第三部「新たなる神楽への挑戦」
まずは琴庄神楽団「滝夜叉姫」。戦後、新しく作られた神楽の中でも代表的でなおかつ人気のある演目ですね。面や衣装の早変わりで、主役の五月姫の心情により深く迫った、琴庄さんの演出。これも一つの挑戦と言えるでしょう。ファンのみなさんは、そんな五月姫にもちろん注目されたと思いますが、個人的には手下の二人の舞が印象に残りました。長い槍を振り回しながらの荒々しい舞。しかし、力任せに暴れているだけではなく、荒々しい舞を丁寧に舞われている、そんな感じを受けました。
大塚神楽団「橋弁慶」は、昨年発表されたということで、今回のイベントでは一番新しい演目だったようです。源義経の幼少の頃が物語となった珍しい内容で、まさに新たなる挑戦といった感じ。前半は若き義経、遮那王(しゃなおう)が烏天狗(からすてんぐ)との修行に臨みます。長い棒を自在に操る烏天狗の舞が特によかったと思います。後半は五条橋の奥から弁慶が登場。強さ、重たさ、硬さを感じさせる舞を見ていると、「少々ではビクともしないぞ」という弁慶の声が聞こえてくるかのようです。それに対する遮那王は、軽さ、素早さを感じさせる舞。先ほどの修行の成果を発揮し、ついに弁慶から武器を奪います。最後には弁慶の泣き所を急襲。これにはさすがの弁慶も降参です。こういった、日本人ならではの文化的なネタを盛り込むあたり、大塚さんらしい演出だなと思いました。
横田神楽団「伊吹山」。日本武尊のお供をする、韋駄天権内(いだてんごんない)という人物が登場しますが、チャリ役ということでみなさん珍しいと思いながらご覧になったのではないでしょうか。「長い足に物を言わせて」という言葉の通り、広いステージを走り回る軽快な舞を披露。中盤の酒宴の場面では、日本武尊が扇子の舞、剣の舞を披露する傍らで、背負っていた小太鼓を叩いてみたり。チャリというと、アドリブだらけの広島弁でしゃべる姿が浮かんでくる方も多いと思いますが、それだけに今回の役がすごく新鮮に感じられたのではないでしょうか。それと全体的に、新たな挑戦というよりは第二部の「伝統を受け継ぐ」のほうが合っているような印象も受けましたね。
中川戸神楽団「大江山」。以前こちらのブログでも特集した大江山についての様々な伝説。この中川戸さんの上演も、そんな伝説にこだわって作られているのがよく伝わってきました。全編にちりばめられた、深くて味のあるセリフ。酒呑童子をはじめとした鬼たちの面。中でも茨木童子は三つの目がありましたね!これもある伝説では「茨木童子は三つの目を持つ珍しい鬼」という姿で語られているんです。しかし一番印象に残ったのはやはりクライマックス。酒呑童子の壮絶な最期を、いろいろな仕掛けで演出され、「どうなるんだ!?」と舞台に釘付けになりました。
原田神楽団「土蜘蛛」。先ほどの「大江山」ではあの酒呑童子を討ち取った源頼光ですが、この演目では絶体絶命の危機に陥ります。前半のみの登場ですが、やはり頼光の武勇が光るほど、この演目が面白くなると思います。強さはもちろん、威厳や位の高さをも感じさせる舞で、見ていて後半がさらに楽しみになりましたね。しかし後半は「チャンチキの神様」が例によって?大活躍。正直、舞よりもそちらに注目してしまった方も多くおられたことでしょう。そして、上演の最後に神が退場するところ、なんと二人の神がチャンチキの前に歩み寄り、深々と礼をされました。最後にもう一度、客席から大きな笑いが起こりましたね。
最後は上河内神楽団「紅葉狩」。最近維茂役は世代交代されたようで、若い方が舞っておられますね!人気神楽団さんの主役ですから、私たちには想像もできないような苦労がたくさんあることと思いますが、これからも頑張っていただきたいですね。一足先に世代交代された鬼女大王さん。こちらは早くも貫禄を漂わせるような舞で、しっかりとその役を演じられていたと思います。そして二人の神、三匹の鬼が入り乱れる立ち合い。とてもテンポが速いのですが、決して雑ではありません。このあたり、まさに日々の練習の成果が見てとれるのではないでしょうか。
以上、全十演目の報告でした。そして今回も「その3」で番外編をお届けしようと思います!
