3月11日に千代田開発センターで「月一の舞」が行われました。今回のテーマは「古代日本の英雄」で、それぞれ日本を代表する英雄が活躍する演目が上演されました。それでは報告です。
まずは石見神楽亀山社中「日本武尊」。当初は「熊襲」の予定でしたが、急遽こちらの演目に変更になったのだそうです。どちらも日本武尊が主役の演目で、「熊襲」は西国征伐の物語、この「日本武尊」は東国征伐の物語です。日本武尊はまさに「日本の英雄」というイメージがあり、今回のテーマにピッタリだと思いますが、さてこの演目ではどんな一面を見せてくれたのでしょうか。石見の「日本武尊」は、兄ぎし弟ぎしと賊首の三人が繰り広げるやり取りが面白い特徴です。浜田弁で物語を説明したり、現代の言葉でしゃべって笑わせてくれたりと、みなさんたっぷり楽しまれたことでしょう。自分たちを成敗しに来る日本武尊を「ありゃぁ人がえぇけぇだまされるで。」と計略を企んでみたり。兄ぎしらは許してもらおうと、やってきた日本武尊に「ごめんちゃい。」と一言。これにはさすがの英雄も吹き出して笑っておられました。
続いて東山神楽団「伊服岐山」。これも日本武尊の物語です。先ほどの上演では、兄ぎし弟ぎしのおかげで、ちょっと親しみやすい一面を見せてくれた日本武尊ですが、やはり「悲劇の英雄」となってしまう運命なんですね。冒頭の場面では、后である弟橘姫を失った悲しみをにじませながらも、一歩ずつ静かに踏みしめるような舞ぶりが印象的でした。そして尊は、伊服岐山へ鬼神征伐に向かいます。後半は雰囲気をガラっと変えて、これぞ英雄!という勇ましい戦いを見せてくださいました。奏楽のみなさんの盛り上がりが、さらに舞を熱くしていたように思います。そしてクライマックス、ついに尊に最期の時が訪れます。「大和は国のまほろば たたなづく青垣山こもれる 大和し麗し」と詠んで倒れた尊。西へ東へ活躍するも、志半ばで倒れた日本武尊は、やはり悲劇の英雄という言葉が似合ってしまうのかもしれません。
さて後半2演目の英雄は須佐之男命。三谷神楽団「鍾馗」は、じっくりと山県舞を味わえる上演でした。まずは鍾馗の舞。非常にゆ~ったりとした楽のリズムで、どっしりとした舞を披露。重厚でありながら優雅な印象で、「鍾馗」独特の面白さを感じました。そして疫神の登場。他のどの鬼よりも低い姿勢での舞、これも「鍾馗」ならではの見どころですね。幕から出てくる疫神を、茅の輪をかざして待ち構える鍾馗大神。見ていて思わず力が入る瞬間です。また、それぞれがお互いを探したり、気づいたりという動きも見どころの一つで、そこは舞手さんの個性がすごく出る部分だと思います。いろんな表現があると思いますが、その動きで見る人を引き付ける、まさに舞手さんの腕の見せ所といった感じでしょうか。後半は激しい立ち合いの末、ついに鍾馗の茅の輪が疫神を捕らえます。最後の最後まで、疫神から目を離さず、容赦ナシ!という強さを見せ付けてくれた英雄でした。
最後の上演は山王神楽団「八岐大蛇」。大蛇の大きさ、迫力は神楽ファンのみなさんもよくよくご存知だと思いますが、そんな大蛇を八頭も相手にして、全く動じない須佐之男命。無敵の強さを誇る須佐之男命は、まさに日本最強の英雄といったところ。そしてもう一人、山王さんの「八岐大蛇」で注目は手名椎おばあさん。時折、おばあさんとは思えないアクロバットな動きを披露したりして、今回も客席の笑いを誘っておられました。お馴染みの”手ぬぐいしぼり”のネタも健在でしたよ!後半は須佐之男命の強さをしっかり見ることができました。バッタバッタと大蛇を切り倒し、八頭いた大蛇もどんどん少なくなっていきます。後ろからドシン!と付かれても、動じることなく振り向いて威嚇。慌てる様子が全くないので、より強さを感じますよね。英雄の魅力がたっぷりの上演でした。
上演終了後は、八岐大蛇との記念撮影会が行われ、たくさんの方が参加しておられました。これで今年度の月一の舞は終了です。来年度もいろいろなテーマで開催されますので、どうぞみなさんご来場ください!
