていきます。
「されば、三途の川にてあい待ち候わん。」
あの世でも郎党として変わらず義経に仕えよう。という誓い・・・幾多の戦場を潜り抜けた仲間だからこその言葉は、見ている人たちの涙を誘います。
「我が主、この弁慶が守り候わん。」
史実によれば、義経は、敵の手に掛っての死の辱めを受けるまいと、経堂に籠り、自らが経文を唱え終わるまで、守護することを命じたといいます。(つまり、経が聞こえなくなった時が、義経の最後をしめすからですね。(*^_^*))
「死」のその瞬間までも主君を護る、未来永劫義経に仕える事を誓った弁慶の人生は、この一言に尽きるのでは、ないでしょうか?
4つ目、大塚神楽団「伊吹山」!!
まだ数回上演されているだけの希少演目だそうです。
悲運の貴公子として知られる「日本武尊」の最後の演目ですね。
先ほどの「源義経」もそうですが、「素戔嗚尊」など「貴種流離譚」とよばれる物語の一
つで、「日本武尊」物語の最終編ともいえる演目です。
父の命に背いた兄「大碓」を殺してしまった小碓は、その行いを恐れた父景行天皇の命によって、全国各地、西は、熊襲。東は、蝦夷を平定するため、正しく「東奔西走」。
戦に生き、戦場を駆け抜けた悲運の皇子の物語です。
登場人物は、意外に多く聞きなれない人物も登場します。
「国造」と「美夜受比売」の二人です。美夜受は、国造の妹で武尊の寵愛を受けた女性の一人でもあり、最愛の寵姫「弟橘」を失った武尊のそばに寄り添った女性です。
そして、尊の許に父「景行天皇」から伊吹山の山上征伐の勅命が下され、転戦する尊の誓いの証として神剣「草薙剣」を美夜受の許へと預けて、主従は、伊吹山へと登ります。山に登った武尊の前に山神が姿を化身して姿を現しますが、「あんな雑魚、帰りがけにでもついでに容易く討ち取ってやる。」と吐き捨てる尊に、「神剣の威徳なくして、我に立ち向かうとは、愚かしい。」と尊の驕りをなじりますが、その武力に自信を持つ尊は、これに立ち向かいます。しかし、その化身こそ「山神」本人。その言葉に怒り狂い神通力の限りを尽くし、武尊主従をさんざんに痛めつけます。
はたして、この「山神」とは、何者なのでしょうか?
最初現れた時は、平穏な「翁」の顔で現れ、武尊主従の前に現れた時には、眼を見開き恐ろしくもオドロオドロシイ形相で立ち向かい、最後の力を尽くし、その本性ともいえる姿を現します。その姿に色々感じますが、「山」そのもの「自然」、森羅万象の本質では、なかったのでしょうか?「平穏な翁」が武尊の高飛車な行いに怒り、その表情を変え、人間たちに襲いかかります。山神を追い詰める主従でしたが「神」は、恐ろしく祟る存在。神殺しの悪行の報いか、神罰か、「大氷雨」に体を討ちぬかれ、武尊は、その傷が故で大和の都へ帰り着くことなく、倒れ、その魂は、白鳥(書物には、“白鷺”と見えます。)となり、都の方角へとびだったといいます。。
大塚さんらしい解釈と演出のオンパレード!!終幕、舞台に残された刀と扇。はたして、この意味するところは…?それは、戦場に生き、時代を駆け抜けた悲運の男の生き抜いた証・・・足跡に見えました。
さて、以上で「臨時」特派員の報告を終了させていただきます。
次回は、「大江山」4本立て!!(^_^.)かなりの長期戦になる事が予想されます・・・・
されば、各々方、準備万端ぬかりなく、鑑賞(かっせん)支度致し候へや!!(*^_^*)
あらかじめ、申し上げます。私の話は、頭が爆発するらしいんで、ご注意ください。(爆)
今月のテーマは、「十八番(オハコ)」です。歌舞伎の七代目市川団十郎が歴代の得意演目「18番」をまとめ、その台本を箱に納め、家伝としたことから、「十八番」と書いて、「オハコ」と読むそうです。さて、ここでは、各神楽団らしい演目(世界観)。ということで、まとめさせて頂きます。
トップバッターは、石見国は、江津市「大津神楽団」さんの「貴布禰」です。その陰惨極まりない内容から、上演が禁じられた禁忌の演目であり、それゆえ、現在でも保持する団体の少ない演目ですが、、、大都さんワールド全開の世界です。
空舞台に「青木葉・・・」と声が響き、世の全てを恨むかの如きその声は、自分の不遇を訴え、女の一人舞いが始まります。
