8月21日、千代田開発センターにおいて、「月一の舞い 特別公演 神楽新時代」が開催されました。今週の見どころでもふれましたが、今回は初演演目が4つもあり、前例のない企画となりました。各神楽団の皆さんが様々な思いを込めて創作され、前日から綿密な打ち合わせ・セッティングをされた団体もいらっしゃいました。会場でご覧になったお客様にも、その熱心な気持ちが届いたことと思います。それでは報告です。
東山神楽団「紅葉狩」
今や、広島の神楽を代表する演目に成長した「紅葉狩」。三人の姫の織りなす優美な舞、姫から鬼へと正体をあらわす場面など見どころも盛りだくさんですね。紅葉を表すような赤い扇子を持ち、ゆっくりと舞う姿。また、やわらかい動作を繰り返す姫たちの様子はまさに雅で華やかでした。しかし、鬼へと姿を変えるとその動きは一変します。先程までの優雅さは一瞬にして消え、荒々しさと俊敏な動きで姫は鬼であるということを私たちに思い出させてくれます。そして維茂と鬼女の対決では、勢いのある舞は勿論、奏楽のみなさんもヒートアップしていきます。会場も一演目目にして、熱気に包まれていきました。
大都神楽団「土 蜘(つちぐも)」
広島で生まれた「葛城山(土蜘蛛)」を大都神楽団さんの世界観で演じていただきました。広島では、土蜘蛛は姫の姿で頼光に近づきますが、出てきたのは怪しげなお坊さんでした。いつもなら、毒薬で頼光を亡き者にしようとしますが、今回は祈祷によって呪い殺そうとしました。しかし、そこは百戦錬磨の頼光ですので、太刀を抜き、間一髪で追い払います。そして、頼光は四天王に土蜘蛛征伐を命じ、四天王は松明の薄明かりの中、岩屋へとたどり着きます。四天王が岩屋へ火を放つと、大きな蜘蛛の巣から土蜘蛛が正体を現します。正体を現した土蜘蛛、その強さは半端ではなく、妖術で四天王たちを追い詰めます。しかし、渡辺綱の持つ「蜘蛛切丸」により、形勢は逆転し、妖術にかかった仲間を救い出します。しかし、ここで妖術を解いても眠りっぱなしの方がお一人・・まさかりを担いだあの方です(次の演目に出てくるお母さんが泣いてしまいますよ)。先輩たちにみっちり絞られた金時さん。最後は、全員で土蜘蛛にトドメをさしました。するとどうでしょう。四方八方から土蜘蛛の断末魔のごとく蜘蛛が飛び交い、ついには上から舞台を覆うごとく蜘蛛が降ってきました。とても興味深い内容でしたね。
大塚神楽団「山姥」
先ほどの演目でも大活躍だった坂田金時と源頼光主従の出会いの物語。金時がまだ怪童丸と呼ばれ、母の八重桐とともに山賊を生業としていたころ、山賊征伐の勅命を受けた頼光主従が怪童丸たちの住処に一夜の宿を求めにやってきます。八重桐と怪童丸は、寝静まる頃頼光たちに一気に襲いかかります。しかし、勝負は頼光たちに軍配は上がります。そして、山姥といえばここが一番のみどころ。怪童丸が坂田金時と名を変え頼光の下臣となり、母と別れるシーン。怪童丸が名残惜しそうにすがるも母がそれをゆっくりと手で妨げます。母自身も名残惜しいはずなのに、その様子に次第にこちらの目頭が熱くなります。別れ際の最後、「されど怪童丸、必ず人様に山姥が一人子、怪童丸と笑われ給うな。」という言葉に母の全ての気持ちが入っていたように思います。観客席からは涙を拭う方もいらっしゃいました。
宮乃木神楽団「女狐退治」
こちらも、初演の演目。大会前から話題の多い演目で楽しみにされていた方も多かったことと思います。まず、最初は悲しい場面からスタートしていきます。狐が猟師に追われ、子狐は矢を受けて死んでしまいます。そして親狐は、人間に恨み辛みを抱き、何百年と生き長らえるうちに人間に姿を変えることを覚え、人々を悩ませていくのです。 時は移り、岩見重太郎・重蔵兄弟は、父の仇を討つため諸国を遍歴していました。そして、大願成就の祈願のため防府天満宮に立ち寄ったところ、父の仇を討つためには、3つの難を乗り越える必要があると御告げを受け、第一の難である「女狐退治」へと向かいます。山に分け入った重太郎たちは、およしという女に出会い、行動をともにします。そう、この女の正体こそ母狐です。あたりが真っ暗になると怪しい火の玉(狐火)が現れ、女狐が正体を現します。何百年も生きた女狐ですが、動きも俊敏で重太郎たちを翻弄します。妖術を駆使して重太郎たちを追い詰め、ついには重蔵を取り喰らってしまいます。重太郎は妖術を破り女狐を退治し、重蔵を失った悲しみをしまい込みながら、次の難(狒々退治・広瀬軍蔵との対決)に向かいます。
石見神楽亀山社中「月一の舞いのための戸隠山雅鬼揃(とがくしやまみやびおにぞろい)
この演目名前を聞いて気づかれた方も多いと思いますが、広島の神楽の代表演目「紅葉狩」の物語です。亀山社中さんが広島と島根の交流に敬意をはらい、今回の月一の舞いのためだけに創作されました。 冒頭から戸隠山に住む鬼女たちが登場し、能を思わせる舞いぶりで、会場を魅力しました。続いて登場したのは、平維茂。鹿狩りを楽しむも、錦彩なす紅葉に見とれてしまい道に迷ってしまったようです。その様子を遠くから見ていた鬼女たちは、偽りの宴を開き、維茂をおびき寄せます。この罠にまんまと引っかかった維茂は、酒に酔ったところを、鬼女たちの妖術にかかり正気を失います。いつもなら、紙蜘蛛だけの演出ですが、今回は、天井から大量の紅葉が降り注いできて、まるで物語の世界へと引き込まれるようでした。そしてクライマックス、岩屋から現れたのは、先ほどの美しさとはかけ離れた恐ろしい顔をした鬼女たち。持っているものは打杖といい、能などでも使われる採物です。また、最後の大王にトドメをさす場面では、周りが真っ赤に染まるほどの紙蜘蛛が飛び交い、島根と広島の神楽の交流を通してこその演出をみることができました。今回の演目では、能「紅葉狩」を意識されて、口上・舞を構成されており、普段の神楽とは、少し違ったものに見えた方もおられるかもしれません。しかし、神楽も能・歌舞伎などの要素を取り入れながら、現在の神楽に変わってきました。今回の演目は、創作という形でしたが、神楽の原点と創造への挑戦という見方もできるのではないでしょうか。
中川戸神楽団「茨木」
