今週の日曜日は、広島厚生年金会館において「RCC早春神楽共演大会」が開催されます。この大会は三部構成で進められていきます。第一部では「原点を見つめる」で、原田神楽団「天の岩戸」が上演されます。皆さんご存知の通り宇津女命が岩戸の前で舞ったものが神楽の最初とされています。この演目では、その神楽の始まりがご覧いただけます。後に続く二部、三部のように鬼などは出てこず、派手さはありませんが神楽の奥深さ、歴史、神楽のそのものの良さを堪能できると思います。そして、次に第二部では『伝統を受け継ぐ』。この部では古くから伝わってきた伝統を今に受け継ぎ、そして伝承していく。神楽をされている方々にとっても重要で大事な部分ではないかと思います。今回そんなの地域で大切に守られてきた伝統的な神楽を披露してくださるのは、筏津神楽団「神武」、大都神楽団「黒塚」、三谷神楽団「大江山」、山王神楽団「八岐大蛇」です。旧舞いの独特な雰囲気、趣のある所作や舞いをじっくりと堪能したいですね。そして最後、第三部では『あらたなる神楽への挑戦』。この部では、時代とともに変化していき、新しく斬新なものへと変わっていく神楽。また、各神楽団の創作神楽などがご覧いただけます。各神楽団のオリジナリティー溢れる神楽。今回は、琴庄神楽団「義経平氏追討」、東山神楽団「戻り橋」、大塚神楽団「頼政」、上河内神楽団「滝夜叉姫」、中川戸神楽団「紅葉狩」が舞われます。今回もあっと驚く仕掛けや演出が次々に出てきそうですね。皆さまもわくわくされているのではないでしょうか!?このビックイベントまであと少しですね。私たちもその日が来るのを今か今かと待ちわびています♪当日、みんなで楽しみましょう☆
2010,02,26 Fri 19:21
新着コメント
2月14日は千代田開発センターで「月一の舞」が行われました。今回のテーマは「親から子へ 神楽の未来が見える」ということで、いつもの神楽上演に加え、それぞれ出演団体の中で親子にまつわるエピソードなども語られました。それではご紹介していきます。
まずは上河内神楽団「大江山」。上河内神楽団さんは、家族関係となる方が団員の中で半数以上になるということで、舞手、楽人とどこを見ても親子の共演となっていたようです。神楽だけでなく、いつも一緒に過ごしている、身内ならではの息の合った様子が、いたるところで見られたように思います。しかし、家族じゃないから息が合わないということは決してありません。大江山へ攻め上る頼光たち、その神三人は若手の方が二名とベテランの方一名というコンビでしたが、実の親子ではなくとも、若い後輩を常に見守るかのような、先輩の優しい視線がとても暖かく感じられました。
続いては梶矢神楽団「山伏」。今回の月一は神楽上演前に主催者を代表してNPO法人広島神楽芸術研究所の菅沢良典さんが、それぞれの出演団体の紹介をされました。その中で印象に残ったお話があったのでここでもご紹介させていただきます。みなさんもよくご存知のように、菅沢さんは宮乃木神楽団の顧問としても活動されており、そして宮乃木神楽団さんは梶矢神楽団さんから指導を受けました。その最初の頃、指導に来られた梶矢神楽団の方が「榊(さかき)とはどういう漢字か知っていますか」と問われたのだそうです。榊は「木へん」に「神」と書く、つまりこの木には神様が宿っておられる…。榊は神楽の中でも手に持ったりしますし、神様へのお供え物でもあります。舞や楽が重要なのはもちろんですが、こういったことを大事にされることは、神楽の伝承という面において何よりも大切なことではないでしょうか。そんな伝統を大事にされている梶矢神楽団さん。今回の上演も派手さはないかもしれませんが、伝統の味、技といったものをみなさんも感じていただけたと思います。
そして都治神楽社中「塵輪」。司会の方から「都治に林親子あり」という紹介もあったように、この林さんお二方が都治神楽社中を支えてこられたのだそうです。そんなお二方は今回、大太鼓と小太鼓で出演されました。舞手の心を読みつつ、全体の流れも考えながらのリードは、なかなかできることではないと思いますが、神楽を熟知したお二方が太鼓を叩かれるのは、舞手の方にとってはさぞかし心強く感じられたことと思います。中でもやはり、合戦の場面は素晴らしかったですね。止まることを知らないかのような激しい舞。そしてクライマックスに近づくにつれ、どんどん激しくなっていく奏楽。お互いが畳み掛けるような相乗効果で、「神楽に酔いしれる」感覚を味わうことができました。