その足取りは、夫に捨てられた悲しみにくれ、「カカカ・・・」と響くカバチの音は、北山貴船の社へと続く参道に響く女の足音か・・・積る恨みの重なる音か・・・
「五徳」を逆さに頭に頂き、その足には、蝋燭を灯し、赤い衣を身にまとい、宇治の流れに身を浸せば、汝の望みのとおり、生きながら鬼女となろう・・・・
神のお告げに小躍りすれば、舞台に立ちこめるドライアイスは、夜道に立ち込める霞か、宇治の川の流れにも見えました。
さて、舞台は、変わり。ぼーっと舞台に現れた男とそれを見つけた通行人「京男」。男を陰陽師「阿部清明」の所に連れて行けば、現れたのは、小顔長身の美形天才陰陽師!!!!!!でなく、杖を突いて、小刻みに震える老人陰陽師。
みなさんご存知の「安倍晴明」のイメージとは、かなりかけ離れた容貌ですが、清明が歴史に登場するのは、かなり年をとってからの話。
ここからは、もう一つの大都さんワールド全開!! 一転、耳の遠いのをいいことにハチャメチャ占い師清明様におもちゃにされる京男。しまいにゃ、占い代金と身ぐるみまで剥がされ、あられもない姿。これは、昔からある演出だそう・・・です。(^_^.)
胡散臭さ大爆発!!しかし、インチキ占い師かとおもいきや・・・やる事やって帰ります。「男」の元妻の貴船参りが病の原因であると見抜いた声明は、鬼となった女が命を取りに来る。と、藁人形を男と見立て、形代として舞台に残します。
鬼となった妻の目には、藁人形が憎き夫の姿と移り、もっている杖(ザイ)で恨みの限りを晴らさんと杖を振り上げますが、最初動きが止まります。
その姿は、「愛しいが故に憎く、憎いが故に愛しい限り・・・」その葛藤の姿にも、「一思いには・・・」自分を裏切った夫を容易く殺さずと、恨み骨髄に達し、怒りに、恨みに打ち震える姿にも・・・思う存分打ち据えた鬼女は、藁人形(夫)を掴み、何れともなく虚空へと飛び去って行きました・・・
「心も変わる、身も変わる、一念化生の鬼女(おにおんな)」
心が鬼となれば、やがては、その姿をも変え鬼と化生してしまう・・・その言葉にいろいろ考えてしまいました。
長いでしょ?長いんです。
頭がそろそろ沸騰してきました?(^u^)
長いけど、どんどん行きます!!
次の演目!!
東山神楽団さんの「滝夜叉姫」です。
大都さんの「来布禰」から、くしくも「貴船参り」つながりです。
競演大会でもおなじみのメジャーな演目の一つですが、ここでは、一歩!掘り下げてお伝えしてみましょう。
冒頭座付けの笛の音によって、舞台は、あっという間に貴船神社の参道へと変わり、
天慶の昔、坂東下総に立ち上がった梟雄「平将門」。その行いに何の罪があったのか?
朝廷の非道を訴える娘「五月姫」は、洛外北山貴船の参道を踏み急ぐ・・・
非常に個人的見解ですが、この演目は、奏楽(特に笛)が世界観を作り上げるのにかなりのウエイトを占める演目であると思います。五月姫の口上にかかる笛の音は、姫の恨み、悲しみの声のすすり泣きにも、参道に響く夏虫の声とも聞こえます。
父将門に背負わされた謀反人の汚名を払わんが為、必死に訴える少女の声なき声は、神へと通じ、その訴えは、都人から見れば、蛮行・凶行とも映ったのでしょうか。
純粋なる少女から、狂気の妖女「滝夜叉姫」と変じる五月姫の演技は、息をのむ凄みを孕んでいます。
陰陽博士「大宅中将光圀」主従が差し向けられ、滝夜叉姫一党は、激戦を繰り広げますが、
手下たちは、次々と倒れ、最後の一人となった貴船の荒御霊より授かった秘術の粋を尽くし、その身を夜叉となって命続く限りの抵抗を見せますが、光圀の陰陽の秘術の前に倒れ、神徳を断たれた滝夜叉は、姫の姿へと戻されます。
「父の下へと昇天する。」と、偉大なる父将門への慕情ともいえる気持ちと「新皇」平将門 の娘としてのプライドの一返り。(この演目にかける神楽団の皆さんの心意気のようでもありました。)
その姿に儚くも強く時代の潮流に翻弄されながらも、駆け抜けた一人の少女の姿を見つけた気がしました。
さて、頭の中が小爆発しはじめましたか?まだ、大丈夫です。
続いて、いきますよっ!?