今週のみどころでもあったように、「茨木」と聞けば茨木童子を思い浮かべ、あらすじは「羅生門」や「戻り橋(後編)」のお話かなぁ?と思われた方が多かったことでしょう。一般的な内容としては皆さんご存知の通り、渡辺綱によって切り落とされた茨木童子の片腕を酒呑童子が取り返すお話。しかし、今回中川戸さんが舞う「茨木」には、その腕を取り返すはずの酒呑童子は登場してきません。じゃぁ、誰が取りに行くの?とお思いでしょうが、誰が取り返しに行くかというと…そうです!! 茨木童子本人が行くのです。茨木童子は酒呑童子の右腕とされ、抜群の知恵を持ち合わせていたことから、「茨木」の演目では茨木童子自らが腕を取りに行くんですね。なので茨木童子は、渡辺綱の乳母にと姿を変え綱の館へと向かいます。この時、良く見てみると綱の乳母に化けていても左の腕がないことから、茨木童子本人という事がうかがえます。また、中川戸さんの茨木童子と言えば、第三の目をもつ特徴のある面が印象的。自分の腕を取り返した後、茨木童子へと徐々に正体を現しますが、その鬼の面にも第三の目がしっかりとありました。中川戸さんのこだわりが感じられますね。そして、なんといっても中川戸さんといえば、スーパー神楽の代名詞。今回の演目でもどんな事がおこるのか皆さんワクワクしていたと思います。このお話は最後、茨木童子は虚空飛天の妖術で大江山へと飛び去って行ってしまうのですが、なんと!!! 茨木童子、虚空飛天の妖術を使って本当に宙に浮き飛び去ってしまうのです。この時の観客のざわめきは本当にすごかったと思います。まだ直接見られてない方は、あっと驚きますよ。
さて今回、月一の舞い「高校生神楽の共演」の報告では、三月の月一でも登場した特派員Wさんが手がけてくださいました。また、特別公演・神楽新世代の報告では特派員Wさんとわたくし、特派員Nがコラボしております。皆さまどこを誰が書いたかわかるでしょうか~?(笑)そして、お知らせですが、月一の舞いは約三か月ほどお休み致します。また11月にお会いしましょうね★
東山神楽団「紅葉狩」
今や、広島の神楽を代表する演目に成長した「紅葉狩」。三人の姫の織りなす優美な舞、姫から鬼へと正体をあらわす場面など見どころも盛りだくさんですね。紅葉を表すような赤い扇子を持ち、ゆっくりと舞う姿。また、やわらかい動作を繰り返す姫たちの様子はまさに雅で華やかでした。しかし、鬼へと姿を変えるとその動きは一変します。先程までの優雅さは一瞬にして消え、荒々しさと俊敏な動きで姫は鬼であるということを私たちに思い出させてくれます。そして維茂と鬼女の対決では、勢いのある舞は勿論、奏楽のみなさんもヒートアップしていきます。会場も一演目目にして、熱気に包まれていきました。
大都神楽団「土 蜘(つちぐも)」
広島で生まれた「葛城山(土蜘蛛)」を大都神楽団さんの世界観で演じていただきました。広島では、土蜘蛛は姫の姿で頼光に近づきますが、出てきたのは怪しげなお坊さんでした。いつもなら、毒薬で頼光を亡き者にしようとしますが、今回は祈祷によって呪い殺そうとしました。しかし、そこは百戦錬磨の頼光ですので、太刀を抜き、間一髪で追い払います。そして、頼光は四天王に土蜘蛛征伐を命じ、四天王は松明の薄明かりの中、岩屋へとたどり着きます。四天王が岩屋へ火を放つと、大きな蜘蛛の巣から土蜘蛛が正体を現します。正体を現した土蜘蛛、その強さは半端ではなく、妖術で四天王たちを追い詰めます。しかし、渡辺綱の持つ「蜘蛛切丸」により、形勢は逆転し、妖術にかかった仲間を救い出します。しかし、ここで妖術を解いても眠りっぱなしの方がお一人・・まさかりを担いだあの方です(次の演目に出てくるお母さんが泣いてしまいますよ)。先輩たちにみっちり絞られた金時さん。最後は、全員で土蜘蛛にトドメをさしました。するとどうでしょう。四方八方から土蜘蛛の断末魔のごとく蜘蛛が飛び交い、ついには上から舞台を覆うごとく蜘蛛が降ってきました。とても興味深い内容でしたね。
大塚神楽団「山姥」
先ほどの演目でも大活躍だった坂田金時と源頼光主従の出会いの物語。金時がまだ怪童丸と呼ばれ、母の八重桐とともに山賊を生業としていたころ、山賊征伐の勅命を受けた頼光主従が怪童丸たちの住処に一夜の宿を求めにやってきます。八重桐と怪童丸は、寝静まる頃頼光たちに一気に襲いかかります。しかし、勝負は頼光たちに軍配は上がります。そして、山姥といえばここが一番のみどころ。怪童丸が坂田金時と名を変え頼光の下臣となり、母と別れるシーン。怪童丸が名残惜しそうにすがるも母がそれをゆっくりと手で妨げます。母自身も名残惜しいはずなのに、その様子に次第にこちらの目頭が熱くなります。別れ際の最後、「されど怪童丸、必ず人様に山姥が一人子、怪童丸と笑われ給うな。」という言葉に母の全ての気持ちが入っていたように思います。観客席からは涙を拭う方もいらっしゃいました。
宮乃木神楽団「女狐退治」
こちらも、初演の演目。大会前から話題の多い演目で楽しみにされていた方も多かったことと思います。まず、最初は悲しい場面からスタートしていきます。狐が猟師に追われ、子狐は矢を受けて死んでしまいます。そして親狐は、人間に恨み辛みを抱き、何百年と生き長らえるうちに人間に姿を変えることを覚え、人々を悩ませていくのです。 時は移り、岩見重太郎・重蔵兄弟は、父の仇を討つため諸国を遍歴していました。そして、大願成就の祈願のため防府天満宮に立ち寄ったところ、父の仇を討つためには、3つの難を乗り越える必要があると御告げを受け、第一の難である「女狐退治」へと向かいます。山に分け入った重太郎たちは、およしという女に出会い、行動をともにします。そう、この女の正体こそ母狐です。あたりが真っ暗になると怪しい火の玉(狐火)が現れ、女狐が正体を現します。何百年も生きた女狐ですが、動きも俊敏で重太郎たちを翻弄します。妖術を駆使して重太郎たちを追い詰め、ついには重蔵を取り喰らってしまいます。重太郎は妖術を破り女狐を退治し、重蔵を失った悲しみをしまい込みながら、次の難(狒々退治・広瀬軍蔵との対決)に向かいます。
石見神楽亀山社中「月一の舞いのための戸隠山雅鬼揃(とがくしやまみやびおにぞろい)
