2月26日に広島市の文化交流会館でRCC早春神楽共演大会が行われました。芸北、石見地方に伝わる神楽。その伝統的な面と創造的な面の両方がしっかりと味わえるイベントで、今年もたくさんの方が楽しみにされていたことと思います。それではご紹介したいと思います。
第一部「原点を見つめる」
筏津神楽団「天の岩戸」で幕を開けた今年の早春神楽。第一部は「原点を見つめる」というテーマですが、一口に原点と言っても、いろいろな捉え方があると思います。例えば「神楽」という言葉、「神様が楽しむ」と書きますね。岩戸の前に集まったたくさんの神様が、楽しそうに舞ったり囃したりしている様子は、まさに「神楽」という言葉がピッタリ。宇津女命が両手に扇子を持って、身体をいっぱいに伸ばしたり、のびのびと柔らかな舞を見せてくれました。それとは対照的に、手力男命は腰を落としてキレのある動きで力強い舞を披露。さらに兒屋根命と太玉命が鈴を鳴らして囃したて、どんどん神楽が盛り上がっていきます。照明などの舞台装置の効果ももちろんありますが、そんな神様が楽しむ様子に、神楽の原点を見ることができたように思います。
第二部「伝統を受け継ぐ」
川北神楽団「鍾馗」。今回のRCC早春は、第二部がいつもより少なく、第三部の「新たなる神楽への挑戦」がボリュームアップされていました。そんな中での昔ながらの伝統的な舞は、逆に会場の皆さんにとって新鮮に思えたかもしれません。特に舞台装置に頼ることもなく、舞と楽、じっくりと魅せてくださいました。ゆったりとした流れに力強さを感じる、鍾馗大神の独特の舞。神の中でも最も魅せる舞の一つと言えるでしょう。そしてこちらも独特な大疫神の舞。低く低く、地を這うような舞い方が表現しているのは、いったい何でしょうか。そこを感じ取って、自分の想像を膨らませながら見るのも、神楽の醍醐味の一つ。その神楽団を代表する舞手が舞われるという演目だけに、本当に見応えたっぷりの上演でした。
石見神楽亀山社中「八岐大蛇」。広島の神楽ファンのみなさんにも、石見神楽の大蛇の面白さはもうすっかりお馴染みとなっていることと思います。今回の上演も広いステージをいっぱいに使った、迫力あるものでした。長い蛇胴を自在に操り、まるで生きているように見せるその技は、まさに伝統芸能。表からしか見ることのできない会場の皆さんにとっては、その蛇胴の後ろで、舞手さんがどのような動きをされているか、おそらく想像もつかないと思います。そんなことを気付かせるスキも与えないくらい、次から次へと見事な舞を見せてくださいました。そして印象的だったのが、須佐之男命が大蛇たちに切りかかる場面。普通はぐっすり寝ている大蛇たちですが、須佐之男の気配に目を覚まし、「こいつは何じゃ?」というようにその動向をじっと見つめているんですよね。そして敵と知るや一斉に火を噴いて襲い掛かってくるという演出、新鮮で面白く感じました。
第三部「新たなる神楽への挑戦」
琴庄神楽団「厳島」は、昨年に続いての上演でした。最初の上演以来、常に注目を浴び続けているので、おそらく神楽団のみなさんも常にプレッシャーを感じながらの上演ではないでしょうか。しかしそれに臆することなく、さらに良いものにされているなと感じるのは、きっと私だけではないと思います。平清盛が主役ではありますが、その妻、時子も重要な役どころです。一番最初に登場し、語り手として見る者を神楽の世界に引き込んでくださいます。舞はなく、語るだけの場面ですが、感情をしっかりと含んだその言葉は、前半の見どころ!と言ってもいいほど。そして後半にはもう一人の重要な人物、陰陽師の安倍泰親が登場します。清盛に襲い掛かる怨霊たちを追い払うという大きな見せ場がありますが、なんと言ってもこの演目の主役は清盛であって、それを盛り上げようと、周りの舞手さんが上手く演じているようにも感じられました。
大都神楽団「土蜘」。今回のプログラムの中でも、ひと際インパクトの大きかった上演だったのではないでしょうか。葛城山の土蜘蛛の精魂が、胡蝶となって源頼光に近づき…というお馴染みのものとは違った内容。一枚目の写真のように、お坊さんの姿で頼光を呪い殺そうとするんですね。序盤のこのお坊さんの舞がなんとも独特。奇妙というか異色というか、とにかく「おぉ!?」と思わずにはいられない、実にクセのある舞。言葉では表現しきれないのが残念です(笑)。一気に引き込まれましたね~。斬新で見所だらけの上演でしたが、圧巻はクライマックス。土蜘蛛の妖術によって、舞台を遮断するほどの巨大な落としグモの出現。これには客席から一斉に「うわぁ!」という大歓声が。合戦はとにかくクモのオンパレードで、舞手さんは真っ白。土蜘蛛の面もそうでしたが、とにかく印象に残る上演でした。