3つ目!!
琴庄神楽団さん、「義経奥州平泉」です。
この神楽は、正しく「琴庄さんの代名詞」(オハコ)ともいえる「源義経」を題材とした神楽演目の一つであると思います。
お伺いしたところ、かなりの間上演されていなかったようですが、流石の琴庄クオリティ、
しっかりと仕上げられていましたね。
上演に先立って、崎内団長のお話に「感情移入」の事がありましたが、随所に観客を物語へと引き込む趣向が尽くされていましたし、やはり、舞い手一人一人が、その役に入り込み、なりきっているからこその芸当ですね。
また、この神楽には、2つの見せ場があり、前半の歌舞伎でおなじみの「安宅の関」と後半戦の「平泉 高館」の場ですね。
では、順を追って、いってみよう!(^_^.)/
源平の合戦において平家討滅の立役者である源義経は、その存在を恐れた実の兄「源頼
朝」の手によって、謀反人として都を追われ、山伏と偽り、奥州「藤原氏」を頼ろうと北陸路を急ぎます。
やはり、ここでも「笛」の仕事は、絶大ですね。悲しくもあり、義経たちの歩く寂しき山道の風音とも聞こえ、その中を進む義経主従、はたして、その一歩は、安息の地への歩みか、絶望の死地への行進か・・・いろいろな思いが駆け巡ります。
安宅の関に差し掛かり、一戦交えてでも強行突破を主張する義経。その言葉には、天才軍略家のプライドか、「死」という安息を求め、捨てばちの発言か・・・・
主君の無事を思う弁慶の安息を祈る弁慶の進言によって、剛力と身をやつした義経を伴い、関守「富樫左衛門」に対面し、歌舞伎でもおなじみの「白紙の勧進帳」を読み上げる場面となります。
この場面は、淀みの無い弁慶の「勧進帳」の読み上げ、見破られないかと言う薄氷を踏むかのような綱渡り、しかし、剛力の姿に違和感を覚えた富樫、疑念をか
けられた義経を救うため、弁慶は、義経を杖で打ち付けます。
主義経を救うための弁慶の行い、覚悟に感じ入った富樫は、これを通してしまいます。
「如何に剛力殿・・・御武運、お祈り申し候わん。」
背中で語り、送り出す富樫。これも義経のカリスマのなせる業か・・・舞の無い富樫という存在が口上で魅せる一場面です。
無事、難関を切り抜けた主従。弁慶は、たとえ、切り抜ける為といえ、主君を打った自分の不忠を詫び、断罪を請いますが、義経は、自分を打った弁慶の手は、八幡の神の御手である、その慈悲の深さ、誠有難い事と、主従の結束を更に深め、平泉へと急ぎます。
さて、「藤原秀衡」亡きあと、鎌倉殿「頼朝」に詰め寄られた藤原家は、庇護していた義経を急襲します。まぁ、やらなきゃ、頼朝にやられますから・・・・(涙)
後継者「藤原泰衡」の家来「川田氏」の両名。陣羽織に太刀舞ですが、お気づきですかね?この陣羽織、賊舞用に作られた特注品だそうで、通常の陣羽織より丈が非常に長いんです。こうした衣装も舞への思い入れの強さの一つでしょう。
義経の住む衣川高館へと攻め入った両名の前に郎党の三郎‘s・・・(鷲尾三郎と伊勢三郎)が立ちはだかり、弁慶も加わっての激戦となります。
多勢に無勢ながら義経を護る郎党達の奮戦で一進一退の戦いとなり、川田勢を退けます。
義経は、最後を覚悟し、郎党達を前に主従を越えた関係を感じ、全てを任せ、最後の時を迎えます。
主「義経」の安息の瞬間=死を護るため、伊勢・鷲尾の両名は、押し寄せる藤原勢に立ち向かっていきます。
「されば、三途の川にてあい待ち候わん。」
あの世でも郎党として変わらず義経に仕えよう。という誓い・・・幾多の戦場を潜り抜けた仲間だからこその言葉は、見ている人たちの涙を誘います。
「我が主、この弁慶が守り候わん。」
史実によれば、義経は、敵の手に掛っての死の辱めを受けるまいと、経堂に籠り、自らが経文を唱え終わるまで、守護することを命じたといいます。(つまり、経が聞こえなくなった時が、義経の最後をしめすからですね。(*^_^*))
「死」のその瞬間までも主君を護る、未来永劫義経に仕える事を誓った弁慶の人生は、この一言に尽きるのでは、ないでしょうか?