最後は上河内神楽団「紅葉狩」。先ほどの「大江山」上演後に団員のみなさんの素顔を拝見することができたのですが、その際に本当にみなさんが仲の良いことがすごく伝わってきたんですよね。しかし、一度お囃子が鳴れば表情が変わります。親子、あるいはご家族の方なら見慣れた光景かもしれませんが、普段を知る機会のないファンのみなさんにとっては貴重な体験だったのではないでしょうか。個人的にはやはり、大太鼓の河野さんが印象的でした。先ほどは娘さんの言葉につい涙が…という一幕もありましたが、いざ本番となると一変。神楽歌はもちろん、要所で入る掛け声も心地のいいものですよね。合戦の時の立ち上がりながらの勢いある姿は、舞手さんもファンの方もさらに盛り上がることができたのではと思います。
上演終了後には上河内神楽団の方との記念撮影会も行われました。今回はどの神楽団さんも全員が登場してくださったので、普段見れない素顔もファンのみなさんにバッチリ見ていただけたと思います。特派員報告もいつもとはちょっと趣向を変えて、いろんなエピソードをご紹介させていただきました。「親子」とあえてくくらなくても、神楽団の中では先輩と後輩がしっかりと絆で結ばれている、それはファンのみなさんにもおわかりいただけると思います。先輩から後輩へ、時には厳しく、時には優しく、長い時間をかけて代々受け継がれてきた神楽。そんな伝承の中での「親子」ならではの物語が今回のテーマでした。ただ神楽を楽しむだけでなく、より深く神楽に興味を持つ機会はなかなかないと思いますが、この月一の舞はそんな貴重なイベントの一つとして定着してきた感があります。来年度の続行も決定したようですし、私自身もみなさんと一緒に楽しみにしたいと思います。
まずは上河内神楽団「大江山」。上河内神楽団さんは、家族関係となる方が団員の中で半数以上になるということで、舞手、楽人とどこを見ても親子の共演となっていたようです。神楽だけでなく、いつも一緒に過ごしている、身内ならではの息の合った様子が、いたるところで見られたように思います。しかし、家族じゃないから息が合わないということは決してありません。大江山へ攻め上る頼光たち、その神三人は若手の方が二名とベテランの方一名というコンビでしたが、実の親子ではなくとも、若い後輩を常に見守るかのような、先輩の優しい視線がとても暖かく感じられました。
続いては梶矢神楽団「山伏」。今回の月一は神楽上演前に主催者を代表してNPO法人広島神楽芸術研究所の菅沢良典さんが、それぞれの出演団体の紹介をされました。その中で印象に残ったお話があったのでここでもご紹介させていただきます。みなさんもよくご存知のように、菅沢さんは宮乃木神楽団の顧問としても活動されており、そして宮乃木神楽団さんは梶矢神楽団さんから指導を受けました。その最初の頃、指導に来られた梶矢神楽団の方が「榊(さかき)とはどういう漢字か知っていますか」と問われたのだそうです。榊は「木へん」に「神」と書く、つまりこの木には神様が宿っておられる…。榊は神楽の中でも手に持ったりしますし、神様へのお供え物でもあります。舞や楽が重要なのはもちろんですが、こういったことを大事にされることは、神楽の伝承という面において何よりも大切なことではないでしょうか。そんな伝統を大事にされている梶矢神楽団さん。今回の上演も派手さはないかもしれませんが、伝統の味、技といったものをみなさんも感じていただけたと思います。
そして都治神楽社中「塵輪」。司会の方から「都治に林親子あり」という紹介もあったように、この林さんお二方が都治神楽社中を支えてこられたのだそうです。そんなお二方は今回、大太鼓と小太鼓で出演されました。舞手の心を読みつつ、全体の流れも考えながらのリードは、なかなかできることではないと思いますが、神楽を熟知したお二方が太鼓を叩かれるのは、舞手の方にとってはさぞかし心強く感じられたことと思います。中でもやはり、合戦の場面は素晴らしかったですね。止まることを知らないかのような激しい舞。そしてクライマックスに近づくにつれ、どんどん激しくなっていく奏楽。お互いが畳み掛けるような相乗効果で、「神楽に酔いしれる」感覚を味わうことができました。