以上、前半の5演目のご紹介でした。「その2」では残りの5演目をご紹介します。
第一部「原点を見つめる」
筏津神楽団「天の岩戸」で幕を開けた今年の早春神楽。第一部は「原点を見つめる」というテーマですが、一口に原点と言っても、いろいろな捉え方があると思います。例えば「神楽」という言葉、「神様が楽しむ」と書きますね。岩戸の前に集まったたくさんの神様が、楽しそうに舞ったり囃したりしている様子は、まさに「神楽」という言葉がピッタリ。宇津女命が両手に扇子を持って、身体をいっぱいに伸ばしたり、のびのびと柔らかな舞を見せてくれました。それとは対照的に、手力男命は腰を落としてキレのある動きで力強い舞を披露。さらに兒屋根命と太玉命が鈴を鳴らして囃したて、どんどん神楽が盛り上がっていきます。照明などの舞台装置の効果ももちろんありますが、そんな神様が楽しむ様子に、神楽の原点を見ることができたように思います。
第二部「伝統を受け継ぐ」
川北神楽団「鍾馗」。今回のRCC早春は、第二部がいつもより少なく、第三部の「新たなる神楽への挑戦」がボリュームアップされていました。そんな中での昔ながらの伝統的な舞は、逆に会場の皆さんにとって新鮮に思えたかもしれません。特に舞台装置に頼ることもなく、舞と楽、じっくりと魅せてくださいました。ゆったりとした流れに力強さを感じる、鍾馗大神の独特の舞。神の中でも最も魅せる舞の一つと言えるでしょう。そしてこちらも独特な大疫神の舞。低く低く、地を這うような舞い方が表現しているのは、いったい何でしょうか。そこを感じ取って、自分の想像を膨らませながら見るのも、神楽の醍醐味の一つ。その神楽団を代表する舞手が舞われるという演目だけに、本当に見応えたっぷりの上演でした。
石見神楽亀山社中「八岐大蛇」。広島の神楽ファンのみなさんにも、石見神楽の大蛇の面白さはもうすっかりお馴染みとなっていることと思います。今回の上演も広いステージをいっぱいに使った、迫力あるものでした。長い蛇胴を自在に操り、まるで生きているように見せるその技は、まさに伝統芸能。表からしか見ることのできない会場の皆さんにとっては、その蛇胴の後ろで、舞手さんがどのような動きをされているか、おそらく想像もつかないと思います。そんなことを気付かせるスキも与えないくらい、次から次へと見事な舞を見せてくださいました。そして印象的だったのが、須佐之男命が大蛇たちに切りかかる場面。普通はぐっすり寝ている大蛇たちですが、須佐之男の気配に目を覚まし、「こいつは何じゃ?」というようにその動向をじっと見つめているんですよね。そして敵と知るや一斉に火を噴いて襲い掛かってくるという演出、新鮮で面白く感じました。
第三部「新たなる神楽への挑戦」
琴庄神楽団「厳島」は、昨年に続いての上演でした。最初の上演以来、常に注目を浴び続けているので、おそらく神楽団のみなさんも常にプレッシャーを感じながらの上演ではないでしょうか。しかしそれに臆することなく、さらに良いものにされているなと感じるのは、きっと私だけではないと思います。平清盛が主役ではありますが、その妻、時子も重要な役どころです。一番最初に登場し、語り手として見る者を神楽の世界に引き込んでくださいます。舞はなく、語るだけの場面ですが、感情をしっかりと含んだその言葉は、前半の見どころ!と言ってもいいほど。そして後半にはもう一人の重要な人物、陰陽師の安倍泰親が登場します。清盛に襲い掛かる怨霊たちを追い払うという大きな見せ場がありますが、なんと言ってもこの演目の主役は清盛であって、それを盛り上げようと、周りの舞手さんが上手く演じているようにも感じられました。
大都神楽団「土蜘」。今回のプログラムの中でも、ひと際インパクトの大きかった上演だったのではないでしょうか。葛城山の土蜘蛛の精魂が、胡蝶となって源頼光に近づき…というお馴染みのものとは違った内容。一枚目の写真のように、お坊さんの姿で頼光を呪い殺そうとするんですね。序盤のこのお坊さんの舞がなんとも独特。奇妙というか異色というか、とにかく「おぉ!?」と思わずにはいられない、実にクセのある舞。言葉では表現しきれないのが残念です(笑)。一気に引き込まれましたね~。斬新で見所だらけの上演でしたが、圧巻はクライマックス。土蜘蛛の妖術によって、舞台を遮断するほどの巨大な落としグモの出現。これには客席から一斉に「うわぁ!」という大歓声が。合戦はとにかくクモのオンパレードで、舞手さんは真っ白。土蜘蛛の面もそうでしたが、とにかく印象に残る上演でした。
