では、戸隠山の鬼女伝説についてみてみよう。神楽の「紅葉狩」は謡曲「紅葉狩」が出典となっているが、「紅葉狩」伝説についてはいろいろなパターンが伝承されている。その中でも一般的なものを紹介したい。
今から千年以上昔のこと。奥州・会津に笹丸(ささまる)と菊世(きくよ)という夫婦がいた。しかしなかなか子供が生まれず、ついには第六天魔王(だいろくてんまおう)に祈願をする。そして937年、二人の間に娘が生まれ、「呉葉(くれは)」と名付けられた。呉葉はとても美しい外見を持ち、琴の名手でもあったという。しかし、第六天魔王の申し子である呉葉は、邪悪な心と妖術を持っていた。
この第六天魔王というのは、仏教において最大の悪とされる鬼である。旧舞の「八幡」に出てくる鬼がこの第六天魔王だが、なぜ夫婦がこのような魔王に祈願したかは不明だが、まずその出生こそが悲劇の始まりだったのだ。
成長した呉葉は、近くの豪族の息子に嫁ぐことになった。しかし彼女は「一人両身」という妖術を使って分身を作り出した。その分身を嫁がせ、自分は両親とともに婚礼支度金を持って都に逃げたという。いわば結婚詐欺か。
都に上った呉葉は「紅葉(くれは)」と改名し、四条通に化粧品や髪飾りを扱う店を開いた。やがてその美貌が源経基(みなもとのつねもと)の目に留まり、寵愛を受けるようになる。同じ頃、経基の正妻が奇妙な熱病にかかり、祈祷が行われた。すると紅葉が妖術を使って正妻を呪い殺そうとしていたことが判明する。普通ならば処刑されるところだが、紅葉は経基の子を宿していたため罪一等減ぜられ、信濃国戸隠山に追放という処分が下った。そして956年9月、紅葉は両親とともに戸隠にある荒倉山の岩屋に護送されたのである。
いったんは心を入れ替え、付近の住民の面倒を見たりしていた紅葉だったが、都に帰りたいという気持ちが募り、次第に鬼の本性が現れるようになる。山に住む無法者を集め、旅人を襲って金品を奪うなど悪行を重ね、ついには遠方の里にまで出没するようになった。それが都まで伝わり、969年、第63代冷泉帝は平維茂に戸隠山の鬼女征伐を命じた。
ここまでを前半とし、残りはまた次回。お気づきのファンもいらっしゃるだろうが、宮乃木神楽団と中川戸神楽団が、この伝説に忠実な「紅葉狩」を舞われている。上記した内容は最初の場面のセリフに登場するので、ご覧の際はよぉく聞いてみる事をオススメする。後半は、紅葉VS維茂の物語、そして紅葉狩伝説の舞台裏に迫ってみたい。
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今から千年以上昔のこと。奥州・会津に笹丸(ささまる)と菊世(きくよ)という夫婦がいた。しかしなかなか子供が生まれず、ついには第六天魔王(だいろくてんまおう)に祈願をする。そして937年、二人の間に娘が生まれ、「呉葉(くれは)」と名付けられた。呉葉はとても美しい外見を持ち、琴の名手でもあったという。しかし、第六天魔王の申し子である呉葉は、邪悪な心と妖術を持っていた。
この第六天魔王というのは、仏教において最大の悪とされる鬼である。旧舞の「八幡」に出てくる鬼がこの第六天魔王だが、なぜ夫婦がこのような魔王に祈願したかは不明だが、まずその出生こそが悲劇の始まりだったのだ。
成長した呉葉は、近くの豪族の息子に嫁ぐことになった。しかし彼女は「一人両身」という妖術を使って分身を作り出した。その分身を嫁がせ、自分は両親とともに婚礼支度金を持って都に逃げたという。いわば結婚詐欺か。
都に上った呉葉は「紅葉(くれは)」と改名し、四条通に化粧品や髪飾りを扱う店を開いた。やがてその美貌が源経基(みなもとのつねもと)の目に留まり、寵愛を受けるようになる。同じ頃、経基の正妻が奇妙な熱病にかかり、祈祷が行われた。すると紅葉が妖術を使って正妻を呪い殺そうとしていたことが判明する。普通ならば処刑されるところだが、紅葉は経基の子を宿していたため罪一等減ぜられ、信濃国戸隠山に追放という処分が下った。そして956年9月、紅葉は両親とともに戸隠にある荒倉山の岩屋に護送されたのである。
いったんは心を入れ替え、付近の住民の面倒を見たりしていた紅葉だったが、都に帰りたいという気持ちが募り、次第に鬼の本性が現れるようになる。山に住む無法者を集め、旅人を襲って金品を奪うなど悪行を重ね、ついには遠方の里にまで出没するようになった。それが都まで伝わり、969年、第63代冷泉帝は平維茂に戸隠山の鬼女征伐を命じた。
ここまでを前半とし、残りはまた次回。お気づきのファンもいらっしゃるだろうが、宮乃木神楽団と中川戸神楽団が、この伝説に忠実な「紅葉狩」を舞われている。上記した内容は最初の場面のセリフに登場するので、ご覧の際はよぉく聞いてみる事をオススメする。後半は、紅葉VS維茂の物語、そして紅葉狩伝説の舞台裏に迫ってみたい。
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2007,01,07 Sun 00:00
コメント
こんにちは。
私はFrancesco Baldessariと申します。
妖怪について本を書きました。
可能であればこのサイトに載ってる写真 1枚を使わせていただきたいのですが、可能でしょうか?
私はFrancesco Baldessariと申します。
妖怪について本を書きました。
可能であればこのサイトに載ってる写真 1枚を使わせていただきたいのですが、可能でしょうか?
| Francesco Baldessari | EMAIL | URL | 18/09/12 07:57 | kTuA19zI |
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