この演目名前を聞いて気づかれた方も多いと思いますが、広島の神楽の代表演目「紅葉狩」の物語です。亀山社中さんが広島と島根の交流に敬意をはらい、今回の月一の舞いのためだけに創作されました。 冒頭から戸隠山に住む鬼女たちが登場し、能を思わせる舞いぶりで、会場を魅力しました。続いて登場したのは、平維茂。鹿狩りを楽しむも、錦彩なす紅葉に見とれてしまい道に迷ってしまったようです。その様子を遠くから見ていた鬼女たちは、偽りの宴を開き、維茂をおびき寄せます。この罠にまんまと引っかかった維茂は、酒に酔ったところを、鬼女たちの妖術にかかり正気を失います。いつもなら、紙蜘蛛だけの演出ですが、今回は、天井から大量の紅葉が降り注いできて、まるで物語の世界へと引き込まれるようでした。そしてクライマックス、岩屋から現れたのは、先ほどの美しさとはかけ離れた恐ろしい顔をした鬼女たち。持っているものは打杖といい、能などでも使われる採物です。また、最後の大王にトドメをさす場面では、周りが真っ赤に染まるほどの紙蜘蛛が飛び交い、島根と広島の神楽の交流を通してこその演出をみることができました。今回の演目では、能「紅葉狩」を意識されて、口上・舞を構成されており、普段の神楽とは、少し違ったものに見えた方もおられるかもしれません。しかし、神楽も能・歌舞伎などの要素を取り入れながら、現在の神楽に変わってきました。今回の演目は、創作という形でしたが、神楽の原点と創造への挑戦という見方もできるのではないでしょうか。
中川戸神楽団「茨木」
今週のみどころでもあったように、「茨木」と聞けば茨木童子を思い浮かべ、あらすじは「羅生門」や「戻り橋(後編)」のお話かなぁ?と思われた方が多かったことでしょう。一般的な内容としては皆さんご存知の通り、渡辺綱によって切り落とされた茨木童子の片腕を酒呑童子が取り返すお話。しかし、今回中川戸さんが舞う「茨木」には、その腕を取り返すはずの酒呑童子は登場してきません。じゃぁ、誰が取りに行くの?とお思いでしょうが、誰が取り返しに行くかというと…そうです!! 茨木童子本人が行くのです。茨木童子は酒呑童子の右腕とされ、抜群の知恵を持ち合わせていたことから、「茨木」の演目では茨木童子自らが腕を取りに行くんですね。なので茨木童子は、渡辺綱の乳母にと姿を変え綱の館へと向かいます。この時、良く見てみると綱の乳母に化けていても左の腕がないことから、茨木童子本人という事がうかがえます。また、中川戸さんの茨木童子と言えば、第三の目をもつ特徴のある面が印象的。自分の腕を取り返した後、茨木童子へと徐々に正体を現しますが、その鬼の面にも第三の目がしっかりとありました。中川戸さんのこだわりが感じられますね。そして、なんといっても中川戸さんといえば、スーパー神楽の代名詞。今回の演目でもどんな事がおこるのか皆さんワクワクしていたと思います。このお話は最後、茨木童子は虚空飛天の妖術で大江山へと飛び去って行ってしまうのですが、なんと!!! 茨木童子、虚空飛天の妖術を使って本当に宙に浮き飛び去ってしまうのです。この時の観客のざわめきは本当にすごかったと思います。まだ直接見られてない方は、あっと驚きますよ。
さて今回、月一の舞い「高校生神楽の共演」の報告では、三月の月一でも登場した特派員Wさんが手がけてくださいました。また、特別公演・神楽新世代の報告では特派員Wさんとわたくし、特派員Nがコラボしております。皆さまどこを誰が書いたかわかるでしょうか~?(笑)そして、お知らせですが、月一の舞いは約三か月ほどお休み致します。また11月にお会いしましょうね★
2011,08,24 Wed 23:32
新着コメント
応援するよ!
| ゆっちー | EMAIL | URL | 12/09/19 20:27 | n8yG4XXE |
頑張って下さい。
応援する
応援する
| ゆっちー | EMAIL | URL | 12/09/01 09:17 | Wwlg.00I |
頑張ってくださいね
| ゆっちー | EMAIL | URL | 12/08/29 00:26 | q2PsK31Y |
応援してますよ
| ゆっちー | EMAIL | URL | 12/08/06 22:21 | pCeDQEHM |
頑張ってよ
| ゆっちー | EMAIL | URL | 12/08/06 20:34 | pCeDQEHM |
8月20日、千代田開発センターにおいて、「月一の舞いー高校生神楽の共演」が開催されました。神楽の未来を担い、未来のリーダーとなる、高校生たちに熱い声援が送られました。
各高校のOB・OGの方々も多く駆けつけられたようで、後輩たちの舞を見守ってくださっていたようです。
それでは、報告です。
神迎え 広島新庄学園 郷土芸能同好会
四人の舞子が、東西南北を払い清め、神様をお招きするこの演目。決して見せ場の多い演目ではありませんが、神楽の基本動作が多く盛り込まれていて、各神楽団・社中でも大切にされてますよね。舞の動作もさることながら、御幣の振り方、鈴のならしかた一つにでも注目してみてもらうと、舞の奥深さを感じ取ってもらえると思います。
岩戸 島根県立浜田商業高校 郷土芸能部
今週の見どころでも紹介しましたが、数ある神楽の演目のなかでも、格式のあるものとして多くの皆さんに認知されていると思います。それもそのはず、天の岩戸に籠もられた天照大神をお招きするために、天細女命の舞ったものが、「芸能」の始まり、神楽の始まりだったのです。最後の天照大神をお迎えして、奏楽・舞子が神楽唄に合わせての場面では、おもわず唄いだしてしまいそうな方もいたのではないでしょうか。
滝夜叉姫 広島県立千代田高校 神楽愛好会
五月姫が、貴船の社に願をかけ、父・平将門の最期を語る場面から、物語は始まります。まだこのあたりでは、あどけなさの残る五月姫ですが、名を滝夜叉姫に変え、物語が進むにつれて、妖しさと力強さを見せていきます。ついには、鬼と化して、大宅中将光圀たちに最後の戦いに挑みますが、最期は光圀の霊術に敗れ、悪しき力を失い昇天していきます。
舞手さんの場面一つ一つでの心情の変化にも注目してもらえると、神楽の世界観に浸っていけると思います。
塵 倫 広島県立吉田高校 神楽部
あいさつのときに部員の方が話されていましたが、今回の塵倫は原田神楽団さんの塵倫に近づけるように頑張りたいと抱負を述べられていました。その中でも、先輩たちから受け継いだことや、自分たちの気持ちを織り交ぜながら、吉田高校の「塵倫」の世界を見せてくれたことと思います。神二人の揃った舞、鬼三匹の相手を震え上がらすような舞ぶり、舞手の舞を活かす四人の奏楽を見ていて、日頃の練習の成果を十分に出されていたように感じました。
