2月26日に広島市の文化交流会館でRCC早春神楽共演大会が行われました。芸北、石見地方に伝わる神楽。その伝統的な面と創造的な面の両方がしっかりと味わえるイベントで、今年もたくさんの方が楽しみにされていたことと思います。それではご紹介したいと思います。
第一部「原点を見つめる」
筏津神楽団「天の岩戸」で幕を開けた今年の早春神楽。第一部は「原点を見つめる」というテーマですが、一口に原点と言っても、いろいろな捉え方があると思います。例えば「神楽」という言葉、「神様が楽しむ」と書きますね。岩戸の前に集まったたくさんの神様が、楽しそうに舞ったり囃したりしている様子は、まさに「神楽」という言葉がピッタリ。宇津女命が両手に扇子を持って、身体をいっぱいに伸ばしたり、のびのびと柔らかな舞を見せてくれました。それとは対照的に、手力男命は腰を落としてキレのある動きで力強い舞を披露。さらに兒屋根命と太玉命が鈴を鳴らして囃したて、どんどん神楽が盛り上がっていきます。照明などの舞台装置の効果ももちろんありますが、そんな神様が楽しむ様子に、神楽の原点を見ることができたように思います。
第二部「伝統を受け継ぐ」
川北神楽団「鍾馗」。今回のRCC早春は、第二部がいつもより少なく、第三部の「新たなる神楽への挑戦」がボリュームアップされていました。そんな中での昔ながらの伝統的な舞は、逆に会場の皆さんにとって新鮮に思えたかもしれません。特に舞台装置に頼ることもなく、舞と楽、じっくりと魅せてくださいました。ゆったりとした流れに力強さを感じる、鍾馗大神の独特の舞。神の中でも最も魅せる舞の一つと言えるでしょう。そしてこちらも独特な大疫神の舞。低く低く、地を這うような舞い方が表現しているのは、いったい何でしょうか。そこを感じ取って、自分の想像を膨らませながら見るのも、神楽の醍醐味の一つ。その神楽団を代表する舞手が舞われるという演目だけに、本当に見応えたっぷりの上演でした。
石見神楽亀山社中「八岐大蛇」。広島の神楽ファンのみなさんにも、石見神楽の大蛇の面白さはもうすっかりお馴染みとなっていることと思います。今回の上演も広いステージをいっぱいに使った、迫力あるものでした。長い蛇胴を自在に操り、まるで生きているように見せるその技は、まさに伝統芸能。表からしか見ることのできない会場の皆さんにとっては、その蛇胴の後ろで、舞手さんがどのような動きをされているか、おそらく想像もつかないと思います。そんなことを気付かせるスキも与えないくらい、次から次へと見事な舞を見せてくださいました。そして印象的だったのが、須佐之男命が大蛇たちに切りかかる場面。普通はぐっすり寝ている大蛇たちですが、須佐之男の気配に目を覚まし、「こいつは何じゃ?」というようにその動向をじっと見つめているんですよね。そして敵と知るや一斉に火を噴いて襲い掛かってくるという演出、新鮮で面白く感じました。
第三部「新たなる神楽への挑戦」
琴庄神楽団「厳島」は、昨年に続いての上演でした。最初の上演以来、常に注目を浴び続けているので、おそらく神楽団のみなさんも常にプレッシャーを感じながらの上演ではないでしょうか。しかしそれに臆することなく、さらに良いものにされているなと感じるのは、きっと私だけではないと思います。平清盛が主役ではありますが、その妻、時子も重要な役どころです。一番最初に登場し、語り手として見る者を神楽の世界に引き込んでくださいます。舞はなく、語るだけの場面ですが、感情をしっかりと含んだその言葉は、前半の見どころ!と言ってもいいほど。そして後半にはもう一人の重要な人物、陰陽師の安倍泰親が登場します。清盛に襲い掛かる怨霊たちを追い払うという大きな見せ場がありますが、なんと言ってもこの演目の主役は清盛であって、それを盛り上げようと、周りの舞手さんが上手く演じているようにも感じられました。
大都神楽団「土蜘」。今回のプログラムの中でも、ひと際インパクトの大きかった上演だったのではないでしょうか。葛城山の土蜘蛛の精魂が、胡蝶となって源頼光に近づき…というお馴染みのものとは違った内容。一枚目の写真のように、お坊さんの姿で頼光を呪い殺そうとするんですね。序盤のこのお坊さんの舞がなんとも独特。奇妙というか異色というか、とにかく「おぉ!?」と思わずにはいられない、実にクセのある舞。言葉では表現しきれないのが残念です(笑)。一気に引き込まれましたね~。斬新で見所だらけの上演でしたが、圧巻はクライマックス。土蜘蛛の妖術によって、舞台を遮断するほどの巨大な落としグモの出現。これには客席から一斉に「うわぁ!」という大歓声が。合戦はとにかくクモのオンパレードで、舞手さんは真っ白。土蜘蛛の面もそうでしたが、とにかく印象に残る上演でした。