まずは石見神楽亀山社中「日本武尊」。当初は「熊襲」の予定でしたが、急遽こちらの演目に変更になったのだそうです。どちらも日本武尊が主役の演目で、「熊襲」は西国征伐の物語、この「日本武尊」は東国征伐の物語です。日本武尊はまさに「日本の英雄」というイメージがあり、今回のテーマにピッタリだと思いますが、さてこの演目ではどんな一面を見せてくれたのでしょうか。石見の「日本武尊」は、兄ぎし弟ぎしと賊首の三人が繰り広げるやり取りが面白い特徴です。浜田弁で物語を説明したり、現代の言葉でしゃべって笑わせてくれたりと、みなさんたっぷり楽しまれたことでしょう。自分たちを成敗しに来る日本武尊を「ありゃぁ人がえぇけぇだまされるで。」と計略を企んでみたり。兄ぎしらは許してもらおうと、やってきた日本武尊に「ごめんちゃい。」と一言。これにはさすがの英雄も吹き出して笑っておられました。
続いて東山神楽団「伊服岐山」。これも日本武尊の物語です。先ほどの上演では、兄ぎし弟ぎしのおかげで、ちょっと親しみやすい一面を見せてくれた日本武尊ですが、やはり「悲劇の英雄」となってしまう運命なんですね。冒頭の場面では、后である弟橘姫を失った悲しみをにじませながらも、一歩ずつ静かに踏みしめるような舞ぶりが印象的でした。そして尊は、伊服岐山へ鬼神征伐に向かいます。後半は雰囲気をガラっと変えて、これぞ英雄!という勇ましい戦いを見せてくださいました。奏楽のみなさんの盛り上がりが、さらに舞を熱くしていたように思います。そしてクライマックス、ついに尊に最期の時が訪れます。「大和は国のまほろば たたなづく青垣山こもれる 大和し麗し」と詠んで倒れた尊。西へ東へ活躍するも、志半ばで倒れた日本武尊は、やはり悲劇の英雄という言葉が似合ってしまうのかもしれません。
さて後半2演目の英雄は須佐之男命。三谷神楽団「鍾馗」は、じっくりと山県舞を味わえる上演でした。まずは鍾馗の舞。非常にゆ~ったりとした楽のリズムで、どっしりとした舞を披露。重厚でありながら優雅な印象で、「鍾馗」独特の面白さを感じました。そして疫神の登場。他のどの鬼よりも低い姿勢での舞、これも「鍾馗」ならではの見どころですね。幕から出てくる疫神を、茅の輪をかざして待ち構える鍾馗大神。見ていて思わず力が入る瞬間です。また、それぞれがお互いを探したり、気づいたりという動きも見どころの一つで、そこは舞手さんの個性がすごく出る部分だと思います。いろんな表現があると思いますが、その動きで見る人を引き付ける、まさに舞手さんの腕の見せ所といった感じでしょうか。後半は激しい立ち合いの末、ついに鍾馗の茅の輪が疫神を捕らえます。最後の最後まで、疫神から目を離さず、容赦ナシ!という強さを見せ付けてくれた英雄でした。
最後の上演は山王神楽団「八岐大蛇」。大蛇の大きさ、迫力は神楽ファンのみなさんもよくよくご存知だと思いますが、そんな大蛇を八頭も相手にして、全く動じない須佐之男命。無敵の強さを誇る須佐之男命は、まさに日本最強の英雄といったところ。そしてもう一人、山王さんの「八岐大蛇」で注目は手名椎おばあさん。時折、おばあさんとは思えないアクロバットな動きを披露したりして、今回も客席の笑いを誘っておられました。お馴染みの”手ぬぐいしぼり”のネタも健在でしたよ!後半は須佐之男命の強さをしっかり見ることができました。バッタバッタと大蛇を切り倒し、八頭いた大蛇もどんどん少なくなっていきます。後ろからドシン!と付かれても、動じることなく振り向いて威嚇。慌てる様子が全くないので、より強さを感じますよね。英雄の魅力がたっぷりの上演でした。
上演終了後は、八岐大蛇との記念撮影会が行われ、たくさんの方が参加しておられました。これで今年度の月一の舞は終了です。来年度もいろいろなテーマで開催されますので、どうぞみなさんご来場ください!