最後は上河内神楽団「紅葉狩」。先ほどの「大江山」上演後に団員のみなさんの素顔を拝見することができたのですが、その際に本当にみなさんが仲の良いことがすごく伝わってきたんですよね。しかし、一度お囃子が鳴れば表情が変わります。親子、あるいはご家族の方なら見慣れた光景かもしれませんが、普段を知る機会のないファンのみなさんにとっては貴重な体験だったのではないでしょうか。個人的にはやはり、大太鼓の河野さんが印象的でした。先ほどは娘さんの言葉につい涙が…という一幕もありましたが、いざ本番となると一変。神楽歌はもちろん、要所で入る掛け声も心地のいいものですよね。合戦の時の立ち上がりながらの勢いある姿は、舞手さんもファンの方もさらに盛り上がることができたのではと思います。
上演終了後には上河内神楽団の方との記念撮影会も行われました。今回はどの神楽団さんも全員が登場してくださったので、普段見れない素顔もファンのみなさんにバッチリ見ていただけたと思います。特派員報告もいつもとはちょっと趣向を変えて、いろんなエピソードをご紹介させていただきました。「親子」とあえてくくらなくても、神楽団の中では先輩と後輩がしっかりと絆で結ばれている、それはファンのみなさんにもおわかりいただけると思います。先輩から後輩へ、時には厳しく、時には優しく、長い時間をかけて代々受け継がれてきた神楽。そんな伝承の中での「親子」ならではの物語が今回のテーマでした。ただ神楽を楽しむだけでなく、より深く神楽に興味を持つ機会はなかなかないと思いますが、この月一の舞はそんな貴重なイベントの一つとして定着してきた感があります。来年度の続行も決定したようですし、私自身もみなさんと一緒に楽しみにしたいと思います。
2010,02,15 Mon 22:00
新着コメント
ありがとうございます!!
検討してみたいと思います♪
検討してみたいと思います♪
| 梶矢すき | EMAIL | URL | 10/02/19 20:37 | C1AjGUE. |
梶矢すきさん、コメントありがとうございます。
カメラをしっかり固定するために、三脚などを試されてはいかがでしょうか??
自分は神楽の写真を撮る時はいつも使っています。
カメラをしっかり固定するために、三脚などを試されてはいかがでしょうか??
自分は神楽の写真を撮る時はいつも使っています。
| 特派員Y | EMAIL | URL | 10/02/18 21:14 | sDlCJhvw |
お返事ありがとうございます!!
あたしもデジタルカメラで撮影しているのですが
ブレてしまってなかなかうまく撮れないんです…。
| 梶矢すき | EMAIL | URL | 10/02/18 19:08 | C1AjGUE. |
梶矢すきさん、コメントありがとうございます。
カメラはデジタル一眼レフで2008年に発売された初心者向けのものです。
自分としては写真よりも文章でお伝えすることを大事にしたいと思っていますが、こういったお言葉を頂いて嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
カメラはデジタル一眼レフで2008年に発売された初心者向けのものです。
自分としては写真よりも文章でお伝えすることを大事にしたいと思っていますが、こういったお言葉を頂いて嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
| 特派員Y | EMAIL | URL | 10/02/17 22:58 | sDlCJhvw |
とっても綺麗に撮れてますね!!
どんなカメラで撮られてるんですか?*
よかったら教えてください♪
| 梶矢すき | EMAIL | URL | 10/02/17 19:18 | C1AjGUE. |
1月17日に千代田開発センターで「月一の舞 チャリの技ー神楽の中の笑いー」が行われました。おかしな言動などで人を楽しませる、言わば道化のような役がチャリです。今回の月一はそのチャリ役にスポットを当てた特集ということで、伝統芸能の枠を超えた名人芸が繰り広げられました。それではご紹介します。
