次は鳥取県より日南神楽神光社(にちなんかぐらじんこうしゃ)「神能杵築(しんのうきづき)」。パンフレットの紹介に「東に岡山、西に島根、南に広島の3県に隣接しており、各県で舞われている神楽の特徴を取り入れた」とありましたが、今回のイベントでは先に上記3県の神楽の上演があったため、このことがご覧になったみなさんにもよくおわかりになったのではないでしょうか。舞い方や所作、奏楽、面、衣装、言葉の言い回しや舞殿の使い方。まだまだ他にもいろいろな要素がありますが、これらを大事に伝承されてきたからこそ、こうやって各地の特色が現在の私達も見ることができるんですね。
続いて島根県より大都神楽団「八岐大蛇」。迫力ある大蛇の上演を楽しみにされていた方も多くおられたと思います。しかしその前に、足名椎・手名椎のお二人が笑わせてくださいました。ほのぼのとしたおとぼけ感を出しながら、息の合ったコンビネーション。しかしそこから大蛇が登場すると、会場の雰囲気が一気に変わります。浜田八調子の独特な大蛇のお囃子が、ぞろぞろと現れる八匹の怪物たちを演出します。照明やドライアイスがより雰囲気を盛り上げ、すっかり神話の世界に引き込まれてしまいます。須佐之男命の勇ましい戦いぶりもしっかりと堪能させていただきました。
残り2演目は広島から。まずは琴庄神楽団「厳島」。初演から2年経ち、多くの神楽ファンのみなさんがご覧になったことと思います。「広島を代表する演目に」と願っていましたが、今回のようなイベントでまた見ることができて嬉しく思いました。三女神の場面は、厳島の美しい光景が蘇るような演出。青い空と白い砂浜、そして赤い鳥居。みなさんもきっとそんな光景が頭に浮かんだのではないでしょうか。後半は打って変わって恐ろしい場面。平清盛を苦しめる怨霊たちの登場で、舞台は暗く重たい雰囲気に包まれます。広島の神楽の魅力と、舞台性に富んだ演目、きっとこれからもますます話題を集めていくことと思います。
最後は中川戸神楽団「板蓋宮」。開演前に舞台袖でスタッフの方とお話する機会があったのですが、その方が「あれから20年経ったんよのぉ」と感慨深げにおっしゃられていました。「あれから」とはもちろん、初めて広島の神楽をホールで上演した「スーパー神楽」のイベントのことです。創作神楽「板蓋宮」で舞台演出を取り入れた斬新な神楽を発表された中川戸神楽団さん。その当時を知るスタッフの方が、今回のイベントにも多く関わられています。当時は手探りで心配だらけだったのが、今ではお馴染みのスタッフが当たり前のようにやれば何も心配がない、との言葉を聞いて、神楽団と、スタッフのみなさんがこれまで築いてこられた物の重みを感じました。
以上、全演目のご紹介でした。今年も神楽の本格的なシーズンが始まりましたね!みなさんと一緒に私も楽しみたいと思います。
2012,09,15 Sat 10:43
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KAGURA-TVありがとうございます。上野学園ホールに足を運びましたが、今また見直して鮮明に記憶がよみがえります。大都(おおつ)神楽団さんの大蛇八匹は本当に壮観です。もう一つ印象に残っているのは足名椎さんの台詞廻しですが、民謡を歌っているかのごとく節を付けて・・また本当によコロコロとコブシが廻るんですよね~。
| obanba | EMAIL | URL | 12/11/02 09:36 | zCiFz1dE |
神楽ファンさん、コメントありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。
これからもどうぞよろしくお願いします。
| 特派員Y | EMAIL | URL | 12/10/22 18:49 | UEso//TQ |
いつも報告楽しみにしています
特派員さん頑張ってくださいね
特派員さん頑張ってくださいね
| 神楽ファン | EMAIL | URL | 12/10/21 19:30 | 65U.QRsc |