2012,03,12 Mon 23:30
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応援してる
| ゆっちー | EMAIL | URL | 12/08/04 21:48 | XgXFwics |
がんば
| ゆっちー | EMAIL | URL | 12/08/04 21:27 | XgXFwics |
最近特派員報告と、月一の動画が更新されてないんですが、何でですが?
| kingu | EMAIL | URL | 12/07/06 19:00 | CkQKUXY6 |
4月の月一の特派員報告はないのでしょうか?
| m | EMAIL | URL | 12/05/04 05:39 | uG29w3tA |
普段は三つの演目からなる物語を一つにまとめた原田神楽団「大江山三段返し」。なかなか見る機会のない演目だけに、楽しみにされていた方も多かったと思います。まず最初は源頼光が登場し、四天王を怪物退治に向かわせたことを説明します。すると次の場面では、戻り橋あたりで激闘を繰り広げる四天王たちと茨木童子が登場。この場面転換の面白さも新舞の特徴の一つですね。そして切り取られた左腕を取り返すために、酒呑童子が乳母に化けて都へと向かいます。「大江山」だけでは見ることのできない、酒呑童子の変化自在な一面も楽しめます。そして今回、いつも以上に気合が入っていたように見えたのが酒呑童子さん。酒に酔ったときのセリフも実に感情豊かで、客席から笑い声や拍手が上がっていました。
続いて宮乃木神楽団「女狐退治」。聞きなれない演目ですが、みなさん同じ宮乃木さんの「岩見重太郎」はご覧になったことがありますか?この演目はその前編といった感じで、父の敵を討つために諸国を巡る、岩見重太郎が出遭う三つの大難のうちの一つです。注目はやはり、狐の変化でしたね。面や衣装、髪の色まで変わったりして、客席を沸かせておられました。中でも画像の一枚目、青い照明とドライアイスの効果が抜群だった場面。まさに「妖気が漂う」という表現がピッタリ。いかにも何かが起こる!という雰囲気いっぱいでした。そして後半、その狐と重太郎・重蔵の兄弟が対決します。難なく退治したかに見えましたが、実はその後、意外な展開が待っていました。退治する側もされる側も、一筋縄ではいかない、複雑な気持ちを感じる演目でした。
上河内神楽団「新編伊吹山」。今年のRCC早春神楽共演大会は、割と派手な演目が多かった印象があるのですが、その中で落ち着いてじっくりと見ることができたうちの一つがこの上演でした。舞手さんからはもちろん、奏楽さんからも余裕が感じられ、それが見る側に安定感を与えてくださったように思います。印象的なのは中盤の鬼の舞。豪華で重たそうな衣装を着た、三人の鬼たちの舞は、かなり新鮮な印象を受けます。紅葉狩の鬼女たちとは違った、重量感ある舞。流れはゆったりですが、ほんのわずかな動きで鬼の怖さや凄みを感じることができました。そして最後の戦いは、それまでのゆったりとした雰囲気とはガラっと変わって、次から次へと目まぐるしく舞が披露されていきます。このメリハリが、より神楽を面白く感じさせているのでしょうね。
大塚神楽団「滝夜叉姫」。新舞の中でも人気のある演目で、こちらもあまり派手な演出はない、オーソドックスな印象でした。先ほどの上河内さんと同じく、全編を通して余裕が感じられました。その中で、五月姫が滝夜叉姫になったりという変化があるので、より緩急のメリハリが多かったように思います。一つ一つの舞の中でも、伸びるところはしっかり伸びる。腰を落とすところはしっかり落とす。速く動くところ、しっかり止まるところ。その動きに太鼓のドン!という音が合わさったり、滑らかな笛が乗ってきたりと、奏楽が加わることでより一層、神楽が面白く感じられますね。新しい神楽の中にも、演出ではなく、伝統を改めて感じることができたように思います。