以上、前半の5演目のご紹介でした。「その2」では残りの5演目をご紹介します。
第一部「原点を見つめる」
筏津神楽団「天の岩戸」で幕を開けた今年の早春神楽。第一部は「原点を見つめる」というテーマですが、一口に原点と言っても、いろいろな捉え方があると思います。例えば「神楽」という言葉、「神様が楽しむ」と書きますね。岩戸の前に集まったたくさんの神様が、楽しそうに舞ったり囃したりしている様子は、まさに「神楽」という言葉がピッタリ。宇津女命が両手に扇子を持って、身体をいっぱいに伸ばしたり、のびのびと柔らかな舞を見せてくれました。それとは対照的に、手力男命は腰を落としてキレのある動きで力強い舞を披露。さらに兒屋根命と太玉命が鈴を鳴らして囃したて、どんどん神楽が盛り上がっていきます。照明などの舞台装置の効果ももちろんありますが、そんな神様が楽しむ様子に、神楽の原点を見ることができたように思います。
第二部「伝統を受け継ぐ」
川北神楽団「鍾馗」。今回のRCC早春は、第二部がいつもより少なく、第三部の「新たなる神楽への挑戦」がボリュームアップされていました。そんな中での昔ながらの伝統的な舞は、逆に会場の皆さんにとって新鮮に思えたかもしれません。特に舞台装置に頼ることもなく、舞と楽、じっくりと魅せてくださいました。ゆったりとした流れに力強さを感じる、鍾馗大神の独特の舞。神の中でも最も魅せる舞の一つと言えるでしょう。そしてこちらも独特な大疫神の舞。低く低く、地を這うような舞い方が表現しているのは、いったい何でしょうか。そこを感じ取って、自分の想像を膨らませながら見るのも、神楽の醍醐味の一つ。その神楽団を代表する舞手が舞われるという演目だけに、本当に見応えたっぷりの上演でした。
石見神楽亀山社中「八岐大蛇」。広島の神楽ファンのみなさんにも、石見神楽の大蛇の面白さはもうすっかりお馴染みとなっていることと思います。今回の上演も広いステージをいっぱいに使った、迫力あるものでした。長い蛇胴を自在に操り、まるで生きているように見せるその技は、まさに伝統芸能。表からしか見ることのできない会場の皆さんにとっては、その蛇胴の後ろで、舞手さんがどのような動きをされているか、おそらく想像もつかないと思います。そんなことを気付かせるスキも与えないくらい、次から次へと見事な舞を見せてくださいました。そして印象的だったのが、須佐之男命が大蛇たちに切りかかる場面。普通はぐっすり寝ている大蛇たちですが、須佐之男の気配に目を覚まし、「こいつは何じゃ?」というようにその動向をじっと見つめているんですよね。そして敵と知るや一斉に火を噴いて襲い掛かってくるという演出、新鮮で面白く感じました。
第三部「新たなる神楽への挑戦」
琴庄神楽団「厳島」は、昨年に続いての上演でした。最初の上演以来、常に注目を浴び続けているので、おそらく神楽団のみなさんも常にプレッシャーを感じながらの上演ではないでしょうか。しかしそれに臆することなく、さらに良いものにされているなと感じるのは、きっと私だけではないと思います。平清盛が主役ではありますが、その妻、時子も重要な役どころです。一番最初に登場し、語り手として見る者を神楽の世界に引き込んでくださいます。舞はなく、語るだけの場面ですが、感情をしっかりと含んだその言葉は、前半の見どころ!と言ってもいいほど。そして後半にはもう一人の重要な人物、陰陽師の安倍泰親が登場します。清盛に襲い掛かる怨霊たちを追い払うという大きな見せ場がありますが、なんと言ってもこの演目の主役は清盛であって、それを盛り上げようと、周りの舞手さんが上手く演じているようにも感じられました。
大都神楽団「土蜘」。今回のプログラムの中でも、ひと際インパクトの大きかった上演だったのではないでしょうか。葛城山の土蜘蛛の精魂が、胡蝶となって源頼光に近づき…というお馴染みのものとは違った内容。一枚目の写真のように、お坊さんの姿で頼光を呪い殺そうとするんですね。序盤のこのお坊さんの舞がなんとも独特。奇妙というか異色というか、とにかく「おぉ!?」と思わずにはいられない、実にクセのある舞。言葉では表現しきれないのが残念です(笑)。一気に引き込まれましたね~。斬新で見所だらけの上演でしたが、圧巻はクライマックス。土蜘蛛の妖術によって、舞台を遮断するほどの巨大な落としグモの出現。これには客席から一斉に「うわぁ!」という大歓声が。合戦はとにかくクモのオンパレードで、舞手さんは真っ白。土蜘蛛の面もそうでしたが、とにかく印象に残る上演でした。
以上、前半の5演目のご紹介でした。「その2」では残りの5演目をご紹介します。
2012,03,01 Thu 00:56
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