まずは川北神楽団「安達ヶ原」。陸奥国の安達ヶ原を訪れた山伏と剛力が恐ろしい目に遭う…というもので「黒塚」と同様の物語です。もちろんチャリ役は剛力さんですが、こちらではお二人の剛力さんが登場されました。一人はまだ中学生、そしてもう一人は大ベテランというコンビ。話術も巧みなベテラン剛力さん、何十年ぶりかにバスに乗ったおばあさんの話などで会場を盛り上げます。ベテランの技に押されるばかりかと思いきや…子分の剛力さんも意外なアドリブで笑わせてくださいました。そして途中からなんと狐さんも親子の二匹で登場。赤いリボンをつけて本当に可愛らしい子狐さんの活躍ぶり、物語を忘れてつい応援したくなりますね。客席に降りる場面もありましたが、たくさんの方が写真を撮られたり声をかけたりされて大人気でした。
続いて大塚神楽団「戻り橋」。こちらのチャリ役はもちろん、傘売り善兵衛さん。ところが善兵衛さん、つい最近「悪狐伝」の珍斉和尚を舞われたということで、セリフがごっちゃごちゃ。なかなか物語が前に進みません(笑)。挙句の果てにはお客さんからツッコミを入れられる始末。「舞なし、しゃべりだけで」というご本人のお言葉通り、こちらを飽きさせないテンポのよいトークで楽しませてくださいました。そしてなんとか物語が進んで、茨木童子の化身とのやり取りの場面。日が暮れて家に帰ろうとした善兵衛さんと、現れた化身が出会うはず…が、なんと二人ともスルー。おまけに化身さんはそのまま進んで幕の中に消えてしまわれました。再び現れるも、今度は気付いた善兵衛さんに対して、またもやスルーして通り過ぎようとする化身さん。本来はチャリ役ではありませんが、なかなかツボを押さえた演出で笑わせてくださいました。
そして琴庄神楽団「悪狐伝」。ここまで爆笑の連続で、会場は笑い疲れた感が漂っているような感じでしたが、ここでもチャリの技は炸裂。十念寺の和尚、珍斉さんと八念寺?のはっちゃんのお二人が息のあったコンビで笑わせてくださいました。お二人とも面を外す一幕もあったので、普段はどういった役を舞われているかおわかりになった方もおられたと思います。いつもは真剣な姿しか見ていないので、「こんな役もされるんだ~」と意外に思われたことでしょう。中でも一夜の宿を借りに来た狐の化身さんも加えたやり取りが面白かったですね。おもむろに姫の衣装に足を突っ込んだ和尚さん、コタツに見立てて「あたりんさい。」とはっちゃんを呼びます。うずくまっている姫の上にミカンを乗せてすっかりくつろぎモード。先月の月一では「奥州平泉」で感動的な物語を見せてくださいましたが、思わずその時の役を思い浮かべて余計におかしくなってしまいました。
最後は大塚神楽団「頼政」。石見神楽の「頼政」や広島の「ぬえ退治」の演目とは少し異なる内容が見受けられる、興味深い物語でした。こちらでのチャリ役は料理人の平野庄内(ひらのしょうない)という人物。先ほどの「戻り橋」「悪狐伝」でお餅がまかれたのを受けて「はぁ餅はないけぇね。」とアドリブの効いた一言はありましたが、あとはこれまでのように一人舞台ということはなく、物語を進めていかれました。これまでの三演目が爆笑続きだったので、少し物足りないと思われた方もおられたかもしれませんが、他の役にはない舞い方を見て「面白い話だけがチャリの技ではない」ということを感じていただけたのではないでしょうか。もちろん今日のチャリの舞手さんみなさんがそうですが、こっけいな舞い方や大きな動作、しゃべる時でもその話し方や間の取り方など、実はかなり高度な技術が要求される役ではないかと思います。さてこの庄内さん、料理の具材を運ぶ途中でたくさんのお猿さんに襲われてしまいます。言葉のやり取りはありませんが、チャリの技をたっぷり味わうことができる場面でした。
さて今回はそれぞれの演目のチャリに注目してご紹介しました。本当に面白い内容ばかりで、たまにはこんな企画もいいなと思われた方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。面白い話だけでなく、笑いの影に隠されたチャリの技、その本当の技を見つけることができたなら、今まで以上に面白く感じることができるかもしれませんね。
まずは川北神楽団「安達ヶ原」。陸奥国の安達ヶ原を訪れた山伏と剛力が恐ろしい目に遭う…というもので「黒塚」と同様の物語です。もちろんチャリ役は剛力さんですが、こちらではお二人の剛力さんが登場されました。一人はまだ中学生、そしてもう一人は大ベテランというコンビ。話術も巧みなベテラン剛力さん、何十年ぶりかにバスに乗ったおばあさんの話などで会場を盛り上げます。ベテランの技に押されるばかりかと思いきや…子分の剛力さんも意外なアドリブで笑わせてくださいました。そして途中からなんと狐さんも親子の二匹で登場。赤いリボンをつけて本当に可愛らしい子狐さんの活躍ぶり、物語を忘れてつい応援したくなりますね。客席に降りる場面もありましたが、たくさんの方が写真を撮られたり声をかけたりされて大人気でした。