天慶記・将門 広島新庄学園 郷土芸能同好会
郷土芸能同好会のオリジナル演目であり、毎年部員のみなさんがそれぞれの思いを持って舞われています。ストーリーは、あの「滝夜叉姫」以前の物語。滝夜叉姫の父・平将門が新皇となるも、一族の平貞盛に討たれるというもので、これが皆さんご存知の「滝夜叉姫」へとつながっていきます。神楽は、将門・将平兄弟が叔父である国香を討ち取る場面から始まります。そして、父・国香を討たれた貞盛は、藤原秀郷の助勢をうけ、将門追討に向かいます。貞盛にしてみれば、従兄弟であり、父の仇でもある将門を討つということは、さぞかし辛かったことでしょうね。最後の場面で、弟を討たれた将門が鬼人と化して、貞盛たちに襲いかかったところでは、迫力ある立ち合いを見せてくれました。
八岐大蛇 広島県立加計高校芸北分校
まずは、大蛇が七人目の姫を取り喰らう場面から始まりますが、大蛇が姫に気づかれずに近づくところでは、他の神楽団さんの大蛇ではないような妖しさを感じられた方もおられることでしょう。老夫婦と姫の別れの場面でも、奏楽との息の合った舞で情緒たっぷりに演じられ、会場では涙を流された方もいたのではないでしょうか。最後の須佐之男命との対決でも、迫力ある大蛇たちが所狭しと演じてくれました。「俺たちをなめんなよ」とばかりに威嚇したり、蛇胴で須佐之男命を囲んだりと、最後まで須佐之男命を苦しめました。しかし、須佐之男命さんも負けてはいられません。8対1の劣勢の中、見事な太刀捌きで大蛇たちを退治し、大団円を迎えました。
各高校の演目終了後のインタビューでは、部員のみなさんにに今後の抱負を語ってもらい、「大学で地元を離れても、帰ってきて神楽をやりたい」 「地元で就職して、神楽をやる」という頼もしい声や、中には「休団している神楽団を復活させる」と意気込んでいる方もおられ、自分たちの「神楽」に対する熱い気持ちを語ってくださいました。
以前は「神楽しかない町」と考えられていたこの地域ですが、時を重ね若者たちが神楽に打ち込んだ結果、「神楽がある町」という地域の誇りに変わってきました。今回、出演していただいた部員のみなさんが将来、神楽を引っ張ってくれることはもちろん、それぞれの地域を引っ張るリーダーとなってくれると期待させてくれた1日となりました。さて次回は、「月一の舞い 特別公演 神楽新時代」の報告です。お楽しみに。
各高校のOB・OGの方々も多く駆けつけられたようで、後輩たちの舞を見守ってくださっていたようです。
それでは、報告です。
神迎え 広島新庄学園 郷土芸能同好会
四人の舞子が、東西南北を払い清め、神様をお招きするこの演目。決して見せ場の多い演目ではありませんが、神楽の基本動作が多く盛り込まれていて、各神楽団・社中でも大切にされてますよね。舞の動作もさることながら、御幣の振り方、鈴のならしかた一つにでも注目してみてもらうと、舞の奥深さを感じ取ってもらえると思います。
岩戸 島根県立浜田商業高校 郷土芸能部
今週の見どころでも紹介しましたが、数ある神楽の演目のなかでも、格式のあるものとして多くの皆さんに認知されていると思います。それもそのはず、天の岩戸に籠もられた天照大神をお招きするために、天細女命の舞ったものが、「芸能」の始まり、神楽の始まりだったのです。最後の天照大神をお迎えして、奏楽・舞子が神楽唄に合わせての場面では、おもわず唄いだしてしまいそうな方もいたのではないでしょうか。
滝夜叉姫 広島県立千代田高校 神楽愛好会
五月姫が、貴船の社に願をかけ、父・平将門の最期を語る場面から、物語は始まります。まだこのあたりでは、あどけなさの残る五月姫ですが、名を滝夜叉姫に変え、物語が進むにつれて、妖しさと力強さを見せていきます。ついには、鬼と化して、大宅中将光圀たちに最後の戦いに挑みますが、最期は光圀の霊術に敗れ、悪しき力を失い昇天していきます。
舞手さんの場面一つ一つでの心情の変化にも注目してもらえると、神楽の世界観に浸っていけると思います。
塵 倫 広島県立吉田高校 神楽部
あいさつのときに部員の方が話されていましたが、今回の塵倫は原田神楽団さんの塵倫に近づけるように頑張りたいと抱負を述べられていました。その中でも、先輩たちから受け継いだことや、自分たちの気持ちを織り交ぜながら、吉田高校の「塵倫」の世界を見せてくれたことと思います。神二人の揃った舞、鬼三匹の相手を震え上がらすような舞ぶり、舞手の舞を活かす四人の奏楽を見ていて、日頃の練習の成果を十分に出されていたように感じました。
天慶記・将門 広島新庄学園 郷土芸能同好会
郷土芸能同好会のオリジナル演目であり、毎年部員のみなさんがそれぞれの思いを持って舞われています。ストーリーは、あの「滝夜叉姫」以前の物語。滝夜叉姫の父・平将門が新皇となるも、一族の平貞盛に討たれるというもので、これが皆さんご存知の「滝夜叉姫」へとつながっていきます。神楽は、将門・将平兄弟が叔父である国香を討ち取る場面から始まります。そして、父・国香を討たれた貞盛は、藤原秀郷の助勢をうけ、将門追討に向かいます。貞盛にしてみれば、従兄弟であり、父の仇でもある将門を討つということは、さぞかし辛かったことでしょうね。最後の場面で、弟を討たれた将門が鬼人と化して、貞盛たちに襲いかかったところでは、迫力ある立ち合いを見せてくれました。
八岐大蛇 広島県立加計高校芸北分校
まずは、大蛇が七人目の姫を取り喰らう場面から始まりますが、大蛇が姫に気づかれずに近づくところでは、他の神楽団さんの大蛇ではないような妖しさを感じられた方もおられることでしょう。老夫婦と姫の別れの場面でも、奏楽との息の合った舞で情緒たっぷりに演じられ、会場では涙を流された方もいたのではないでしょうか。最後の須佐之男命との対決でも、迫力ある大蛇たちが所狭しと演じてくれました。「俺たちをなめんなよ」とばかりに威嚇したり、蛇胴で須佐之男命を囲んだりと、最後まで須佐之男命を苦しめました。しかし、須佐之男命さんも負けてはいられません。8対1の劣勢の中、見事な太刀捌きで大蛇たちを退治し、大団円を迎えました。
