普段は三つの演目からなる物語を一つにまとめた原田神楽団「大江山三段返し」。なかなか見る機会のない演目だけに、楽しみにされていた方も多かったと思います。まず最初は源頼光が登場し、四天王を怪物退治に向かわせたことを説明します。すると次の場面では、戻り橋あたりで激闘を繰り広げる四天王たちと茨木童子が登場。この場面転換の面白さも新舞の特徴の一つですね。そして切り取られた左腕を取り返すために、酒呑童子が乳母に化けて都へと向かいます。「大江山」だけでは見ることのできない、酒呑童子の変化自在な一面も楽しめます。そして今回、いつも以上に気合が入っていたように見えたのが酒呑童子さん。酒に酔ったときのセリフも実に感情豊かで、客席から笑い声や拍手が上がっていました。
続いて宮乃木神楽団「女狐退治」。聞きなれない演目ですが、みなさん同じ宮乃木さんの「岩見重太郎」はご覧になったことがありますか?この演目はその前編といった感じで、父の敵を討つために諸国を巡る、岩見重太郎が出遭う三つの大難のうちの一つです。注目はやはり、狐の変化でしたね。面や衣装、髪の色まで変わったりして、客席を沸かせておられました。中でも画像の一枚目、青い照明とドライアイスの効果が抜群だった場面。まさに「妖気が漂う」という表現がピッタリ。いかにも何かが起こる!という雰囲気いっぱいでした。そして後半、その狐と重太郎・重蔵の兄弟が対決します。難なく退治したかに見えましたが、実はその後、意外な展開が待っていました。退治する側もされる側も、一筋縄ではいかない、複雑な気持ちを感じる演目でした。
上河内神楽団「新編伊吹山」。今年のRCC早春神楽共演大会は、割と派手な演目が多かった印象があるのですが、その中で落ち着いてじっくりと見ることができたうちの一つがこの上演でした。舞手さんからはもちろん、奏楽さんからも余裕が感じられ、それが見る側に安定感を与えてくださったように思います。印象的なのは中盤の鬼の舞。豪華で重たそうな衣装を着た、三人の鬼たちの舞は、かなり新鮮な印象を受けます。紅葉狩の鬼女たちとは違った、重量感ある舞。流れはゆったりですが、ほんのわずかな動きで鬼の怖さや凄みを感じることができました。そして最後の戦いは、それまでのゆったりとした雰囲気とはガラっと変わって、次から次へと目まぐるしく舞が披露されていきます。このメリハリが、より神楽を面白く感じさせているのでしょうね。
大塚神楽団「滝夜叉姫」。新舞の中でも人気のある演目で、こちらもあまり派手な演出はない、オーソドックスな印象でした。先ほどの上河内さんと同じく、全編を通して余裕が感じられました。その中で、五月姫が滝夜叉姫になったりという変化があるので、より緩急のメリハリが多かったように思います。一つ一つの舞の中でも、伸びるところはしっかり伸びる。腰を落とすところはしっかり落とす。速く動くところ、しっかり止まるところ。その動きに太鼓のドン!という音が合わさったり、滑らかな笛が乗ってきたりと、奏楽が加わることでより一層、神楽が面白く感じられますね。新しい神楽の中にも、演出ではなく、伝統を改めて感じることができたように思います。
最後は中川戸神楽団「紅葉狩」。何年か前にもこの「紅葉狩」を上演されましたが、その時からまた少し変わっていたように思います。完成を決めることなく、常に新しいことに挑戦されている中川戸さんの姿勢が感じられました。「紅葉狩」という、誰もが知っている物語ですが、その構成もプラスアルファが加わって、新しいものに仕上がっています。悲しい運命を辿り、鬼にされて討たれてしまう呉葉(くれは)を中心としたこの上演。その呉葉の変化だけでも十分な見所で溢れています。最初は姫の姿、そして小さな鬼の面、それが角が生えたり少しずつ変化していき、最後には大きな鬼となります。もちろん見た目だけではなく、舞も段々と変化していますが、そういう所にこそ、神楽の面白さを感じたいですね。
以上、全10演目のご紹介でした。そしてもう一つのお楽しみ、大会パンフレット購入による抽選会。昨年は見事にお米を当てたので、今年も!と意気込んで挑戦してきました。たまたま、私の前の方が、大きな商品をゲットされたので、これは自分にはハズレの流れか…という思いが一瞬よぎりましたが、ガラガラと抽選してみると…!なんとまたお米が当たりました!今年もいいことがありそうですね(笑)。来年もこの大会を楽しみにしたいと思います。
2012,03,04 Sun 00:49
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