最後は中川戸神楽団「紅葉狩」。何年か前にもこの「紅葉狩」を上演されましたが、その時からまた少し変わっていたように思います。完成を決めることなく、常に新しいことに挑戦されている中川戸さんの姿勢が感じられました。「紅葉狩」という、誰もが知っている物語ですが、その構成もプラスアルファが加わって、新しいものに仕上がっています。悲しい運命を辿り、鬼にされて討たれてしまう呉葉(くれは)を中心としたこの上演。その呉葉の変化だけでも十分な見所で溢れています。最初は姫の姿、そして小さな鬼の面、それが角が生えたり少しずつ変化していき、最後には大きな鬼となります。もちろん見た目だけではなく、舞も段々と変化していますが、そういう所にこそ、神楽の面白さを感じたいですね。
以上、全10演目のご紹介でした。そしてもう一つのお楽しみ、大会パンフレット購入による抽選会。昨年は見事にお米を当てたので、今年も!と意気込んで挑戦してきました。たまたま、私の前の方が、大きな商品をゲットされたので、これは自分にはハズレの流れか…という思いが一瞬よぎりましたが、ガラガラと抽選してみると…!なんとまたお米が当たりました!今年もいいことがありそうですね(笑)。来年もこの大会を楽しみにしたいと思います。
2012,03,04 Sun 00:49
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2月26日に広島市の文化交流会館でRCC早春神楽共演大会が行われました。芸北、石見地方に伝わる神楽。その伝統的な面と創造的な面の両方がしっかりと味わえるイベントで、今年もたくさんの方が楽しみにされていたことと思います。それではご紹介したいと思います。
第一部「原点を見つめる」
筏津神楽団「天の岩戸」で幕を開けた今年の早春神楽。第一部は「原点を見つめる」というテーマですが、一口に原点と言っても、いろいろな捉え方があると思います。例えば「神楽」という言葉、「神様が楽しむ」と書きますね。岩戸の前に集まったたくさんの神様が、楽しそうに舞ったり囃したりしている様子は、まさに「神楽」という言葉がピッタリ。宇津女命が両手に扇子を持って、身体をいっぱいに伸ばしたり、のびのびと柔らかな舞を見せてくれました。それとは対照的に、手力男命は腰を落としてキレのある動きで力強い舞を披露。さらに兒屋根命と太玉命が鈴を鳴らして囃したて、どんどん神楽が盛り上がっていきます。照明などの舞台装置の効果ももちろんありますが、そんな神様が楽しむ様子に、神楽の原点を見ることができたように思います。
第二部「伝統を受け継ぐ」
川北神楽団「鍾馗」。今回のRCC早春は、第二部がいつもより少なく、第三部の「新たなる神楽への挑戦」がボリュームアップされていました。そんな中での昔ながらの伝統的な舞は、逆に会場の皆さんにとって新鮮に思えたかもしれません。特に舞台装置に頼ることもなく、舞と楽、じっくりと魅せてくださいました。ゆったりとした流れに力強さを感じる、鍾馗大神の独特の舞。神の中でも最も魅せる舞の一つと言えるでしょう。そしてこちらも独特な大疫神の舞。低く低く、地を這うような舞い方が表現しているのは、いったい何でしょうか。そこを感じ取って、自分の想像を膨らませながら見るのも、神楽の醍醐味の一つ。その神楽団を代表する舞手が舞われるという演目だけに、本当に見応えたっぷりの上演でした。