各高校の演目終了後のインタビューでは、部員のみなさんにに今後の抱負を語ってもらい、「大学で地元を離れても、帰ってきて神楽をやりたい」 「地元で就職して、神楽をやる」という頼もしい声や、中には「休団している神楽団を復活させる」と意気込んでいる方もおられ、自分たちの「神楽」に対する熱い気持ちを語ってくださいました。
以前は「神楽しかない町」と考えられていたこの地域ですが、時を重ね若者たちが神楽に打ち込んだ結果、「神楽がある町」という地域の誇りに変わってきました。今回、出演していただいた部員のみなさんが将来、神楽を引っ張ってくれることはもちろん、それぞれの地域を引っ張るリーダーとなってくれると期待させてくれた1日となりました。さて次回は、「月一の舞い 特別公演 神楽新時代」の報告です。お楽しみに。
2011,08,24 Wed 21:35
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▼8月20日(土) 第二回―高校生神楽の共演
「神迎え」・「天慶記・将門」-広島県新庄学園ー郷土芸能同好会―(北広島町)
新庄学園―郷土芸能同好会は、40年以上の歴史を持ち、卒業生の中には、各地の神楽団で中核として活躍されている方々もおり、それを励みとして日々活動されています。
今回、演じられるのは、「神迎え」・「天慶記・将門」。「神迎え」は、神楽のはじめに演じられる儀式舞のひとつであり、四人の舞子と奏楽の一体感を感じとってもらえることでしょう。「天慶記・将門」は、平安中期の戦乱・天慶の乱の物語。迫力ある立ち合いに注目してください。
「岩戸」-島根県立浜田商業高校―郷土芸能部―(島根県浜田市)
浜田商業高校―郷土芸能部は、平成17年に、石見地方の伝統芸能「石見神楽」への理解と深化、継承のため創部され、近隣での活動はもとより、遠く韓国での公演、さらには自主公演などといったように活発な活動をされています。
「岩戸」という演目は、神楽の中でも、非常に大切にされている演目の一つで、個々の役の個性が最大に活かされる演目なので、じっくりご覧ください。
「滝夜叉姫」-広島県立千代田高校―神楽愛好会―(北広島町)
千代田高校―神楽愛好会は、地元の神楽団との結び付きも強く、各種イベントにも積極的に出演されています。今回、演じられる「滝夜叉姫」は、新庄高校演じる「天慶記・将門」の続編となり、父・将門討たれた娘が仇を討たんがために、鬼と化してしまいますが最期には陰陽師に成敗されてしまいます。姫が鬼へと変化する場面も見どころの一つですが、その過程の心情の変化にもご注目ください。
「塵 倫」-広島県立吉田高校―神楽部―(安芸高田市)
吉田高校―神楽部は、神楽団に所属している部員も多く、各々の神楽団の持ち味を活かし合ったチームワーク溢れる舞で、日々練習に励んでおられます。
「塵 倫」は、神楽の中でも代表的な鬼舞の一つですね。三匹の鬼の息の合った舞、矢を討たれた鬼の苦しむ姿に注目してください。
「八岐大蛇」-広島県立加計高校芸北分校―神楽部―(北広島町)
芸北分校―神楽部は、他のクラブ活動との両立の中、近隣のイベント・神楽大会への出演のほか、ミュージシャンとのコラボレーションにも参加されています。「八岐大蛇」は、神楽の中で最も知られている演目で、芸北分校では八頭の大蛇が登場し、その迫力ある舞は、各地でも好評を得ています。須佐之男命との迫力ある戦いはもちろん、老夫婦と姫の別れの情緒ある場面にも注目してください。
▼8月21日(日) 特別公演 神楽新時代
今回の見どころは、なんといっても初演演目が4つもあることではないでしょうか。この公演に合わせて、各神楽団・社中がそれぞれの思いをこめて、作り上げられてこられたとおもいます。今回のテーマ(神楽新時代)にもあるように、今回の公演を通して神楽の進化・未来を感じとってもらえることでしょう。
「紅葉狩」 東山神楽団(北広島町)今年も、暑い日が続いていますが、実は暦の上(8月8日)ではもう秋なんですよ。まだまだ暑い日が続きそうですが、一足先に秋の気分を味わってもらえることでしょう。姫から鬼への変化、合戦の激しさと目が離せない舞を堪能して下さい。
初演 「土 蜘」 大都神楽団(島根県江津市)
広島を代表する演目「葛城山(土蜘蛛)」を、「古典演目は土臭く、創作演目は新鮮で奇想天外な展開を」がモットーの大都さんが、石見神楽の持ち味を活かしながら、能や謡曲に描かれる「土蜘」の物語を織り交ぜながら独自の解釈を持って、舞い上げます。大都さんの創作演目には、「相馬城」「大江山酒呑童子」に代表されるように、あっと驚く演出も盛り込まれているものが多いので、今回の演目でも「奇想天外な展開」を見せてくれることでしょう。
「山 姥」 大塚神楽団(北広島町)
多くの演目で活躍する源頼光四天王・坂田金時誕生の物語として、「葛城山」「紅葉狩」と同時期に生まれたこの演目。変化などの見せ場はないものの、怪童丸と頼光主従の合戦、山姥との別れの場面といったように他の演目に負けない見せ場もありますので、注目してください。
初演 「岩見重太郎(女狐退治)」 宮乃木神楽団(広島市安佐北区)宮乃木さんにとって、「新羅三郎」(09年初演)以来の新演目。「岩見重太郎」といえば、皆さんもよくご存じ、狒狒退治・仇打ちありと、二度おいしい演目として浸透しているとおもいますが、今回の物語では、諸国を遍歴していた重太郎が、人々をたぶらかす女狐を退治に向かいます。しかし、この悪事を働く女狐には、数百年に起こった悲しい出来事が秘められていたのです。演目発表時から、話題の多い演目のようで、当日を楽しみにされている方も多いようですね。
初演 「月一の舞いのための戸隠山雅鬼揃」 石見神楽亀山社中(島根県浜田市)
少し前の時代、「石見神楽」が広島の大会に呼ばれた時、たいてい「大蛇をやってくれ」と言われて、多くのお客さんが席を立って休憩に行ってしまう。派手な広島の新舞を見慣れたお客さんからしたら、地味なものに見えていたころを経験されながらも、「もっと石見神楽を発展させたい」という思いを持ち、数々の困難を潜り抜け、昨年は「芸石神楽競演大会」で優勝という栄誉にも輝かれた亀山社中さん。広島と島根の神楽交流に敬意をはらい、広島を代表する演目「紅葉狩」を通して、これまでの感謝とこれからの広島・島根双方の神楽の発展を願いながら舞われます。題名の通り、今回の月一の舞限定の演目なので、見逃されないようにくれぐれも、ご注意くださいね!