さて次は徳島県徳島市のんき連による「阿波おどり」。盆踊りから生まれたという阿波おどりも、神楽と同じく日本が世界に誇る伝統芸能の一つです。神楽のシーズンと言えば秋ですが、こちらは夏。徳島ではお盆の四日間、盛大に阿波おどりが街中で開催され、約130万人の人出で賑わうそうです。たまたま私の知人の方で、広島県内で阿波おどりの連に所属されている方がおられて、以前本場の阿波おどりのビデオを見せていただきましたが、映像だけでも圧倒的なおどりのエネルギーが伝わってきました。阿波おどりの楽は二拍子で「ぞめき囃子」というのが代表的だそうですが、一度聞いたら頭に残る、心地よいお囃子です。ゆっくりと踊りが始まり、そして踊り手の動きと連動してだんだんと速く、激しくなってくると自然にこちらのテンションも上がってくるような感じ。日本人の心に響いてくる曲でした。踊りのほうは、「手をあげて足を運べば阿波おどり」と言われるくらい、シンプルで誰もが楽しめるもの。しかしその基本姿勢からは、神楽と共通の姿を見てとることができました。やわらかさの中にキレがあり、同じ動きなのに飽きない。踊り手さんの表情もにこやかで、きっと初めてご覧になった方も存分に楽しめたことと思います。また演出のほうも、暗いステージにスポットライトを当てたり、スモークが出てきたり。五色の天蓋の下で見る阿波おどりも、なかなかない体験かと思います(笑)。最後は踊り手さん約40名が勢揃いして迫力のフィナーレ。思わずお盆の暑さと夏祭りの熱気を思い出すようでした。
続いては山口県より山代白羽(やましろしらは)神楽保存会「鵺退治」。衣装や演目名からもわかるように、見た目の雰囲気が広島の神楽と似ていました。奏楽のほうは独特で、割と速いテンポで同じメロディがひたすら繰り返されるという感じ。最初は佐伯藤内太郎守正(さいきとうないたろうもりまさ)という人物が竹を持って舞います。これは鵺を退治するためにその竹で矢を作ったという伝説に基づいているそうです。その後は頼政と猪早太が登場、鵺を退治するという見慣れた展開に。最後の歓喜の舞はかなり激しく、片足で跳ねながら息つく間もないほどで、最後まで元気の良い舞を見せてくださいました。
次は愛媛県より藤縄(ふじなわ)神楽保存会「月日の舞」「悪魔祓・鬼四天(おにしてん)」「薙刀の舞」の三本立て。「月日の舞」は一人の舞手さんによるもので、両手にそれぞれ太陽と月が描かれた小さなお盆を持って舞います。落とさないように傾けたり、クルクル回転させたり、まるで手にはりついているかのような、見事な芸を披露してくださいました。「悪魔祓・鬼四天」は鬼と四人の神の舞。それぞれの舞を披露した後はいよいよ対決。一対一での合戦でしたが、木刀と長い棒との、まるでアクション映画のワンシーンのような、スピーディーで見事な戦いを披露されました。また鬼のほうがチャリのような感じで、お客さんを連れ込んで戦わせてみたりと、意外な場面も。見所たくさんの演目でした。最後は「薙刀の舞」で、一人の舞手さんが文字通り薙刀を使った舞を披露。これも先ほどの合戦に負けない、見事な薙刀さばきでした。薙刀を回す時の速さはこちらの想像以上。クライマックスは座って膝をついた状態で、自分も回りながら薙刀を高速回転させるという芸。これは圧巻でした。
そして広島県から横田神楽団「葛城山」。神楽ファンのみなさんも何度もご覧になっているかと思いますが、こうして各地の神楽を見た後だと、また少し違った面も見ることができたのではないでしょうか。聞きなれた奏楽ですが、改めて聞いてみると、他県と比べて、神楽歌が特徴的なのがわかりますね。楽のリズムも複雑で、変化に富んでいます。舞とともに、楽のメロディも時代に合わせて進化してきたんでしょうね。さてこの演目は葛城山に住む土蜘蛛が主役。美しい侍女に化けて源頼光をとり食らおうとします。前半の見せ場、一瞬の変化を見逃されてませんか?ここは広島神楽の特徴ですね。後半は大きな鬼となって登場。その迫力ある舞も見応えありでした。
以上、中盤の4演目でした。さていよいよ「その3」で残りの演目をご紹介します。
2012,09,13 Thu 22:40
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ひが吉さん、コメントありがとうございます。