以上、前半の5演目のご紹介でした。「その2」では残りの5演目をご紹介します。
2012,03,01 Thu 00:56
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2月12日に千代田開発センターで「月一の舞」が行われました。今回のテーマは「神楽が語るーケモノ伝ー」で、獣(けもの)が登場する神楽が4演目上演されました。それでは報告です。
まず最初の獣は狐、本地中組神楽団「那須野」です。本地中組神楽団さんは「悪狐伝」を保持されていますが、この「那須野」は三年ほど前から取り組まれている演目なんだそうです。「山伏」や「黒塚」といった演目のように、山伏と剛力が出てきて、柴の戸や里人とのやり取りがあったりするのが大きな特徴ですね。そして主役の悪狐は、変化自在でいろいろな姿を見ることができ、今回の獣の中でも最も人気があるキャラクターでしょう。さて個人的に印象に残ったのが悪狐との対決が始まろうとする場面。着物の影に隠れた狐の化身に対し、矢を放った三浦介、さらに間髪入れずに刀で斬りつけた上総介。見事なコンビネーションに一瞬「やったか!?」と思うほどでした。しかし悪狐の姿はなく、声だけが舞台に響きます。一体どこにいるのかと、辺りを伺う二人の神。見ているこちらの意表を突き、なおかつ合戦を盛り上げるのに効果的な演出だったように思います。
次は狒々が登場する演目で、梶矢神楽団「人身御供」です。ちょっと聞きなれない演目ですね。これは宮本左門之助という人物が、父の仇討ちをするために諸国を巡り、その中で三つの大難に遭うのですが、そのうちの一つがこの演目なんだそうです。この「人身御供」と、「女狐退治」「坂田峠」という演目があり、これを三部作として保持されています。「人身御供」のあらすじは、左門之助がある庄屋の娘の身代わりとして神様への生贄となり、現れた怪物を退治します。この怪物の正体が狒々というわけです。戦いの中で左門之助は刀を取られてしまいますが、狒々が真似をするという習性を逆手にとって刀を奪い返します。真似をしては何度も自分を切ってしまう狒々がちょっとかわいそうにも見えましたが、それだけ舞手の方が上手く狒々の仕草や感情を表現されていた結果だと思います。敵役なのについ感情移入してしまう、そんな魅力のある獣さんでした。
そして獣というより魔物でしょうか、土居神楽団「頼政鵺退治」。頭は猿、体は虎、手足は牛、そして尾は蛇に似ている。その異様な姿は、面や衣装などで工夫されているように感じました。最初に出てきたときは豪華な刺繍でいかにも重そうな衣装で、黒雲とともに現れるような感じを舞で表現されていたように思います。戦いの後半では、一回り大きな面と白い衣装で、頼政に負けじと激しい舞を繰り広げます。獣らしく、すばやい動きで頼政らに襲い掛かるようなところもありました。そしてちょっと話が前後してしまいますが、神の舞も印象的でした。流れるような滑らかさを見せたかと思えば、ドッシリと腰を落として力強くしたり。重厚でありながら優雅な山県舞の特徴を感じられる舞だったように思います。
最後はなんと虎が登場する珍しい演目、浜田市の石見神楽長澤社中「加藤清正」。加藤清正はあの豊臣秀吉に仕えた人物で、秀吉の朝鮮出兵の際に虎退治をしたという伝承もあります。この神楽はその部分を元に創られたそうです。そして何と言っても注目は、虎の登場シーン。唸り声を上げながらの登場は、初めてご覧になった方にとって大きな驚きだったことでしょう。さらに虎は客席に進出。歓声や悲鳴があちこちで上がりましたね。そしてついに清正が虎退治へと向かいます。長槍を操る清正ですが、襲い掛かってくる虎はなんと二匹。リアルな虎の動きと清正さんの鬼気迫る表情が、緊迫感をさらに高めてくれます。大立ち回りの末、なんとか虎退治に成功する清正さん。これで終わりと思いきや、明(朝鮮)の軍勢との合戦が待っていました。一つの演目で二味が楽しめる、なかなか贅沢な演目でもありましたね。
上演後は長澤社中のみなさんのご協力により、加藤清正と虎たちとの撮影会がありました。滅多にお目にかかれないキャラクターとあって、大人気でしたね。来月はいよいよ今年度最後の開催となります。来年度のプログラムもすでに発表されていますので、ファンのみなさん、しっかりチェックしてくださいね!
