2月12日に千代田開発センターで「月一の舞」が行われました。今回のテーマは「神楽が語るーケモノ伝ー」で、獣(けもの)が登場する神楽が4演目上演されました。それでは報告です。
まず最初の獣は狐、本地中組神楽団「那須野」です。本地中組神楽団さんは「悪狐伝」を保持されていますが、この「那須野」は三年ほど前から取り組まれている演目なんだそうです。「山伏」や「黒塚」といった演目のように、山伏と剛力が出てきて、柴の戸や里人とのやり取りがあったりするのが大きな特徴ですね。そして主役の悪狐は、変化自在でいろいろな姿を見ることができ、今回の獣の中でも最も人気があるキャラクターでしょう。さて個人的に印象に残ったのが悪狐との対決が始まろうとする場面。着物の影に隠れた狐の化身に対し、矢を放った三浦介、さらに間髪入れずに刀で斬りつけた上総介。見事なコンビネーションに一瞬「やったか!?」と思うほどでした。しかし悪狐の姿はなく、声だけが舞台に響きます。一体どこにいるのかと、辺りを伺う二人の神。見ているこちらの意表を突き、なおかつ合戦を盛り上げるのに効果的な演出だったように思います。
次は狒々が登場する演目で、梶矢神楽団「人身御供」です。ちょっと聞きなれない演目ですね。これは宮本左門之助という人物が、父の仇討ちをするために諸国を巡り、その中で三つの大難に遭うのですが、そのうちの一つがこの演目なんだそうです。この「人身御供」と、「女狐退治」「坂田峠」という演目があり、これを三部作として保持されています。「人身御供」のあらすじは、左門之助がある庄屋の娘の身代わりとして神様への生贄となり、現れた怪物を退治します。この怪物の正体が狒々というわけです。戦いの中で左門之助は刀を取られてしまいますが、狒々が真似をするという習性を逆手にとって刀を奪い返します。真似をしては何度も自分を切ってしまう狒々がちょっとかわいそうにも見えましたが、それだけ舞手の方が上手く狒々の仕草や感情を表現されていた結果だと思います。敵役なのについ感情移入してしまう、そんな魅力のある獣さんでした。
そして獣というより魔物でしょうか、土居神楽団「頼政鵺退治」。頭は猿、体は虎、手足は牛、そして尾は蛇に似ている。その異様な姿は、面や衣装などで工夫されているように感じました。最初に出てきたときは豪華な刺繍でいかにも重そうな衣装で、黒雲とともに現れるような感じを舞で表現されていたように思います。戦いの後半では、一回り大きな面と白い衣装で、頼政に負けじと激しい舞を繰り広げます。獣らしく、すばやい動きで頼政らに襲い掛かるようなところもありました。そしてちょっと話が前後してしまいますが、神の舞も印象的でした。流れるような滑らかさを見せたかと思えば、ドッシリと腰を落として力強くしたり。重厚でありながら優雅な山県舞の特徴を感じられる舞だったように思います。
最後はなんと虎が登場する珍しい演目、浜田市の石見神楽長澤社中「加藤清正」。加藤清正はあの豊臣秀吉に仕えた人物で、秀吉の朝鮮出兵の際に虎退治をしたという伝承もあります。この神楽はその部分を元に創られたそうです。そして何と言っても注目は、虎の登場シーン。唸り声を上げながらの登場は、初めてご覧になった方にとって大きな驚きだったことでしょう。さらに虎は客席に進出。歓声や悲鳴があちこちで上がりましたね。そしてついに清正が虎退治へと向かいます。長槍を操る清正ですが、襲い掛かってくる虎はなんと二匹。リアルな虎の動きと清正さんの鬼気迫る表情が、緊迫感をさらに高めてくれます。大立ち回りの末、なんとか虎退治に成功する清正さん。これで終わりと思いきや、明(朝鮮)の軍勢との合戦が待っていました。一つの演目で二味が楽しめる、なかなか贅沢な演目でもありましたね。
上演後は長澤社中のみなさんのご協力により、加藤清正と虎たちとの撮影会がありました。滅多にお目にかかれないキャラクターとあって、大人気でしたね。来月はいよいよ今年度最後の開催となります。来年度のプログラムもすでに発表されていますので、ファンのみなさん、しっかりチェックしてくださいね!