記事と合わせて動画配信も楽しんでいただけたようで嬉しいです。
神楽と同じく、日本が誇る伝統芸能として、阿波踊りのさらなる飛躍も祈りたいと思います。
記事と合わせて動画配信も楽しんでいただけたようで嬉しいです。
神楽と同じく、日本が誇る伝統芸能として、阿波踊りのさらなる飛躍も祈りたいと思います。
| 特派員Y | EMAIL | URL | 12/10/22 18:46 | UEso//TQ |
神楽の杜での期間限定配信ありがとう。
感動の共有させてくれてありがとう。
五色の天蓋の下で見る阿波おどり、見たかったんだ〜♪
私たちもいつかそんなチャンスがくるといいな♪
感動の共有させてくれてありがとう。
五色の天蓋の下で見る阿波おどり、見たかったんだ〜♪
私たちもいつかそんなチャンスがくるといいな♪
| ひが吉 | EMAIL | URL | 12/10/13 00:08 | sKb0s3IA |
9月9日の広島市の上野学園ホールで「中四国神楽フェスティバルinひろしま」が行われました。見慣れた広島や島根以外の様々な神楽も上演され、それぞれの特徴を見比べたりすることもできました。それでは報告です。
まずは宮乃木神楽団「神降し」。神楽の基本といわれる演目です。洗練された舞からは、「清」という印象を受けました。雑念のない、清らかな舞は、ムダな動きのないなめらかな舞にも見え、舞殿を祓い清めるという意味合いのある、この演目ならではの魅力を感じました。
続いては香川県から、佐料編笠(さりょうあみがさ)神楽保存会「カラスの舞」。面白い名前の神楽だなと思いましたが、これは神武天皇を道案内した八咫烏(やたがらす)にちなんだ舞だそうです。最初は、黒い衣装をまとい、常にかがんだ体勢の舞手さんが一人で舞われましたが、その後は残った二人の舞手さんによる舞。対角の位置で同じ舞を進めていきます。基本的にはゆったりとした舞が淡々と続く感じですが、時折高く飛ぶ場面もあり、意表をつくようにダイナミックな印象も受けました。
再び宮乃木神楽団で「大江山」。数ある広島神楽の演目の中でも、最も激しい戦いが繰り広げられる演目の一つです。源頼光と四天王のキッチリそろったメリハリのある舞は、鬼に負けない勇ましさを感じます。対する酒呑童子らは、激しく荒々しい舞で迫力と怖さを感じさせます。そして後半ついに対決のときを迎えます。見ているみなさんも思わず力が入ったことでしょう!奏楽もどんどんテンポが上がっていき、戦いの激しさを表します。クライマックスは三人がかりで酒呑童子を退治。迫力ある舞をしっかりと見せてくださいました。
次は高知県から梼原(ゆすはら)町津野山(つのやま)神楽保存会「山探し」。あらすじは、金山彦の使いの神が、紛失した宝剣を捜し求めるというもので、一人だけの舞でしたがいろいろな採り物を使われました。まず宝剣を探す舞は大きな布を覆いかぶさるようにして、腰をかがめての舞。楽のリズムはかなり速く感じ、小刻みに足を踏みながら舞い進めていきます。そして宝剣を見つけた後は扇子と刀を取替えての舞、最後は二刀流での舞でした。この演目で使用された面は般若の面で、広島や島根では悪役を連想してしまいますが、そうではありません。いろいろな舞から見せるその表情の変化も見所でした。
次は岡山県より備中神楽伝承研究会「吉備津(きびつ)舞」。吉備津彦命と温羅(うら)の戦いがメインの演目です。この演目では奏楽が太鼓のみ。ですが場面によっていろいろなリズムがあり、さらに終始太鼓の方が歌やかけ声をかけられており、一つの楽だけでこんなこともできるのかと興味深く拝見しました。中でもまるで実況するかのような歌が入ったのが面白かったですね。温羅が命の姿を見失い、太鼓をめがけて構えてしまうと、「ヨイソラヨイソラ、それは太鼓じゃヨイソラヨイソラ…」という歌が。これには思わず会場から笑い声が。そして悪役の温羅ですが、刀が手から離れなかったり、疲れて自分の腕をマッサージしたり、果てには居眠りをしてみたり…。速さと力強さを感じる戦いの舞の中に、いろんな要素を見ることができました。
まずは前半の5演目のご紹介でした。続きもお楽しみに!