まず最初の獣は狐、本地中組神楽団「那須野」です。本地中組神楽団さんは「悪狐伝」を保持されていますが、この「那須野」は三年ほど前から取り組まれている演目なんだそうです。「山伏」や「黒塚」といった演目のように、山伏と剛力が出てきて、柴の戸や里人とのやり取りがあったりするのが大きな特徴ですね。そして主役の悪狐は、変化自在でいろいろな姿を見ることができ、今回の獣の中でも最も人気があるキャラクターでしょう。さて個人的に印象に残ったのが悪狐との対決が始まろうとする場面。着物の影に隠れた狐の化身に対し、矢を放った三浦介、さらに間髪入れずに刀で斬りつけた上総介。見事なコンビネーションに一瞬「やったか!?」と思うほどでした。しかし悪狐の姿はなく、声だけが舞台に響きます。一体どこにいるのかと、辺りを伺う二人の神。見ているこちらの意表を突き、なおかつ合戦を盛り上げるのに効果的な演出だったように思います。
次は狒々が登場する演目で、梶矢神楽団「人身御供」です。ちょっと聞きなれない演目ですね。これは宮本左門之助という人物が、父の仇討ちをするために諸国を巡り、その中で三つの大難に遭うのですが、そのうちの一つがこの演目なんだそうです。この「人身御供」と、「女狐退治」「坂田峠」という演目があり、これを三部作として保持されています。「人身御供」のあらすじは、左門之助がある庄屋の娘の身代わりとして神様への生贄となり、現れた怪物を退治します。この怪物の正体が狒々というわけです。戦いの中で左門之助は刀を取られてしまいますが、狒々が真似をするという習性を逆手にとって刀を奪い返します。真似をしては何度も自分を切ってしまう狒々がちょっとかわいそうにも見えましたが、それだけ舞手の方が上手く狒々の仕草や感情を表現されていた結果だと思います。敵役なのについ感情移入してしまう、そんな魅力のある獣さんでした。
そして獣というより魔物でしょうか、土居神楽団「頼政鵺退治」。頭は猿、体は虎、手足は牛、そして尾は蛇に似ている。その異様な姿は、面や衣装などで工夫されているように感じました。最初に出てきたときは豪華な刺繍でいかにも重そうな衣装で、黒雲とともに現れるような感じを舞で表現されていたように思います。戦いの後半では、一回り大きな面と白い衣装で、頼政に負けじと激しい舞を繰り広げます。獣らしく、すばやい動きで頼政らに襲い掛かるようなところもありました。そしてちょっと話が前後してしまいますが、神の舞も印象的でした。流れるような滑らかさを見せたかと思えば、ドッシリと腰を落として力強くしたり。重厚でありながら優雅な山県舞の特徴を感じられる舞だったように思います。
最後はなんと虎が登場する珍しい演目、浜田市の石見神楽長澤社中「加藤清正」。加藤清正はあの豊臣秀吉に仕えた人物で、秀吉の朝鮮出兵の際に虎退治をしたという伝承もあります。この神楽はその部分を元に創られたそうです。そして何と言っても注目は、虎の登場シーン。唸り声を上げながらの登場は、初めてご覧になった方にとって大きな驚きだったことでしょう。さらに虎は客席に進出。歓声や悲鳴があちこちで上がりましたね。そしてついに清正が虎退治へと向かいます。長槍を操る清正ですが、襲い掛かってくる虎はなんと二匹。リアルな虎の動きと清正さんの鬼気迫る表情が、緊迫感をさらに高めてくれます。大立ち回りの末、なんとか虎退治に成功する清正さん。これで終わりと思いきや、明(朝鮮)の軍勢との合戦が待っていました。一つの演目で二味が楽しめる、なかなか贅沢な演目でもありましたね。
上演後は長澤社中のみなさんのご協力により、加藤清正と虎たちとの撮影会がありました。滅多にお目にかかれないキャラクターとあって、大人気でしたね。来月はいよいよ今年度最後の開催となります。来年度のプログラムもすでに発表されていますので、ファンのみなさん、しっかりチェックしてくださいね!
2012,02,14 Tue 23:42
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1月22日に千代田開発センターで月一の舞が行われました。今回のテーマは「神楽が語る-日本誕生の物語-」で、石見から芸北地域に伝わる古典的な演目で構成されました。それでは報告です。
まずは原田神楽団「天の岩戸」。岩戸を開くために、五人の神様がそれぞれ個性的で特徴ある舞を繰り広げていきます。舞にも注目ですが、奏楽もこの演目の魅力の一つ。天照大神が舞う最初の場面では、まず登場する前が重要。いつも通りではなく、静かに、小刻みに響く楽に、「東山 天照る神の御代なれば…」の歌が入り、岩戸ならではの独特な雰囲気に会場が包まれます。見ている私達を神楽の世界に誘い込んでくれますね!児屋根命と太玉命の場面は、奏楽さんと一緒に歌を歌いたくなり、そして宇津女命の場面では高い笛の音が体の芯まで鳴り響くようです。手力男命の舞に合わせた力強い太鼓の音は、ドン!となる度にこちらの興奮も高まります。「岩戸は楽が大事」という言葉も聞いたことがありますが、それを実感する上演でした。
続いて浜田市の西村神楽社中「鹿島」。広島の神楽ファンのみなさんにとっては珍しい演目ではないでしょうか。大国主命(おおくにぬしのみこと)の国譲りを題材とした神楽で、大国主の第二の王子、建御名方命(たけみなかたのみこと)が、経津主命(ふつぬしのみこと)と、力比べをする所が見所となっています。最初は大きな石を取り合ったりしていますが、途中で何やら二人ともごそごそ…。何をするのかと思いきや、なんとお互いに向かって豆を投げつけ始めました!しかもかなりの勢いでビュンビュンと豆が飛んでいきます。予想外の衝撃的な光景に、笑いをこらえきれませんでした(笑)。その後は会場のみなさんにも福が訪れたようですね。西村神楽社中さんの暖かいサービスでした。
次も浜田市より石見神代神楽上府社中による「八衢」、これも広島の神楽ファンのみなさんには聞き慣れない演目ですね。天孫降臨の神話を神楽化したもので、「天の岩戸」でお馴染みの宇津女命と、天狗のような顔立ちの猿田彦命が登場します。まずは宇津女命が舞い、そして猿田彦と出会い、矛を授けます。そして後半はその矛を持って猿田彦が悪魔祓いの舞をするという内容。場面転換も少なく、地味な印象かもしれませんが、この二人の神様の舞をじっくりと見ることができました。軽やかに、そして柔らかく舞う宇津女命。そして力強く、キレのある舞の猿田彦。広島の姫舞や鬼舞とは一味違う舞を楽しめたことと思います。
最後は筏津神楽団「神武」。神倭磐余彦命(かんやまといわれひこのみこと)が大和国で長髓彦(ながすねひこ)を討ち、神武天皇と改めて日本国を建国します。初代天皇の誕生、そして日本誕生の物語です。はじめは神二人の舞です。ゆったりとした舞で一つ一つの動作がとても丁寧に感じられました。そして二人の道案内をする八咫烏(やたがらす)の登場。出番は少しですが、その出で立ちはインパクト十分。他では見られないキャラクターにみなさんも注目されたことと思います。そして敵役の長髓彦と兄磯城(えしき)の登場。神二人のコンビに負けない、息の合った舞を見せてくださいました。合戦は四人が長い刀を持って入り乱れる激しいもの。前半とはガラっと違う、奏楽さんの盛り上げっぷりにも目を奪われました。
以上、今年最初の月一の舞でした。イベント終了後は写真撮影会で、筏津神楽団さんが協力してくださいました。来月は2月12日、神楽が語る-ケモノ伝-です。お楽しみに!