石見神楽亀山社中「八岐大蛇」。広島の神楽ファンのみなさんにも、石見神楽の大蛇の面白さはもうすっかりお馴染みとなっていることと思います。今回の上演も広いステージをいっぱいに使った、迫力あるものでした。長い蛇胴を自在に操り、まるで生きているように見せるその技は、まさに伝統芸能。表からしか見ることのできない会場の皆さんにとっては、その蛇胴の後ろで、舞手さんがどのような動きをされているか、おそらく想像もつかないと思います。そんなことを気付かせるスキも与えないくらい、次から次へと見事な舞を見せてくださいました。そして印象的だったのが、須佐之男命が大蛇たちに切りかかる場面。普通はぐっすり寝ている大蛇たちですが、須佐之男の気配に目を覚まし、「こいつは何じゃ?」というようにその動向をじっと見つめているんですよね。そして敵と知るや一斉に火を噴いて襲い掛かってくるという演出、新鮮で面白く感じました。
第三部「新たなる神楽への挑戦」
琴庄神楽団「厳島」は、昨年に続いての上演でした。最初の上演以来、常に注目を浴び続けているので、おそらく神楽団のみなさんも常にプレッシャーを感じながらの上演ではないでしょうか。しかしそれに臆することなく、さらに良いものにされているなと感じるのは、きっと私だけではないと思います。平清盛が主役ではありますが、その妻、時子も重要な役どころです。一番最初に登場し、語り手として見る者を神楽の世界に引き込んでくださいます。舞はなく、語るだけの場面ですが、感情をしっかりと含んだその言葉は、前半の見どころ!と言ってもいいほど。そして後半にはもう一人の重要な人物、陰陽師の安倍泰親が登場します。清盛に襲い掛かる怨霊たちを追い払うという大きな見せ場がありますが、なんと言ってもこの演目の主役は清盛であって、それを盛り上げようと、周りの舞手さんが上手く演じているようにも感じられました。
大都神楽団「土蜘」。今回のプログラムの中でも、ひと際インパクトの大きかった上演だったのではないでしょうか。葛城山の土蜘蛛の精魂が、胡蝶となって源頼光に近づき…というお馴染みのものとは違った内容。一枚目の写真のように、お坊さんの姿で頼光を呪い殺そうとするんですね。序盤のこのお坊さんの舞がなんとも独特。奇妙というか異色というか、とにかく「おぉ!?」と思わずにはいられない、実にクセのある舞。言葉では表現しきれないのが残念です(笑)。一気に引き込まれましたね~。斬新で見所だらけの上演でしたが、圧巻はクライマックス。土蜘蛛の妖術によって、舞台を遮断するほどの巨大な落としグモの出現。これには客席から一斉に「うわぁ!」という大歓声が。合戦はとにかくクモのオンパレードで、舞手さんは真っ白。土蜘蛛の面もそうでしたが、とにかく印象に残る上演でした。
以上、前半の5演目のご紹介でした。「その2」では残りの5演目をご紹介します。
第一部「原点を見つめる」
筏津神楽団「天の岩戸」で幕を開けた今年の早春神楽。第一部は「原点を見つめる」というテーマですが、一口に原点と言っても、いろいろな捉え方があると思います。例えば「神楽」という言葉、「神様が楽しむ」と書きますね。岩戸の前に集まったたくさんの神様が、楽しそうに舞ったり囃したりしている様子は、まさに「神楽」という言葉がピッタリ。宇津女命が両手に扇子を持って、身体をいっぱいに伸ばしたり、のびのびと柔らかな舞を見せてくれました。それとは対照的に、手力男命は腰を落としてキレのある動きで力強い舞を披露。さらに兒屋根命と太玉命が鈴を鳴らして囃したて、どんどん神楽が盛り上がっていきます。照明などの舞台装置の効果ももちろんありますが、そんな神様が楽しむ様子に、神楽の原点を見ることができたように思います。
第二部「伝統を受け継ぐ」