まずは琴庄神楽団「滝夜叉姫」。戦後、新しく作られた神楽の中でも代表的でなおかつ人気のある演目ですね。面や衣装の早変わりで、主役の五月姫の心情により深く迫った、琴庄さんの演出。これも一つの挑戦と言えるでしょう。ファンのみなさんは、そんな五月姫にもちろん注目されたと思いますが、個人的には手下の二人の舞が印象に残りました。長い槍を振り回しながらの荒々しい舞。しかし、力任せに暴れているだけではなく、荒々しい舞を丁寧に舞われている、そんな感じを受けました。
大塚神楽団「橋弁慶」は、昨年発表されたということで、今回のイベントでは一番新しい演目だったようです。源義経の幼少の頃が物語となった珍しい内容で、まさに新たなる挑戦といった感じ。前半は若き義経、遮那王(しゃなおう)が烏天狗(からすてんぐ)との修行に臨みます。長い棒を自在に操る烏天狗の舞が特によかったと思います。後半は五条橋の奥から弁慶が登場。強さ、重たさ、硬さを感じさせる舞を見ていると、「少々ではビクともしないぞ」という弁慶の声が聞こえてくるかのようです。それに対する遮那王は、軽さ、素早さを感じさせる舞。先ほどの修行の成果を発揮し、ついに弁慶から武器を奪います。最後には弁慶の泣き所を急襲。これにはさすがの弁慶も降参です。こういった、日本人ならではの文化的なネタを盛り込むあたり、大塚さんらしい演出だなと思いました。
横田神楽団「伊吹山」。日本武尊のお供をする、韋駄天権内(いだてんごんない)という人物が登場しますが、チャリ役ということでみなさん珍しいと思いながらご覧になったのではないでしょうか。「長い足に物を言わせて」という言葉の通り、広いステージを走り回る軽快な舞を披露。中盤の酒宴の場面では、日本武尊が扇子の舞、剣の舞を披露する傍らで、背負っていた小太鼓を叩いてみたり。チャリというと、アドリブだらけの広島弁でしゃべる姿が浮かんでくる方も多いと思いますが、それだけに今回の役がすごく新鮮に感じられたのではないでしょうか。それと全体的に、新たな挑戦というよりは第二部の「伝統を受け継ぐ」のほうが合っているような印象も受けましたね。
中川戸神楽団「大江山」。以前こちらのブログでも特集した大江山についての様々な伝説。この中川戸さんの上演も、そんな伝説にこだわって作られているのがよく伝わってきました。全編にちりばめられた、深くて味のあるセリフ。酒呑童子をはじめとした鬼たちの面。中でも茨木童子は三つの目がありましたね!これもある伝説では「茨木童子は三つの目を持つ珍しい鬼」という姿で語られているんです。しかし一番印象に残ったのはやはりクライマックス。酒呑童子の壮絶な最期を、いろいろな仕掛けで演出され、「どうなるんだ!?」と舞台に釘付けになりました。
原田神楽団「土蜘蛛」。先ほどの「大江山」ではあの酒呑童子を討ち取った源頼光ですが、この演目では絶体絶命の危機に陥ります。前半のみの登場ですが、やはり頼光の武勇が光るほど、この演目が面白くなると思います。強さはもちろん、威厳や位の高さをも感じさせる舞で、見ていて後半がさらに楽しみになりましたね。しかし後半は「チャンチキの神様」が例によって?大活躍。正直、舞よりもそちらに注目してしまった方も多くおられたことでしょう。そして、上演の最後に神が退場するところ、なんと二人の神がチャンチキの前に歩み寄り、深々と礼をされました。最後にもう一度、客席から大きな笑いが起こりましたね。
最後は上河内神楽団「紅葉狩」。最近維茂役は世代交代されたようで、若い方が舞っておられますね!人気神楽団さんの主役ですから、私たちには想像もできないような苦労がたくさんあることと思いますが、これからも頑張っていただきたいですね。一足先に世代交代された鬼女大王さん。こちらは早くも貫禄を漂わせるような舞で、しっかりとその役を演じられていたと思います。そして二人の神、三匹の鬼が入り乱れる立ち合い。とてもテンポが速いのですが、決して雑ではありません。このあたり、まさに日々の練習の成果が見てとれるのではないでしょうか。
以上、全十演目の報告でした。そして今回も「その3」で番外編をお届けしようと思います!
2009,02,25 Wed 23:46
コメント
hiroさん、コメントありがとうございます。
初めてのRCC早春、しっかり楽しまれたようで何よりです。
また来年もぜひ行ってみてくださいね!
これからもよろしくお願いします。
初めてのRCC早春、しっかり楽しまれたようで何よりです。
また来年もぜひ行ってみてくださいね!
これからもよろしくお願いします。
| 特派員Y | EMAIL | URL | 09/02/26 12:35 | qi6UEqak |
いつも特派員報告を楽しみにしています。今回初めてRCC早春神楽共演大会に行きました。大きなホールならではの音響の良さ・照明の演出がとても良くて、ホールで見る神楽を十分楽しむことができました。神楽団さんの熱意も感じることが出来ました。また特派員報告を読みながら1つ1つの演目の感動を思い出してます(^^)番外編も楽しみにしています。
| hiro | EMAIL | URL | 09/02/26 00:36 | HOGT0.9w |
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