故郷の島根県を離れ、家族を連れて千代田に移り住んでこられた、菅沢良典さん。神楽面師として成功するという保障はなく、当時どのような思いを持って工房を開かれたことでしょうか。それから20年の月日が流れました。神楽面師としては言うまでもなく、現在の神楽ブームの立役者としても広島、島根の神楽に多大な貢献をされてきました。現在は広島市内の宮乃木神楽団の顧問として、神楽の指導にあたられているのも、みなさんよくご存知かと思います。今回の月一の舞は、そんな菅沢さんの千代田工房開設20周年をお祝いする、記念公演として開かれました。いつにもまして充実した内容、そして抽選会もあるということで、本当にたくさんのお客さんに来ていただきました。月一史上初、立ち見のお客さんがおられたほどです!
最初は津浪神楽団「塵倫」。各地の競演大会で優勝されているように、やはり洗練された舞という印象ですね。全体的に落ち着いた雰囲気の旧舞ですが、見どころはしっかりと魅せるという演出もあります。鬼が空を飛ぶ場面はもちろんですが、鬼が幕から出てくるところも見どころの一つです。辺りを探るように出てきた鬼が、神を見つけ、そして一気に近づこうとするも、御幣を怖がってまた幕に入ってしまう、この場面の表現や演技が実によくできていると思います。また神に退治される場面でも、最後まで必死に抵抗する鬼の演技、これがまた大熱演でしたね。
そして菅沢さんが小太鼓で出演された宮乃木神楽団「岩見重太郎」。小太鼓の役割といえばいわゆるペースメーカーで、ここに大ベテランの菅沢さんがおられることは、奏楽の方はもちろん舞手の方にとっても心強いのではないでしょうか。そして今回は菅沢さんの記念公演ですから、みなさんいつも以上に気合が入ってましたね。中でも前半はヒヒ、後半は父の仇役と、一つの演目の中で二回も立ち合いをされた重太郎さん、本当にお疲れ様でした。最後のセリフでは思わず言葉に詰まる一幕もありましたが、最後まで役になりきられての大熱演でしたね。
続いて琴庄神楽団「羅生門」。まず注目したのは、鬼の腕が切り取られたのは一条戻り橋であるということ。以前神楽研究コラムでも書きましたが、戻り橋と羅生門は5キロくらい離れた場所にあり、それぞれに鬼の伝説が残されていますので、この演目を見るときはどちらで腕が切り取られたのか、常に注意するようにしてるんです。ではなぜ演目名が「羅生門」か。ここが琴庄さんの上手いところで、渡辺綱の乳母である白妙が、酒呑童子に襲われる場所が羅生門なんですね。そして童子さんと白妙さんの絶妙なコンビネーションと演出によって、あたかも白妙に童子の魂が乗り移ったかのような場面は実によくできていましたね!しかも最後は再び童子が現れ、用なしになった白妙の身柄が力なく倒れるところまであり、特に白妙役の方の演技は本当にお見事でした。
ここまでの前半を「その1」として報告します。次回の後半もお楽しみに!
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2007,12,10 Mon 20:15
コメント
サッチモさん、コメントありがとうございます。
ご無沙汰しております。
いつもお褒めの言葉をいただいて恐縮です。
神楽団、スタッフのみなさん、本当に今回は気合がいつもと違いましたね!
そんな気持ちがこの記事につながったと思います。
またコメントお願いします☆
ご無沙汰しております。
いつもお褒めの言葉をいただいて恐縮です。
神楽団、スタッフのみなさん、本当に今回は気合がいつもと違いましたね!
そんな気持ちがこの記事につながったと思います。
またコメントお願いします☆
| 特派員 | EMAIL | URL | 07/12/10 22:37 | BFfnvy1Y |
菅沢さんの記念公演行きたかったんですが、この記事が読めてよかったです。
そして、特派員さんはさすがといいますか、やはり神楽を見るときの視点が違いますね!大変勉強になります。
次回も期待してます。
そして、特派員さんはさすがといいますか、やはり神楽を見るときの視点が違いますね!大変勉強になります。
次回も期待してます。
| サッチモ | EMAIL | URL | 07/12/10 22:13 | oNzXAc8s |
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