まずは原田神楽団「天の岩戸」。岩戸を開くために、五人の神様がそれぞれ個性的で特徴ある舞を繰り広げていきます。舞にも注目ですが、奏楽もこの演目の魅力の一つ。天照大神が舞う最初の場面では、まず登場する前が重要。いつも通りではなく、静かに、小刻みに響く楽に、「東山 天照る神の御代なれば…」の歌が入り、岩戸ならではの独特な雰囲気に会場が包まれます。見ている私達を神楽の世界に誘い込んでくれますね!児屋根命と太玉命の場面は、奏楽さんと一緒に歌を歌いたくなり、そして宇津女命の場面では高い笛の音が体の芯まで鳴り響くようです。手力男命の舞に合わせた力強い太鼓の音は、ドン!となる度にこちらの興奮も高まります。「岩戸は楽が大事」という言葉も聞いたことがありますが、それを実感する上演でした。
続いて浜田市の西村神楽社中「鹿島」。広島の神楽ファンのみなさんにとっては珍しい演目ではないでしょうか。大国主命(おおくにぬしのみこと)の国譲りを題材とした神楽で、大国主の第二の王子、建御名方命(たけみなかたのみこと)が、経津主命(ふつぬしのみこと)と、力比べをする所が見所となっています。最初は大きな石を取り合ったりしていますが、途中で何やら二人ともごそごそ…。何をするのかと思いきや、なんとお互いに向かって豆を投げつけ始めました!しかもかなりの勢いでビュンビュンと豆が飛んでいきます。予想外の衝撃的な光景に、笑いをこらえきれませんでした(笑)。その後は会場のみなさんにも福が訪れたようですね。西村神楽社中さんの暖かいサービスでした。
次も浜田市より石見神代神楽上府社中による「八衢」、これも広島の神楽ファンのみなさんには聞き慣れない演目ですね。天孫降臨の神話を神楽化したもので、「天の岩戸」でお馴染みの宇津女命と、天狗のような顔立ちの猿田彦命が登場します。まずは宇津女命が舞い、そして猿田彦と出会い、矛を授けます。そして後半はその矛を持って猿田彦が悪魔祓いの舞をするという内容。場面転換も少なく、地味な印象かもしれませんが、この二人の神様の舞をじっくりと見ることができました。軽やかに、そして柔らかく舞う宇津女命。そして力強く、キレのある舞の猿田彦。広島の姫舞や鬼舞とは一味違う舞を楽しめたことと思います。
最後は筏津神楽団「神武」。神倭磐余彦命(かんやまといわれひこのみこと)が大和国で長髓彦(ながすねひこ)を討ち、神武天皇と改めて日本国を建国します。初代天皇の誕生、そして日本誕生の物語です。はじめは神二人の舞です。ゆったりとした舞で一つ一つの動作がとても丁寧に感じられました。そして二人の道案内をする八咫烏(やたがらす)の登場。出番は少しですが、その出で立ちはインパクト十分。他では見られないキャラクターにみなさんも注目されたことと思います。そして敵役の長髓彦と兄磯城(えしき)の登場。神二人のコンビに負けない、息の合った舞を見せてくださいました。合戦は四人が長い刀を持って入り乱れる激しいもの。前半とはガラっと違う、奏楽さんの盛り上げっぷりにも目を奪われました。
以上、今年最初の月一の舞でした。イベント終了後は写真撮影会で、筏津神楽団さんが協力してくださいました。来月は2月12日、神楽が語る-ケモノ伝-です。お楽しみに!