初演 「茨 木」 中川戸神楽団(北広島町)スーパー神楽の先駆けとして知られる中川戸さんの新演目です。「茨木」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? そう、あの酒呑童子の手下「茨木童子」が神楽ファンの皆さんは真っ先に出てくることでしょう。一般的には、「羅生門」や「戻り橋(後編)」という演目で演じられていますが、ここは、数々のスーパー神楽を世に送り出している中川戸さん、演目の名前にもこだわりを見せています。今回も各所に見どころのある演出がでてくるようなので、当日を楽しみにしてお待ちくださいね。
▼詳細はこちらから
http://www.npo-kagura.jp/contents/2011-kouiki-kagura/2011-08-20-21-saiten/index.html
「神迎え」・「天慶記・将門」-広島県新庄学園ー郷土芸能同好会―(北広島町)
新庄学園―郷土芸能同好会は、40年以上の歴史を持ち、卒業生の中には、各地の神楽団で中核として活躍されている方々もおり、それを励みとして日々活動されています。
今回、演じられるのは、「神迎え」・「天慶記・将門」。「神迎え」は、神楽のはじめに演じられる儀式舞のひとつであり、四人の舞子と奏楽の一体感を感じとってもらえることでしょう。「天慶記・将門」は、平安中期の戦乱・天慶の乱の物語。迫力ある立ち合いに注目してください。
「岩戸」-島根県立浜田商業高校―郷土芸能部―(島根県浜田市)
浜田商業高校―郷土芸能部は、平成17年に、石見地方の伝統芸能「石見神楽」への理解と深化、継承のため創部され、近隣での活動はもとより、遠く韓国での公演、さらには自主公演などといったように活発な活動をされています。
「岩戸」という演目は、神楽の中でも、非常に大切にされている演目の一つで、個々の役の個性が最大に活かされる演目なので、じっくりご覧ください。
「滝夜叉姫」-広島県立千代田高校―神楽愛好会―(北広島町)
千代田高校―神楽愛好会は、地元の神楽団との結び付きも強く、各種イベントにも積極的に出演されています。今回、演じられる「滝夜叉姫」は、新庄高校演じる「天慶記・将門」の続編となり、父・将門討たれた娘が仇を討たんがために、鬼と化してしまいますが最期には陰陽師に成敗されてしまいます。姫が鬼へと変化する場面も見どころの一つですが、その過程の心情の変化にもご注目ください。
「塵 倫」-広島県立吉田高校―神楽部―(安芸高田市)
吉田高校―神楽部は、神楽団に所属している部員も多く、各々の神楽団の持ち味を活かし合ったチームワーク溢れる舞で、日々練習に励んでおられます。
「塵 倫」は、神楽の中でも代表的な鬼舞の一つですね。三匹の鬼の息の合った舞、矢を討たれた鬼の苦しむ姿に注目してください。
「八岐大蛇」-広島県立加計高校芸北分校―神楽部―(北広島町)
芸北分校―神楽部は、他のクラブ活動との両立の中、近隣のイベント・神楽大会への出演のほか、ミュージシャンとのコラボレーションにも参加されています。「八岐大蛇」は、神楽の中で最も知られている演目で、芸北分校では八頭の大蛇が登場し、その迫力ある舞は、各地でも好評を得ています。須佐之男命との迫力ある戦いはもちろん、老夫婦と姫の別れの情緒ある場面にも注目してください。
▼8月21日(日) 特別公演 神楽新時代
今回の見どころは、なんといっても初演演目が4つもあることではないでしょうか。この公演に合わせて、各神楽団・社中がそれぞれの思いをこめて、作り上げられてこられたとおもいます。今回のテーマ(神楽新時代)にもあるように、今回の公演を通して神楽の進化・未来を感じとってもらえることでしょう。
「紅葉狩」 東山神楽団(北広島町)今年も、暑い日が続いていますが、実は暦の上(8月8日)ではもう秋なんですよ。まだまだ暑い日が続きそうですが、一足先に秋の気分を味わってもらえることでしょう。姫から鬼への変化、合戦の激しさと目が離せない舞を堪能して下さい。
初演 「土 蜘」 大都神楽団(島根県江津市)
広島を代表する演目「葛城山(土蜘蛛)」を、「古典演目は土臭く、創作演目は新鮮で奇想天外な展開を」がモットーの大都さんが、石見神楽の持ち味を活かしながら、能や謡曲に描かれる「土蜘」の物語を織り交ぜながら独自の解釈を持って、舞い上げます。大都さんの創作演目には、「相馬城」「大江山酒呑童子」に代表されるように、あっと驚く演出も盛り込まれているものが多いので、今回の演目でも「奇想天外な展開」を見せてくれることでしょう。
「山 姥」 大塚神楽団(北広島町)
多くの演目で活躍する源頼光四天王・坂田金時誕生の物語として、「葛城山」「紅葉狩」と同時期に生まれたこの演目。変化などの見せ場はないものの、怪童丸と頼光主従の合戦、山姥との別れの場面といったように他の演目に負けない見せ場もありますので、注目してください。
初演 「岩見重太郎(女狐退治)」 宮乃木神楽団(広島市安佐北区)宮乃木さんにとって、「新羅三郎」(09年初演)以来の新演目。「岩見重太郎」といえば、皆さんもよくご存じ、狒狒退治・仇打ちありと、二度おいしい演目として浸透しているとおもいますが、今回の物語では、諸国を遍歴していた重太郎が、人々をたぶらかす女狐を退治に向かいます。しかし、この悪事を働く女狐には、数百年に起こった悲しい出来事が秘められていたのです。演目発表時から、話題の多い演目のようで、当日を楽しみにされている方も多いようですね。
初演 「月一の舞いのための戸隠山雅鬼揃」 石見神楽亀山社中(島根県浜田市)
少し前の時代、「石見神楽」が広島の大会に呼ばれた時、たいてい「大蛇をやってくれ」と言われて、多くのお客さんが席を立って休憩に行ってしまう。派手な広島の新舞を見慣れたお客さんからしたら、地味なものに見えていたころを経験されながらも、「もっと石見神楽を発展させたい」という思いを持ち、数々の困難を潜り抜け、昨年は「芸石神楽競演大会」で優勝という栄誉にも輝かれた亀山社中さん。広島と島根の神楽交流に敬意をはらい、広島を代表する演目「紅葉狩」を通して、これまでの感謝とこれからの広島・島根双方の神楽の発展を願いながら舞われます。題名の通り、今回の月一の舞限定の演目なので、見逃されないようにくれぐれも、ご注意くださいね!