4つ目、大塚神楽団「伊吹山」!!
まだ数回上演されているだけの希少演目だそうです。
悲運の貴公子として知られる「日本武尊」の最後の演目ですね。
先ほどの「源義経」もそうですが、「素戔嗚尊」など「貴種流離譚」とよばれる物語の一
つで、「日本武尊」物語の最終編ともいえる演目です。
父の命に背いた兄「大碓」を殺してしまった小碓は、その行いを恐れた父景行天皇の命によって、全国各地、西は、熊襲。東は、蝦夷を平定するため、正しく「東奔西走」。
戦に生き、戦場を駆け抜けた悲運の皇子の物語です。
登場人物は、意外に多く聞きなれない人物も登場します。
「国造」と「美夜受比売」の二人です。美夜受は、国造の妹で武尊の寵愛を受けた女性の一人でもあり、最愛の寵姫「弟橘」を失った武尊のそばに寄り添った女性です。
そして、尊の許に父「景行天皇」から伊吹山の山上征伐の勅命が下され、転戦する尊の誓いの証として神剣「草薙剣」を美夜受の許へと預けて、主従は、伊吹山へと登ります。山に登った武尊の前に山神が姿を化身して姿を現しますが、「あんな雑魚、帰りがけにでもついでに容易く討ち取ってやる。」と吐き捨てる尊に、「神剣の威徳なくして、我に立ち向かうとは、愚かしい。」と尊の驕りをなじりますが、その武力に自信を持つ尊は、これに立ち向かいます。しかし、その化身こそ「山神」本人。その言葉に怒り狂い神通力の限りを尽くし、武尊主従をさんざんに痛めつけます。
はたして、この「山神」とは、何者なのでしょうか?
最初現れた時は、平穏な「翁」の顔で現れ、武尊主従の前に現れた時には、眼を見開き恐ろしくもオドロオドロシイ形相で立ち向かい、最後の力を尽くし、その本性ともいえる姿を現します。その姿に色々感じますが、「山」そのもの「自然」、森羅万象の本質では、なかったのでしょうか?「平穏な翁」が武尊の高飛車な行いに怒り、その表情を変え、人間たちに襲いかかります。山神を追い詰める主従でしたが「神」は、恐ろしく祟る存在。神殺しの悪行の報いか、神罰か、「大氷雨」に体を討ちぬかれ、武尊は、その傷が故で大和の都へ帰り着くことなく、倒れ、その魂は、白鳥(書物には、“白鷺”と見えます。)となり、都の方角へとびだったといいます。。
大塚さんらしい解釈と演出のオンパレード!!終幕、舞台に残された刀と扇。はたして、この意味するところは…?それは、戦場に生き、時代を駆け抜けた悲運の男の生き抜いた証・・・足跡に見えました。
さて、以上で「臨時」特派員の報告を終了させていただきます。
次回は、「大江山」4本立て!!(^_^.)かなりの長期戦になる事が予想されます・・・・
されば、各々方、準備万端ぬかりなく、鑑賞(かっせん)支度致し候へや!!(*^_^*)
2013,08,26 Mon 23:13
新着コメント
来年3月にはお世話になります。
久城社中と申します。
http://www.kushiroshachu.roumi.justhpbs.jp/
社中HPです是非リンクに入れてやって下さい。
宜しくお願いします。。。
久城社中と申します。
http://www.kushiroshachu.roumi.justhpbs.jp/
社中HPです是非リンクに入れてやって下さい。
宜しくお願いします。。。
| kushiro | EMAIL | URL | 13/09/24 23:08 | LyxMo2vE |
臨時特派員Yさんの正体が気になる(笑)
M出さんの文章じゃないし…
I丸さん?
M出さんの文章じゃないし…
I丸さん?
| 特派員の運転手 | EMAIL | URL | 13/08/31 22:25 | fnj95GDE |