まず最初の獣は狐、本地中組神楽団「那須野」です。本地中組神楽団さんは「悪狐伝」を保持されていますが、この「那須野」は三年ほど前から取り組まれている演目なんだそうです。「山伏」や「黒塚」といった演目のように、山伏と剛力が出てきて、柴の戸や里人とのやり取りがあったりするのが大きな特徴ですね。そして主役の悪狐は、変化自在でいろいろな姿を見ることができ、今回の獣の中でも最も人気があるキャラクターでしょう。さて個人的に印象に残ったのが悪狐との対決が始まろうとする場面。着物の影に隠れた狐の化身に対し、矢を放った三浦介、さらに間髪入れずに刀で斬りつけた上総介。見事なコンビネーションに一瞬「やったか!?」と思うほどでした。しかし悪狐の姿はなく、声だけが舞台に響きます。一体どこにいるのかと、辺りを伺う二人の神。見ているこちらの意表を突き、なおかつ合戦を盛り上げるのに効果的な演出だったように思います。
次は狒々が登場する演目で、梶矢神楽団「人身御供」です。ちょっと聞きなれない演目ですね。これは宮本左門之助という人物が、父の仇討ちをするために諸国を巡り、その中で三つの大難に遭うのですが、そのうちの一つがこの演目なんだそうです。この「人身御供」と、「女狐退治」「坂田峠」という演目があり、これを三部作として保持されています。「人身御供」のあらすじは、左門之助がある庄屋の娘の身代わりとして神様への生贄となり、現れた怪物を退治します。この怪物の正体が狒々というわけです。戦いの中で左門之助は刀を取られてしまいますが、狒々が真似をするという習性を逆手にとって刀を奪い返します。真似をしては何度も自分を切ってしまう狒々がちょっとかわいそうにも見えましたが、それだけ舞手の方が上手く狒々の仕草や感情を表現されていた結果だと思います。敵役なのについ感情移入してしまう、そんな魅力のある獣さんでした。
そして獣というより魔物でしょうか、土居神楽団「頼政鵺退治」。頭は猿、体は虎、手足は牛、そして尾は蛇に似ている。その異様な姿は、面や衣装などで工夫されているように感じました。最初に出てきたときは豪華な刺繍でいかにも重そうな衣装で、黒雲とともに現れるような感じを舞で表現されていたように思います。戦いの後半では、一回り大きな面と白い衣装で、頼政に負けじと激しい舞を繰り広げます。獣らしく、すばやい動きで頼政らに襲い掛かるようなところもありました。そしてちょっと話が前後してしまいますが、神の舞も印象的でした。流れるような滑らかさを見せたかと思えば、ドッシリと腰を落として力強くしたり。重厚でありながら優雅な山県舞の特徴を感じられる舞だったように思います。
最後はなんと虎が登場する珍しい演目、浜田市の石見神楽長澤社中「加藤清正」。加藤清正はあの豊臣秀吉に仕えた人物で、秀吉の朝鮮出兵の際に虎退治をしたという伝承もあります。この神楽はその部分を元に創られたそうです。そして何と言っても注目は、虎の登場シーン。唸り声を上げながらの登場は、初めてご覧になった方にとって大きな驚きだったことでしょう。さらに虎は客席に進出。歓声や悲鳴があちこちで上がりましたね。そしてついに清正が虎退治へと向かいます。長槍を操る清正ですが、襲い掛かってくる虎はなんと二匹。リアルな虎の動きと清正さんの鬼気迫る表情が、緊迫感をさらに高めてくれます。大立ち回りの末、なんとか虎退治に成功する清正さん。これで終わりと思いきや、明(朝鮮)の軍勢との合戦が待っていました。一つの演目で二味が楽しめる、なかなか贅沢な演目でもありましたね。
上演後は長澤社中のみなさんのご協力により、加藤清正と虎たちとの撮影会がありました。滅多にお目にかかれないキャラクターとあって、大人気でしたね。来月はいよいよ今年度最後の開催となります。来年度のプログラムもすでに発表されていますので、ファンのみなさん、しっかりチェックしてくださいね!
2012,02,14 Tue 23:42
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