初演 「茨 木」 中川戸神楽団(北広島町)スーパー神楽の先駆けとして知られる中川戸さんの新演目です。「茨木」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? そう、あの酒呑童子の手下「茨木童子」が神楽ファンの皆さんは真っ先に出てくることでしょう。一般的には、「羅生門」や「戻り橋(後編)」という演目で演じられていますが、ここは、数々のスーパー神楽を世に送り出している中川戸さん、演目の名前にもこだわりを見せています。今回も各所に見どころのある演出がでてくるようなので、当日を楽しみにしてお待ちくださいね。
▼詳細はこちらから
http://www.npo-kagura.jp/contents/2011-kouiki-kagura/2011-08-20-21-saiten/index.html
2011,08,19 Fri 08:10
新着コメント
こんにちは、無です。いよいよ明日から2日にわたって開催される月一の舞い。とても楽しみにしています。
ぼくは2日目の神楽新時代に行きます。
管理人さんの報告も楽しみにしていますよ。
ぼくは2日目の神楽新時代に行きます。
管理人さんの報告も楽しみにしていますよ。
| 無 | EMAIL | URL | 11/08/19 11:26 | /8cGCTqY |
先週の日曜日、千代田開発センターで月一の舞いが行われました。今回のテーマは、「-神楽歴史物語 義経伝説-」です。源義経は悲劇の英雄として多くの伝説が残っていますが、今回はその義経と弁慶の出会いやその生涯までを4団体4演目でご紹介していきます。それでは、報告です。
都治神楽社中「弁慶」
みなさんもご存じかもしれませんが、あの有名な武蔵坊弁慶と義経が出会う物語。京で千本の太刀を奪おうと悲願を立てた弁慶。しかし、999本まで集めますが、あと一本ということころで義経と出会います。神楽のはじめ、弁慶が登場。腰をずっしりと落し、ゆっくりと舞う弁慶の姿は迫力満点。また、長刀を持ってぐるぐると回転させる姿は豪快でした。力強さと重みのある舞いで、無敵の弁慶という風格が伝わってくるようでした。そして、いよいよ弁慶と義経が出会う場面。千本目となる太刀、義経の太刀を奪おうと弁慶は義経に襲い掛かります。しかし、どんなに長刀を振り回しても、ひょいひょいっと義経は簡単によけていきます。写真でも分かると思いますが、義経の見事なジャンプ。激しい立ち合いにもかかわらず、何度も高いジャンプを繰り返す身軽な義経の様子におもわず見とれてしまいました。
上本地神楽団「壇の浦」
長門国(ながとのくに)赤間関壇の浦、現在の山口県下関。平家が遂に滅亡に至ってしまう最後の戦いです。見どころは、母である二位尼 平時子とその息子、新中納言 平知盛(たいらのとももり)の別れの場面。遂に義経軍に敗れ、平氏一門の終焉のとき。「見苦しいものを取り清め給え…」と言う知盛の言葉にすべてを悟った二位尼。そして、安徳天皇を抱き、「波の下にも都あり」と海に身を投じていきます。無念と悲しむ知盛の姿にそっと手を差し伸べようとするもグッと堪える二位尼の姿はなんとも切なく、舞手さんの迫真の演技に心打たれてしまいました。そして場面はクライマックス、知盛と義経の合戦。どんどん激しくなる戦いは迫力満点。しかし、激しい戦いを繰り広げるも、知盛は碇を担ぎ自ら海へ身を投げます。「見るべき程のものは、全て見つ。今はただ自害せん」平家の生き様を全て見届けた、今はただ自害しよう…。この言葉には悲しさの中にもどこか満足感があるようにも感じられました。
琴庄神楽団「義経平氏追討」
先ほどの演目、「壇の浦」の後編にあたるお話。壇の浦の戦いにより滅んだ平家一門。しかし、海へと身を投じた平知盛は、その恨みを晴らすべく、怨霊となり再び義経たちに襲い掛かろうとします。先ほど見た壇の浦の前半部分のお話により、この演目の話の流れには、スムーズに入りやすかったのではないでしょうか。知盛が怨霊へと変わっていく場面。義経軍に敗れ、次々に身を海に投じてった平氏軍。母、二位の尼も目の前で身を投げ、知盛はさぞかし無念で悔しかったことでしょう。神楽では、その無念さと海の底で息のできない苦しさとが知盛の表情に表れているようで、こちらまで苦しくなってしまいそうでした。また、義経たちと怨霊と化した知盛との戦いの場面では、切られても苦しみながらも、何度も襲い掛かる知盛の怨霊に不気味さが感じられました。
川西神楽団「衣川の館(ころもがわのたて)」
源義経、最後の物語。この物語は、川西神楽団さんのあらすじを参考にさせていただくと、壇の浦の戦いで、平家滅亡に活躍した義経はその後、兄 源頼朝によって鎌倉を追われてしまいます。義経は奥州藤原三代目秀衡(ひでひら)を頼り、平泉の地は衣川の館に安住を求めるも、藤原秀衡死後、源頼朝の命令により衣川の館にて秀衡の息子、泰衡(やすひら)に襲われます。泰衡の意をくんだ義経は自害の道を選び、弁慶は義経の自害の際、全身に矢を受けながらも、義経の前に仁王立ちし、最後を守ったそうです。やはり見どころは、立ち合いの場面でしょうか。義経と弁慶、泰衡と弟、衡国の激しい合戦が繰り広げられます。そして弁慶が義経を守ろうとする場面では、義経を守るため、泰衡らに弁慶一人で挑んでいきます。歴史の中の弁慶は敵からの攻撃を受けるも立ったまま亡くなったとされていますが、神楽でもその様子が取り込まれていました。
さて、来月は2011広島・島根交流神楽フェスティバル‐神楽の祭典‐が行われます。8月20、21日と二日間連続で行われますが、チケットが異なりますので注意してくださいね。それでは、来月もお楽しみに★
都治神楽社中「弁慶」
みなさんもご存じかもしれませんが、あの有名な武蔵坊弁慶と義経が出会う物語。京で千本の太刀を奪おうと悲願を立てた弁慶。しかし、999本まで集めますが、あと一本ということころで義経と出会います。神楽のはじめ、弁慶が登場。腰をずっしりと落し、ゆっくりと舞う弁慶の姿は迫力満点。また、長刀を持ってぐるぐると回転させる姿は豪快でした。力強さと重みのある舞いで、無敵の弁慶という風格が伝わってくるようでした。そして、いよいよ弁慶と義経が出会う場面。千本目となる太刀、義経の太刀を奪おうと弁慶は義経に襲い掛かります。しかし、どんなに長刀を振り回しても、ひょいひょいっと義経は簡単によけていきます。写真でも分かると思いますが、義経の見事なジャンプ。激しい立ち合いにもかかわらず、何度も高いジャンプを繰り返す身軽な義経の様子におもわず見とれてしまいました。
上本地神楽団「壇の浦」