続いて大塚神楽団「戻り橋」。こちらのチャリ役はもちろん、傘売り善兵衛さん。ところが善兵衛さん、つい最近「悪狐伝」の珍斉和尚を舞われたということで、セリフがごっちゃごちゃ。なかなか物語が前に進みません(笑)。挙句の果てにはお客さんからツッコミを入れられる始末。「舞なし、しゃべりだけで」というご本人のお言葉通り、こちらを飽きさせないテンポのよいトークで楽しませてくださいました。そしてなんとか物語が進んで、茨木童子の化身とのやり取りの場面。日が暮れて家に帰ろうとした善兵衛さんと、現れた化身が出会うはず…が、なんと二人ともスルー。おまけに化身さんはそのまま進んで幕の中に消えてしまわれました。再び現れるも、今度は気付いた善兵衛さんに対して、またもやスルーして通り過ぎようとする化身さん。本来はチャリ役ではありませんが、なかなかツボを押さえた演出で笑わせてくださいました。
そして琴庄神楽団「悪狐伝」。ここまで爆笑の連続で、会場は笑い疲れた感が漂っているような感じでしたが、ここでもチャリの技は炸裂。十念寺の和尚、珍斉さんと八念寺?のはっちゃんのお二人が息のあったコンビで笑わせてくださいました。お二人とも面を外す一幕もあったので、普段はどういった役を舞われているかおわかりになった方もおられたと思います。いつもは真剣な姿しか見ていないので、「こんな役もされるんだ~」と意外に思われたことでしょう。中でも一夜の宿を借りに来た狐の化身さんも加えたやり取りが面白かったですね。おもむろに姫の衣装に足を突っ込んだ和尚さん、コタツに見立てて「あたりんさい。」とはっちゃんを呼びます。うずくまっている姫の上にミカンを乗せてすっかりくつろぎモード。先月の月一では「奥州平泉」で感動的な物語を見せてくださいましたが、思わずその時の役を思い浮かべて余計におかしくなってしまいました。
最後は大塚神楽団「頼政」。石見神楽の「頼政」や広島の「ぬえ退治」の演目とは少し異なる内容が見受けられる、興味深い物語でした。こちらでのチャリ役は料理人の平野庄内(ひらのしょうない)という人物。先ほどの「戻り橋」「悪狐伝」でお餅がまかれたのを受けて「はぁ餅はないけぇね。」とアドリブの効いた一言はありましたが、あとはこれまでのように一人舞台ということはなく、物語を進めていかれました。これまでの三演目が爆笑続きだったので、少し物足りないと思われた方もおられたかもしれませんが、他の役にはない舞い方を見て「面白い話だけがチャリの技ではない」ということを感じていただけたのではないでしょうか。もちろん今日のチャリの舞手さんみなさんがそうですが、こっけいな舞い方や大きな動作、しゃべる時でもその話し方や間の取り方など、実はかなり高度な技術が要求される役ではないかと思います。さてこの庄内さん、料理の具材を運ぶ途中でたくさんのお猿さんに襲われてしまいます。言葉のやり取りはありませんが、チャリの技をたっぷり味わうことができる場面でした。
さて今回はそれぞれの演目のチャリに注目してご紹介しました。本当に面白い内容ばかりで、たまにはこんな企画もいいなと思われた方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。面白い話だけでなく、笑いの影に隠されたチャリの技、その本当の技を見つけることができたなら、今まで以上に面白く感じることができるかもしれませんね。
2010,01,19 Tue 20:54
新着コメント
神楽ファンさん、コメントありがとうございます。
月一の舞はキャビネットさんが撮影されていますので、おそらく販売もあると思います。
詳しくはキャビネットさんに問い合わせてみてください。
月一の舞はキャビネットさんが撮影されていますので、おそらく販売もあると思います。
詳しくはキャビネットさんに問い合わせてみてください。
| 特派員Y | EMAIL | URL | 10/02/15 22:18 | sDlCJhvw |
この時のDVDは販売されますか?