川北神楽団「鍾馗」。今回のRCC早春は、第二部がいつもより少なく、第三部の「新たなる神楽への挑戦」がボリュームアップされていました。そんな中での昔ながらの伝統的な舞は、逆に会場の皆さんにとって新鮮に思えたかもしれません。特に舞台装置に頼ることもなく、舞と楽、じっくりと魅せてくださいました。ゆったりとした流れに力強さを感じる、鍾馗大神の独特の舞。神の中でも最も魅せる舞の一つと言えるでしょう。そしてこちらも独特な大疫神の舞。低く低く、地を這うような舞い方が表現しているのは、いったい何でしょうか。そこを感じ取って、自分の想像を膨らませながら見るのも、神楽の醍醐味の一つ。その神楽団を代表する舞手が舞われるという演目だけに、本当に見応えたっぷりの上演でした。
石見神楽亀山社中「八岐大蛇」。広島の神楽ファンのみなさんにも、石見神楽の大蛇の面白さはもうすっかりお馴染みとなっていることと思います。今回の上演も広いステージをいっぱいに使った、迫力あるものでした。長い蛇胴を自在に操り、まるで生きているように見せるその技は、まさに伝統芸能。表からしか見ることのできない会場の皆さんにとっては、その蛇胴の後ろで、舞手さんがどのような動きをされているか、おそらく想像もつかないと思います。そんなことを気付かせるスキも与えないくらい、次から次へと見事な舞を見せてくださいました。そして印象的だったのが、須佐之男命が大蛇たちに切りかかる場面。普通はぐっすり寝ている大蛇たちですが、須佐之男の気配に目を覚まし、「こいつは何じゃ?」というようにその動向をじっと見つめているんですよね。そして敵と知るや一斉に火を噴いて襲い掛かってくるという演出、新鮮で面白く感じました。
第三部「新たなる神楽への挑戦」
琴庄神楽団「厳島」は、昨年に続いての上演でした。最初の上演以来、常に注目を浴び続けているので、おそらく神楽団のみなさんも常にプレッシャーを感じながらの上演ではないでしょうか。しかしそれに臆することなく、さらに良いものにされているなと感じるのは、きっと私だけではないと思います。平清盛が主役ではありますが、その妻、時子も重要な役どころです。一番最初に登場し、語り手として見る者を神楽の世界に引き込んでくださいます。舞はなく、語るだけの場面ですが、感情をしっかりと含んだその言葉は、前半の見どころ!と言ってもいいほど。そして後半にはもう一人の重要な人物、陰陽師の安倍泰親が登場します。清盛に襲い掛かる怨霊たちを追い払うという大きな見せ場がありますが、なんと言ってもこの演目の主役は清盛であって、それを盛り上げようと、周りの舞手さんが上手く演じているようにも感じられました。
大都神楽団「土蜘」。今回のプログラムの中でも、ひと際インパクトの大きかった上演だったのではないでしょうか。葛城山の土蜘蛛の精魂が、胡蝶となって源頼光に近づき…というお馴染みのものとは違った内容。一枚目の写真のように、お坊さんの姿で頼光を呪い殺そうとするんですね。序盤のこのお坊さんの舞がなんとも独特。奇妙というか異色というか、とにかく「おぉ!?」と思わずにはいられない、実にクセのある舞。言葉では表現しきれないのが残念です(笑)。一気に引き込まれましたね~。斬新で見所だらけの上演でしたが、圧巻はクライマックス。土蜘蛛の妖術によって、舞台を遮断するほどの巨大な落としグモの出現。これには客席から一斉に「うわぁ!」という大歓声が。合戦はとにかくクモのオンパレードで、舞手さんは真っ白。土蜘蛛の面もそうでしたが、とにかく印象に残る上演でした。
以上、前半の5演目のご紹介でした。「その2」では残りの5演目をご紹介します。
2012,03,01 Thu 00:56
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