長門国(ながとのくに)赤間関壇の浦、現在の山口県下関。平家が遂に滅亡に至ってしまう最後の戦いです。見どころは、母である二位尼 平時子とその息子、新中納言 平知盛(たいらのとももり)の別れの場面。遂に義経軍に敗れ、平氏一門の終焉のとき。「見苦しいものを取り清め給え…」と言う知盛の言葉にすべてを悟った二位尼。そして、安徳天皇を抱き、「波の下にも都あり」と海に身を投じていきます。無念と悲しむ知盛の姿にそっと手を差し伸べようとするもグッと堪える二位尼の姿はなんとも切なく、舞手さんの迫真の演技に心打たれてしまいました。そして場面はクライマックス、知盛と義経の合戦。どんどん激しくなる戦いは迫力満点。しかし、激しい戦いを繰り広げるも、知盛は碇を担ぎ自ら海へ身を投げます。「見るべき程のものは、全て見つ。今はただ自害せん」平家の生き様を全て見届けた、今はただ自害しよう…。この言葉には悲しさの中にもどこか満足感があるようにも感じられました。
琴庄神楽団「義経平氏追討」
先ほどの演目、「壇の浦」の後編にあたるお話。壇の浦の戦いにより滅んだ平家一門。しかし、海へと身を投じた平知盛は、その恨みを晴らすべく、怨霊となり再び義経たちに襲い掛かろうとします。先ほど見た壇の浦の前半部分のお話により、この演目の話の流れには、スムーズに入りやすかったのではないでしょうか。知盛が怨霊へと変わっていく場面。義経軍に敗れ、次々に身を海に投じてった平氏軍。母、二位の尼も目の前で身を投げ、知盛はさぞかし無念で悔しかったことでしょう。神楽では、その無念さと海の底で息のできない苦しさとが知盛の表情に表れているようで、こちらまで苦しくなってしまいそうでした。また、義経たちと怨霊と化した知盛との戦いの場面では、切られても苦しみながらも、何度も襲い掛かる知盛の怨霊に不気味さが感じられました。
川西神楽団「衣川の館(ころもがわのたて)」
源義経、最後の物語。この物語は、川西神楽団さんのあらすじを参考にさせていただくと、壇の浦の戦いで、平家滅亡に活躍した義経はその後、兄 源頼朝によって鎌倉を追われてしまいます。義経は奥州藤原三代目秀衡(ひでひら)を頼り、平泉の地は衣川の館に安住を求めるも、藤原秀衡死後、源頼朝の命令により衣川の館にて秀衡の息子、泰衡(やすひら)に襲われます。泰衡の意をくんだ義経は自害の道を選び、弁慶は義経の自害の際、全身に矢を受けながらも、義経の前に仁王立ちし、最後を守ったそうです。やはり見どころは、立ち合いの場面でしょうか。義経と弁慶、泰衡と弟、衡国の激しい合戦が繰り広げられます。そして弁慶が義経を守ろうとする場面では、義経を守るため、泰衡らに弁慶一人で挑んでいきます。歴史の中の弁慶は敵からの攻撃を受けるも立ったまま亡くなったとされていますが、神楽でもその様子が取り込まれていました。
さて、来月は2011広島・島根交流神楽フェスティバル‐神楽の祭典‐が行われます。8月20、21日と二日間連続で行われますが、チケットが異なりますので注意してくださいね。それでは、来月もお楽しみに★
2011,07,26 Tue 23:00
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無さんコメントありがとうございます(^O^)
神楽の祭典では二日とも特派員報告する予\定です♪
楽しみに待っててくださいね★
神楽の祭典では二日とも特派員報告する予\定です♪
楽しみに待っててくださいね★
| 特派員N | EMAIL | URL | 11/07/27 21:18 | FxqC11LA |
今度の月一の舞い神楽の祭典では管理人さんは1日目と2日目どちらに行かれますか。ぼくは両方の報告をしてもらいたです。
| 無 | EMAIL | URL | 11/07/27 10:41 | TbAzEWsM |
大塚神楽団「道成寺」は、現在の和歌山県が舞台となる演目です。恐ろしくも悲しい安珍と清姫の物語は、日高川で一つの大きな見せ場を迎えます。清姫から逃げようとする安珍は、船頭さんに船渡しをお願いするも断られてしまいます。ここのやり取りが、チャリ役の船頭さんによって面白おかしい場面になっており、ファンのみなさんも楽しみにされていたと思います。そして今回の船頭さんは急遽の代役だったそうで、安珍さんもいつも通りとはいかず、普段以上に苦戦されていたようです。終いには自分の来ていた衣装を、渡し賃として取られてしまいました。とっても珍しいものを見せていただきましたね(笑)。そしてその安珍に恋焦がれるあまり、大蛇となってしまった清姫。口から火を吹き、釣鐘ごと安珍を焼き殺してしまう場面はまさに壮絶。その後、我に返った清姫に残された絶望感。胸を締め付けられるような場面ですが、最後に二人が一緒に立つ一幕があり、そこに救いを見られた方も多かったことと思います。
続いて原田神楽団「土蜘蛛」。大和国、今の奈良県にある葛城山が舞台です。当時、大和国を一望できるこの葛城山には、都の勢力に従わない人が多く住みつき、「土蜘蛛」などと呼ばれ忌み嫌われていたそうです。そして神楽では、この土蜘蛛が都の守り、源頼光に襲い掛かります。長年たまった恨みを晴らそうとする、その土蜘蛛の感情が、舞手さんの迫真の演技によってこちらに伝わってきます。一瞬にして鬼の面へと変わり、蜘蛛の妖術で頼光に迫る辺り、なんだか土蜘蛛の方を応援してしまうような気持ちになります。しかし頼光の武勇によって返り討ちに遭い、土蜘蛛は住処の葛城山へと逃げ帰ります。それを追って、四天王の二人が岩屋へ切り込み、遂に最後の戦いが始まりました。もはやこれまでと死に物狂いで暴れる土蜘蛛も、蜘蛛切丸の威徳の前に敗れてしまいます。威勢の良いお囃子もあって、とても盛り上がる上演でした。
最後は中川戸神楽団「紅葉狩」。先ほどの「土蜘蛛」と同じように、鬼になるしかなかった、あるいは鬼にされてしまった人々の思いが込められた物語です。伝説の地を訪ねると、今まで見えてなかったものが見えてくると思います。この上演も見所はたくさんありますが、個人的には中盤の酒宴の場面に注目しました。美女に化けて平維茂らを酒に酔わそうとする紅葉たち。しかしそれを見抜いて酒を飲まなかった維茂。このだまし合いの展開が、見ている側をさらに物語にのめり込ませてくれるように感じます。その中で、舞いながら酒を注いだり、あるいは紅葉の舞を披露したりと、いろんな見所がたくさんあり、本当に豪華な感じがしますね。そして正体を見破られた鬼女たちが鬼に変わる場面、ここで舞と楽が一緒になって一つの頂点を迎えます。この演目ならではの多彩な仕掛けも、みなさんじっくりご覧になったことでしょう。
以上、7演目のご紹介でした。ホール神楽としての魅力はもちろん、さらに神楽について興味を深めることができたイベントだったように感じました。これから夏本番で、暑い日が続きそうですが、どうぞみなさん体調にはじゅうぶん注意されて、神楽を楽しんでください!
2011,07,21 Thu 21:30
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