| 神楽ファン | EMAIL | URL | 10/02/15 04:22 | iV95cbPg |
三田井地区神楽保存会「御神躰(ごしんたい)の舞」。こちらの地方では聞きなれない演目ですが、その内容はイザナギとイザナミの二人の神様がお酒を作り、それを飲んで仲良くするというもの。別名「国生みの舞」とも言われ、夫婦円満を象徴する神楽なんだそうです。さてその二人の神様、お客さんともふれあう場面が。男の神様であるイザナギが、客席で女性のお客さんを見つけて親しそうな素振りをすると、それを見つけた妻のイザナミが駆け寄って引き戻してみたり。またその反対にイザナミも男性のお客さんにくっついて…というように、前半はあまり円満な感じではなかったかもしれません(笑)。 そして舞殿で仲良くお酒を作り始めるのですが、この二人の神様はみなさんご存知のように、この日本という国を作られた神様として有名です。天浮橋(あめのうきはし)に立たれた二人は、天沼矛(あめのぬぼこ)で混沌とした大地をかき混ぜ、その矛から滴り落ちたものが島となった…という国生みの神話。二人で仲良く作ったお酒を飲み合い、抱擁している姿は天下泰平を表しているようにも見えました。そして最後は会場のみなさんにモチまきのサービス。あまりにも広い会場なので、ゲットされた方は少なかったと思いますが、心温まる演目でした。
そして次は石見神楽です。後野神楽社中「五神」は、物語の内容としては先ほどの「御神躰の舞」に続いていると言えます。それぞれ四方、四季を司る四人の王子たちに、末っ子の埴安大王は領地を分けて欲しいと頼みます。願いは聞き入れられず戦になりますが、所務分けの翁が現れて戦を止めさせ、そして四季に土用を作り、四方に中央を作って埴安大王に分け与えます。そしてこの国が平和に治まるようになったという物語。少し難しいのですが、いわゆる陰陽五行思想を表した神楽で、いろんな要素が詰まったいわば大作とも言える内容です。内容が難しい上に、言葉も多いので「面白い」と感じるのはなかなか容易ではないかもしれません。しかし中盤には埴安大王の使いが現れ、浜田弁で領地を分けて欲しいと訴えます。マジメな内容と思いきや、「ちっと分けてや。」「やらりゃ~せん!」といったやり取りが繰り広げられ、思わず笑ってしまった方も多かったようです。またそれぞれ五色の鎧の衣装で、息をもつかせぬ激しい合戦は、この演目の大きな見どころ。五人が入り乱れる中で途中刀がキラリと輝く瞬間など、誰にでも面白いと感じさせてくれるのではないでしょうか。それでもやはり、最大の見どころは言葉の面白さであると思います。四神と埴安の畳み掛けるような言葉の応酬や、合戦を前に一気に捲くし立てる場面は、この演目ならではの面白さ。以前、神楽研究コラムでこの「五神」を特集しましたので、興味のある方はどうぞご覧ください。
http://www.npo-hiroshima.jp/blogn/index.php?e=108
そして有東木芸能保存会「恵比寿大黒の舞」。これは神楽ファンのみなさんにお馴染みの演目ですね。鯛を釣ろうと悪戦奮闘する恵比寿様と大黒様。広島では普通に広島弁でしゃべったりして客席を沸かせたりという内容も時々見受けられますが、こちらは言葉は一切なし。その代わり、実にわかりやすい身振り手振りで面白さを伝えてくださいました。また、広島ではガラクタを釣り上げたりしてなかなか鯛がかからないという演出が馴染み深いと思いますが、こちらの恵比寿様は最初から見事に大鯛を釣り上げられました。そしてもう一度!と糸を垂れているところに、なにやら背後から怪しい者が忍び寄ってきます。よく見るとそれは狐で、釣り上げた鯛を狙っているのです。そして恵比寿様が見事二匹目の鯛を釣り上げますが、跳ね上がる鯛を掴み損ね、そこを狐が待ってましたと言わんばかりにさっと鯛を奪って逃げていきました。いったん落ち込むものの再び挑戦しようとする恵比寿様、大黒様の姿、そしてこの展開に、思わず笑顔になられた方も多かったことでしょう。そしてまたもや鯛を釣り上げてめでたしめでたし。最後には静岡県特産のわさびとお茶がモチまきのようにまかれ、中には席を立って取りに行かれるお客さんもおられました。
最後は津浪神楽団「鍾馗」。素戔鳴(すさのお)命と大疫神、登場するこの二つの役が実に対照的で、そこがこの演目の見どころでもあります。ゆったりと、どっしりと。舞殿に現れた素戔鳴命は淡々と一人舞を繰り広げていきます。低い姿勢から高い姿勢へなめらかな動きを見せたかと思えば、楽に合わせてキレのある動き。緩急の効いた舞をしっかりと見せてくださいました。そして一方の大疫神。幕から地をなめるように低い体勢で登場。素戔鳴命に威嚇されると「ゴソゴソゴソ…」という音が聞こえてきそうな動きで引っ込みます。見た目といい、動きといい、近づいたら本当に病気にかかってしまいそうな印象すら受けますね(笑)。そんな大疫神を前に一歩も引かない素戔鳴命。茅の輪をかざして「どこからかかっていこうか」と構える姿勢は、安易な表現かもしれませんが本当に「カッコいい」です。そしてクライマックス、茅の輪によって苦しめられる大疫神、長い髪の毛を振り乱し、最後の最後まで不気味さを漂わせていました。登場人物や展開が少ないので地味かもしれませんが、対照的な役を完璧に舞い切った舞手さんの技量、素晴らしかったですね。見ている途中は休むことなく力が入りっぱなしといった感じで、舞台に集中させていただきました。
以上、「全国神楽フェスティバル」の最終日の模様を少しだけお伝えしました。さて芸北地域では大雪に見舞われているところもありますが、今週末は「月一の舞」が開催されます。「チャリの技」という珍しい企画ですので、どうぞみなさん千代田開発センターにお越しください。
http://www.npo-kagura.jp/contents/2009-kouiki-kagura/index.html
(画像は主催者の許可を得て撮影および掲載しております。 撮影 yuk☆kiiさん)
2010,01,14 Thu 19:31
新着コメント
nanさん、コメントありがとうございます。
見に行けなかった方のためにも、できるだけ上演の様子がわかるように書いているつもりです。
お褒めの言葉、嬉しく思います。
またコメントお願いします☆
見に行けなかった方のためにも、できるだけ上演の様子がわかるように書いているつもりです。
お褒めの言葉、嬉しく思います。
またコメントお願いします☆
| 特派員Y | EMAIL | URL | 10/02/03 21:30 | sDlCJhvw |
この公演みにいけなかったのでためになりました!