2012,01,22 Sun 23:12
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みなさん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。さて新年最初の特派員報告は、1月3日の「グリーンアリーナ ニューイヤーイベント」です。お客さんも多く来られ、年初めから大賑わいのイベントでした。それでは報告です。
まずは中川戸神楽団「土蜘蛛」。源頼光の命を狙った葛城山の土蜘蛛ですが、逆に返り討ちに遭い、果てには四天王らによって退治されます。新舞の中でも人気の演目ですが、今回の上演で印象的だったのが、奏楽のみなさん。後に紹介もありましたが、高校生から二十歳という顔ぶれで、とってもフレッシュな印象でした。先輩方の舞を一生懸命盛り上げようとされてるのが伝わってきましたよ。神楽の醍醐味の一つである、舞と楽との一体感がしっかりと感じられました。
次は大塚神楽団「倭建命」。悲劇の英雄、ヤマトタケルの物語…のはずですが、兄ぎしと弟ぎしによる、「新春爆笑トーク」が繰り広げられました(笑)。攻めてくるヤマトタケルに対し、なんとかしようとする兄ぎし、なんだかやる気のない弟ぎし。兄ぎしに「シャンとせぇ!」と渇を入れられ、ようやくカッコよく決めたかと思いきや、「国を捨てて逃げよう」と退場しだす弟ぎし…。保育所からの付き合いだというお二人、息の合ったやり取りで会場を沸かせてくださいました。
次は上河内神楽団「悪狐伝・中編」。悪狐以上の人気を誇る?珍斉和尚さんの登場で、これまた大いに笑わせていただきました。たくさんのネタを披露したかと思えば、なんでもないセリフで噛んだりして、奏楽のみなさんも思わず吹き出してしまったり。もちろん共演者の玉藻前さんにも、いろんなちょっかいを出したりと大活躍。先ほどの大塚さんの上演では若いお二人でしたが、こちらはベテランのチャリの技でまたも大笑いの演目でした。
休憩を挟んだ後は中川戸神楽団「瀧夜叉姫」から始まりました。いつもながら、瀧夜叉姫の見事な変化に思わず見入ってしまいますね。会場からも変化のたびに「おぉ~」というどよめきがありました。もう一つの見どころが手下達との激しい合戦。5人の舞手さんによるその合戦は、まさに息つく暇もないほど。その中で、ヒラヒラと舞う煌びやかな衣装が目に焼きついて、さらに見ている側の興奮をあおってくれます。演出だけでなく、いろいろ見応えたっぷりの上演でした。
続いて大塚神楽団「道成寺」。ここでもチャリ役の船頭さんが登場し、またまた会場を笑いの渦に巻き込んでくださいました。なんでも船頭さんの住まれている大塚地域、今日も雪の降る中を来られたそうで、「街はぬくいね!」を連発。お客さんからビールの差し入れをもらったかと思えば、「つまみはないん?」と付け加えてみたり。しかしそんな船頭さんにも想定外の出来事が!安珍さんを乗せて船渡しの最中、なんと船が二つに分かれてしまうのです(笑)。ストーリー上、絶対に起こるはずのない珍事に、会場のみなさんも大笑いでした。
最後は上河内神楽団「紅葉狩」。人気演目であり、新舞の魅力がたくさん詰め込まれていますね。鬼女たちの華やかな舞はゆったりとして、物語の始まりを強調します。物語が進むにつれ、段々と舞が変化していきます。そして奏楽も重要な要素。特に場面と場面をつなぐわずかな間などは、奏楽の持っていき方で随分と印象が変わるのではないでしょうか。最後はエネルギーを全て出し切るかのような合戦。舞も楽も、限界までスピードアップし、見事な伝統の技を見せてくださいました。
さて毎年恒例の新春神楽から、今年も始まりました。どうぞ本年も「神楽のぶろぐ」をよろしくお願いします。
まずは中川戸神楽団「土蜘蛛」。源頼光の命を狙った葛城山の土蜘蛛ですが、逆に返り討ちに遭い、果てには四天王らによって退治されます。新舞の中でも人気の演目ですが、今回の上演で印象的だったのが、奏楽のみなさん。後に紹介もありましたが、高校生から二十歳という顔ぶれで、とってもフレッシュな印象でした。先輩方の舞を一生懸命盛り上げようとされてるのが伝わってきましたよ。神楽の醍醐味の一つである、舞と楽との一体感がしっかりと感じられました。
次は大塚神楽団「倭建命」。悲劇の英雄、ヤマトタケルの物語…のはずですが、兄ぎしと弟ぎしによる、「新春爆笑トーク」が繰り広げられました(笑)。攻めてくるヤマトタケルに対し、なんとかしようとする兄ぎし、なんだかやる気のない弟ぎし。兄ぎしに「シャンとせぇ!」と渇を入れられ、ようやくカッコよく決めたかと思いきや、「国を捨てて逃げよう」と退場しだす弟ぎし…。保育所からの付き合いだというお二人、息の合ったやり取りで会場を沸かせてくださいました。
次は上河内神楽団「悪狐伝・中編」。悪狐以上の人気を誇る?珍斉和尚さんの登場で、これまた大いに笑わせていただきました。たくさんのネタを披露したかと思えば、なんでもないセリフで噛んだりして、奏楽のみなさんも思わず吹き出してしまったり。もちろん共演者の玉藻前さんにも、いろんなちょっかいを出したりと大活躍。先ほどの大塚さんの上演では若いお二人でしたが、こちらはベテランのチャリの技でまたも大笑いの演目でした。