まずは宮乃木神楽団「神降し」。神楽の基本といわれる演目です。洗練された舞からは、「清」という印象を受けました。雑念のない、清らかな舞は、ムダな動きのないなめらかな舞にも見え、舞殿を祓い清めるという意味合いのある、この演目ならではの魅力を感じました。
続いては香川県から、佐料編笠(さりょうあみがさ)神楽保存会「カラスの舞」。面白い名前の神楽だなと思いましたが、これは神武天皇を道案内した八咫烏(やたがらす)にちなんだ舞だそうです。最初は、黒い衣装をまとい、常にかがんだ体勢の舞手さんが一人で舞われましたが、その後は残った二人の舞手さんによる舞。対角の位置で同じ舞を進めていきます。基本的にはゆったりとした舞が淡々と続く感じですが、時折高く飛ぶ場面もあり、意表をつくようにダイナミックな印象も受けました。
再び宮乃木神楽団で「大江山」。数ある広島神楽の演目の中でも、最も激しい戦いが繰り広げられる演目の一つです。源頼光と四天王のキッチリそろったメリハリのある舞は、鬼に負けない勇ましさを感じます。対する酒呑童子らは、激しく荒々しい舞で迫力と怖さを感じさせます。そして後半ついに対決のときを迎えます。見ているみなさんも思わず力が入ったことでしょう!奏楽もどんどんテンポが上がっていき、戦いの激しさを表します。クライマックスは三人がかりで酒呑童子を退治。迫力ある舞をしっかりと見せてくださいました。
次は高知県から梼原(ゆすはら)町津野山(つのやま)神楽保存会「山探し」。あらすじは、金山彦の使いの神が、紛失した宝剣を捜し求めるというもので、一人だけの舞でしたがいろいろな採り物を使われました。まず宝剣を探す舞は大きな布を覆いかぶさるようにして、腰をかがめての舞。楽のリズムはかなり速く感じ、小刻みに足を踏みながら舞い進めていきます。そして宝剣を見つけた後は扇子と刀を取替えての舞、最後は二刀流での舞でした。この演目で使用された面は般若の面で、広島や島根では悪役を連想してしまいますが、そうではありません。いろいろな舞から見せるその表情の変化も見所でした。
次は岡山県より備中神楽伝承研究会「吉備津(きびつ)舞」。吉備津彦命と温羅(うら)の戦いがメインの演目です。この演目では奏楽が太鼓のみ。ですが場面によっていろいろなリズムがあり、さらに終始太鼓の方が歌やかけ声をかけられており、一つの楽だけでこんなこともできるのかと興味深く拝見しました。中でもまるで実況するかのような歌が入ったのが面白かったですね。温羅が命の姿を見失い、太鼓をめがけて構えてしまうと、「ヨイソラヨイソラ、それは太鼓じゃヨイソラヨイソラ…」という歌が。これには思わず会場から笑い声が。そして悪役の温羅ですが、刀が手から離れなかったり、疲れて自分の腕をマッサージしたり、果てには居眠りをしてみたり…。速さと力強さを感じる戦いの舞の中に、いろんな要素を見ることができました。
まずは前半の5演目のご紹介でした。続きもお楽しみに!
2012,09,11 Tue 23:08
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9月9日の日曜日は広島市の上野学園ホールで「中四国神楽フェスティバルinひろしま」が行われます。全12プログラムのうち、広島・島根の神楽は5つ。そのほか中四国地方の神楽がズラリ。今まで見たことのない神楽が盛りだくさんで、とても興味深いイベントとなっています。さらに今回は徳島市より「のんき連」による阿波踊りもあります。個人的にもやはり阿波踊りに注目したいですね! 神楽と同じく、日本の伝統芸能の一つとして長く伝承されている阿波踊り。阿波踊りには三大主流というものがあり、「阿呆(あほう)連」の阿呆調 、「娯茶平(ごぢゃへい)」の娯茶平調、そして今回の「のんき連」ののんき調がその3つに数えられているそうです。神楽でいう舞手は「踊り手」、そして奏楽は「鳴り物」で、神楽でもお馴染みの太鼓や笛、鉦に加えて三味線があるようです。これがいったいどんな上演になるのか、とても楽しみですね!
2012,09,06 Thu 21:36
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