ありがとうございます!
ありがとうございます!
| nan | EMAIL | URL | 10/02/03 09:30 | TbAzEWsM |
広島市のALSOKホールで、1月9日から11日までの三日間に渡って開催された「全国神楽フェスティバルinひろしま」。北は北海道から南は宮崎県まで、日本各地に伝わる様々な神楽が一堂に会するというまさにビッグイベントでした。広島・島根の神楽ファンのみなさんのみならず、全国からの注目度も高かったようです。このたびの特派員報告はその最終日からいくつかご紹介していきます。
まずは千年以上の歴史を誇る、あの高千穂神楽の登場。宮崎県の三田井地区神楽保存会「手力雄(たぢからお)の舞」です。この演目は広島・島根でいうところの「天の岩戸」の前半部分にあたるようです。こう書くと、おそらくみなさんは「児屋根命と太玉命が出るんじゃない?」と思われるでしょうが、なんとこちらでは力の強い手力雄命が岩戸を探し出すという内容なのです。お馴染みの「天の岩戸」を見慣れている自分にとっても、非常に興味深いものでした。しかしその舞を見ると、やはり神楽の基本は同じということなんでしょうか、まったく新しいものを見るという感覚はありませんでした。これは後でご紹介する静岡県の神楽でも同じでしたね。その手力雄の舞ですが、わかりやすく言うならば、広島の山県舞の鬼のような感じ。腰を落として力強くゆったりと進み、回るところではスッと高くなって回り、再び腰を落として決める。そして機敏な頭の動きで辺りを見回すといった具合。続いて「鈿女の舞」が始まりました。こちらは広島と同じく、岩戸の前で神楽を舞って天照大神に出てきていただこうとする内容です。手力雄と入れ替わるように舞殿に現れた鈿女命。小さな赤い御幣と扇子を持っての舞でしたが、幣を右手に持って舞われていたのが興味深かったです。また先ほどの手力雄の舞と見比べることによって、基本の舞の形がなんとなく見てとれたのも面白く感じられました。最後は「戸取(ととり)の舞」。流れで想像はつきますが、手力雄がいよいよ天の岩戸を開く内容です。この演目では手力雄ではなく戸取という役名で登場します。その面は先ほどの「手力雄の舞」では白でしたが、この演目では赤いものが使われていました。みなさんも思いっきり力を入れると顔が赤くなったりということがあるかと思いますが、千年以上の歴史がある高千穂の神楽でもこういった演出があるんですね。また決して派手さがあるわけではありませんが、戸取が岩戸を持ち上げた時は客席から大きな拍手があったのが嬉しかったですね。
次はお馴染みの芸北神楽より三谷神楽団「矢旗」。質素でありながら厳かな高千穂神楽の後でしたので、いつも見慣れたはずの広島の神楽でも、ちょっと新鮮な感じで見ることができました。およそ百年前に広島に伝わった矢上系石見神楽、そして旧舞の「矢旗」。現代の私達が見ると十分伝統的な神楽ですが、先ほどの高千穂神楽の影響でずいぶん進化したものに見えました。一見同じ舞をしている二人の神ですが、よく見ると微妙に違いがあったりして、それが役の違いに反映されていると思うと本当に面白く感じます。二匹の鬼についても同じで、こちらは舞手さんの個性といったほうがいいのかもしれませんが、回ったり入れ替わったりしてもどっちがどうだかハッキリとわかるんですよね。舞手さんの技量の高さや舞い込み具合がしっかりと感じられました。
そして静岡県の有東木(うとうぎ)芸能保存会「高嶺(たかね)の舞」。この有東木の神楽は太鼓が一人で笛がなんと七人登場されました。そして四人の舞手さんが右手に鈴、左手に刀を持っての舞を披露。四人が同じ動きをしながら、右に周ったり、中に集まったり、外に広がったりといった感じで淡々と舞われていきます。一体どんな意味合いの舞なのかわからなかったのですが、最後までしっかり見せていただきました。そしてもう一つ「松竹梅の舞」。三人の舞手さんが背中に松、竹、梅の入ったかごを背負われて舞うという内容で、とても珍しい印象を受けました。先ほどの高嶺の舞にしても、広島でいうところの「儀式舞」といった感じなのですが、儀式舞を思い起こしてみると、一人で舞う「神降し」、地域によっては「潮祓」を二人で舞ったり、そして「神迎え」では四人舞というふうに、三人での舞はちょっと記憶にありません。ということで舞手さんの舞う位置取りが非常に興味深かったのですが、舞殿の四隅に位置し、一つの隅が空いた状態で順番に周ったり、一人が待つ間に二人が交差したり、一人が中央に来て三人で同じ方向に拝んだりと、とにかく新鮮な感じで拝見させていただきました。
以上、今回は三団体六演目をご紹介させていただきました。「その2」に続きますのでお楽しみに!