休憩を挟んだ後は中川戸神楽団「瀧夜叉姫」から始まりました。いつもながら、瀧夜叉姫の見事な変化に思わず見入ってしまいますね。会場からも変化のたびに「おぉ~」というどよめきがありました。もう一つの見どころが手下達との激しい合戦。5人の舞手さんによるその合戦は、まさに息つく暇もないほど。その中で、ヒラヒラと舞う煌びやかな衣装が目に焼きついて、さらに見ている側の興奮をあおってくれます。演出だけでなく、いろいろ見応えたっぷりの上演でした。
続いて大塚神楽団「道成寺」。ここでもチャリ役の船頭さんが登場し、またまた会場を笑いの渦に巻き込んでくださいました。なんでも船頭さんの住まれている大塚地域、今日も雪の降る中を来られたそうで、「街はぬくいね!」を連発。お客さんからビールの差し入れをもらったかと思えば、「つまみはないん?」と付け加えてみたり。しかしそんな船頭さんにも想定外の出来事が!安珍さんを乗せて船渡しの最中、なんと船が二つに分かれてしまうのです(笑)。ストーリー上、絶対に起こるはずのない珍事に、会場のみなさんも大笑いでした。
最後は上河内神楽団「紅葉狩」。人気演目であり、新舞の魅力がたくさん詰め込まれていますね。鬼女たちの華やかな舞はゆったりとして、物語の始まりを強調します。物語が進むにつれ、段々と舞が変化していきます。そして奏楽も重要な要素。特に場面と場面をつなぐわずかな間などは、奏楽の持っていき方で随分と印象が変わるのではないでしょうか。最後はエネルギーを全て出し切るかのような合戦。舞も楽も、限界までスピードアップし、見事な伝統の技を見せてくださいました。
さて毎年恒例の新春神楽から、今年も始まりました。どうぞ本年も「神楽のぶろぐ」をよろしくお願いします。
2012,01,03 Tue 20:08
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先週の日曜日は、千代田開発センターで月一の舞いが開催されました。テーマは「神楽歴史物語-大江山への道-」ということで、昨年に引き続き月一では二回目の企画テーマでした。源頼光と四天王のお話や人気の高い酒呑童子伝説のお話。何度見てもまた見たい!そんなシリーズですね。それでは報告します。
高猿神楽団「山 姥」
源頼光四天王の一人、坂田金時誕生の物語です。頼光が東国凶賊征伐の勅命を受け、上路山(あげろやま)にさしかかったところ一夜の宿を借りることになります。しかし、その宿は山姥たちの住み家。夜更け、怪童丸が頼光たちに切り掛かろうとすると早々に合戦となります。見せ場では、山姥が一瞬にして恐ろしい鬼となる場面や頼光たちと怪童丸の見事な刀さばきなどがあり、客席からはたくさんの拍手が沸き起こっていました。そしてクライマックスの母と子の別れのシーン。肩を抱き合い、別れを惜しむ親子の様子に会場は一時しんみり。この時の場面は口上などはありませんでしたが、言葉なくても子を送り出す母の心境などが見てとれるようでした。
大森神楽団「戻橋」
そして舞台は京の都、一条戻り橋へ移ります。大森神楽団の「戻 橋」では、鬼退治の際、渡辺綱は安倍清明から「式神」を授かります。この式神が綱と茨木童子との合戦の時、大きなカギとなります。しかし、その前に茨木童子が化けた若い女の姿に皆さん目が釘付けだったことでしょう。夜な夜な戻り橋に現れる鬼、その正体が茨木童子。しかし、女に化けた茨木童子に道案内をしてほしいと言われ、綱はまんまと騙されてしまいます。それをあざ笑うかのように綱の背後で鬼の姿に戻る茨木童子は恐ろしかったですね。そして、 綱はどうにか茨木童子の正体を見破るものの、絶体絶命の危機に。しかし、ここで清明から授かった式神が力を貸してくれます。式神が登場するとそこから一気に形勢逆転。茨木童子は片腕を切り落とされ一時退散。そして物語は羅生門へと続きます。
山王神楽団「羅生門」
この演目では神楽団によって始まり方はさまざまですが、山王さんでは茨木童子が酒呑童子の所へ戻ってくる所から始まります。ここで印象的なのが、茨木童子は花道から女の姿で登場してくるところ。先ほどの戻り橋であった出来事が思い返されるような感じですね。また、この演目では茨木童子の腕を取り返すため、酒呑童子が大暴れします。一番の見せ所はやはり、面の早変わりでしょうか。怪しそうな姥から鬼に変わったかと思えば、綱の養母へと変化。そして、養母から恐ろしい鬼へと変わる姿は思わず「お見事!!」と言ってしまいそうでした。また、山王さんは今年一番この演目に力を入れていらっしゃるようで、酒呑童子と頼光の立ち合いのときでも、その思いがひしひし伝わってきました。
津浪神楽団 「大江山」
いよいよ、物語はクライマックスへと進みます。先ほどの三つの演目は八調子で艶やかで華やかな印象がありましたが、こちらの津浪さんの大江山は六調子。ゆっくりと落ち着いた感じの舞いや口上で、一つ一つ噛みしめながら神楽を拝見できました。また、酒呑童子と頼光との問答では、深みのある落ち着いた口上や絶妙な間などがあり、緊迫した空気というよりは、重みや奥深さが感じられる一場面となっていました。その中で酒呑童子の独特な「なぁにぃ、なぁにぃ?」という言いまわしには、なんだか真似がしたくなってしまいそうでしたね。そして、場面は酒呑童子と頼光の最終決戦と移ります。立ち合いでは、無数の蜘蛛の糸が飛び交い、頼光たちは酒呑童子の妖術に苦しめられます。しかし、住吉明神から授かった巻物で難を逃れ、激しい戦いの末ようやく酒呑童子を倒します。酒呑童子の首を持つ頼光さんたちは、とても誇らしそうでしたよ。
最後は津浪さんの童子さんたちと記念撮影会がありました。衣装を着させてもらう子供たちや童子さんたちと一緒に写真撮影など、最後まで盛り上がりました。
さて、今年の月一はこれでお終いとなりましたが、また来年も続きます。これからも月一の舞いをよろしくお願い致します。また、来年皆さんとお会いできることを楽しみにしています。
高猿神楽団「山 姥」
源頼光四天王の一人、坂田金時誕生の物語です。頼光が東国凶賊征伐の勅命を受け、上路山(あげろやま)にさしかかったところ一夜の宿を借りることになります。しかし、その宿は山姥たちの住み家。夜更け、怪童丸が頼光たちに切り掛かろうとすると早々に合戦となります。見せ場では、山姥が一瞬にして恐ろしい鬼となる場面や頼光たちと怪童丸の見事な刀さばきなどがあり、客席からはたくさんの拍手が沸き起こっていました。そしてクライマックスの母と子の別れのシーン。肩を抱き合い、別れを惜しむ親子の様子に会場は一時しんみり。この時の場面は口上などはありませんでしたが、言葉なくても子を送り出す母の心境などが見てとれるようでした。
大森神楽団「戻橋」
そして舞台は京の都、一条戻り橋へ移ります。大森神楽団の「戻 橋」では、鬼退治の際、渡辺綱は安倍清明から「式神」を授かります。この式神が綱と茨木童子との合戦の時、大きなカギとなります。しかし、その前に茨木童子が化けた若い女の姿に皆さん目が釘付けだったことでしょう。夜な夜な戻り橋に現れる鬼、その正体が茨木童子。しかし、女に化けた茨木童子に道案内をしてほしいと言われ、綱はまんまと騙されてしまいます。それをあざ笑うかのように綱の背後で鬼の姿に戻る茨木童子は恐ろしかったですね。そして、 綱はどうにか茨木童子の正体を見破るものの、絶体絶命の危機に。しかし、ここで清明から授かった式神が力を貸してくれます。式神が登場するとそこから一気に形勢逆転。茨木童子は片腕を切り落とされ一時退散。そして物語は羅生門へと続きます。
山王神楽団「羅生門」
この演目では神楽団によって始まり方はさまざまですが、山王さんでは茨木童子が酒呑童子の所へ戻ってくる所から始まります。ここで印象的なのが、茨木童子は花道から女の姿で登場してくるところ。先ほどの戻り橋であった出来事が思い返されるような感じですね。また、この演目では茨木童子の腕を取り返すため、酒呑童子が大暴れします。一番の見せ所はやはり、面の早変わりでしょうか。怪しそうな姥から鬼に変わったかと思えば、綱の養母へと変化。そして、養母から恐ろしい鬼へと変わる姿は思わず「お見事!!」と言ってしまいそうでした。また、山王さんは今年一番この演目に力を入れていらっしゃるようで、酒呑童子と頼光の立ち合いのときでも、その思いがひしひし伝わってきました。
津浪神楽団 「大江山」
いよいよ、物語はクライマックスへと進みます。先ほどの三つの演目は八調子で艶やかで華やかな印象がありましたが、こちらの津浪さんの大江山は六調子。ゆっくりと落ち着いた感じの舞いや口上で、一つ一つ噛みしめながら神楽を拝見できました。また、酒呑童子と頼光との問答では、深みのある落ち着いた口上や絶妙な間などがあり、緊迫した空気というよりは、重みや奥深さが感じられる一場面となっていました。その中で酒呑童子の独特な「なぁにぃ、なぁにぃ?」という言いまわしには、なんだか真似がしたくなってしまいそうでしたね。そして、場面は酒呑童子と頼光の最終決戦と移ります。立ち合いでは、無数の蜘蛛の糸が飛び交い、頼光たちは酒呑童子の妖術に苦しめられます。しかし、住吉明神から授かった巻物で難を逃れ、激しい戦いの末ようやく酒呑童子を倒します。酒呑童子の首を持つ頼光さんたちは、とても誇らしそうでしたよ。
最後は津浪さんの童子さんたちと記念撮影会がありました。衣装を着させてもらう子供たちや童子さんたちと一緒に写真撮影など、最後まで盛り上がりました。
さて、今年の月一はこれでお終いとなりましたが、また来年も続きます。これからも月一の舞いをよろしくお願い致します。また、来年皆さんとお会いできることを楽しみにしています。
2011,12,14 Wed 21:47
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