(画像は主催者の許可を得て撮影および掲載しております。 撮影 yuk☆kiiさん)
まずは千年以上の歴史を誇る、あの高千穂神楽の登場。宮崎県の三田井地区神楽保存会「手力雄(たぢからお)の舞」です。この演目は広島・島根でいうところの「天の岩戸」の前半部分にあたるようです。こう書くと、おそらくみなさんは「児屋根命と太玉命が出るんじゃない?」と思われるでしょうが、なんとこちらでは力の強い手力雄命が岩戸を探し出すという内容なのです。お馴染みの「天の岩戸」を見慣れている自分にとっても、非常に興味深いものでした。しかしその舞を見ると、やはり神楽の基本は同じということなんでしょうか、まったく新しいものを見るという感覚はありませんでした。これは後でご紹介する静岡県の神楽でも同じでしたね。その手力雄の舞ですが、わかりやすく言うならば、広島の山県舞の鬼のような感じ。腰を落として力強くゆったりと進み、回るところではスッと高くなって回り、再び腰を落として決める。そして機敏な頭の動きで辺りを見回すといった具合。続いて「鈿女の舞」が始まりました。こちらは広島と同じく、岩戸の前で神楽を舞って天照大神に出てきていただこうとする内容です。手力雄と入れ替わるように舞殿に現れた鈿女命。小さな赤い御幣と扇子を持っての舞でしたが、幣を右手に持って舞われていたのが興味深かったです。また先ほどの手力雄の舞と見比べることによって、基本の舞の形がなんとなく見てとれたのも面白く感じられました。最後は「戸取(ととり)の舞」。流れで想像はつきますが、手力雄がいよいよ天の岩戸を開く内容です。この演目では手力雄ではなく戸取という役名で登場します。その面は先ほどの「手力雄の舞」では白でしたが、この演目では赤いものが使われていました。みなさんも思いっきり力を入れると顔が赤くなったりということがあるかと思いますが、千年以上の歴史がある高千穂の神楽でもこういった演出があるんですね。また決して派手さがあるわけではありませんが、戸取が岩戸を持ち上げた時は客席から大きな拍手があったのが嬉しかったですね。
次はお馴染みの芸北神楽より三谷神楽団「矢旗」。質素でありながら厳かな高千穂神楽の後でしたので、いつも見慣れたはずの広島の神楽でも、ちょっと新鮮な感じで見ることができました。およそ百年前に広島に伝わった矢上系石見神楽、そして旧舞の「矢旗」。現代の私達が見ると十分伝統的な神楽ですが、先ほどの高千穂神楽の影響でずいぶん進化したものに見えました。一見同じ舞をしている二人の神ですが、よく見ると微妙に違いがあったりして、それが役の違いに反映されていると思うと本当に面白く感じます。二匹の鬼についても同じで、こちらは舞手さんの個性といったほうがいいのかもしれませんが、回ったり入れ替わったりしてもどっちがどうだかハッキリとわかるんですよね。舞手さんの技量の高さや舞い込み具合がしっかりと感じられました。
そして静岡県の有東木(うとうぎ)芸能保存会「高嶺(たかね)の舞」。この有東木の神楽は太鼓が一人で笛がなんと七人登場されました。そして四人の舞手さんが右手に鈴、左手に刀を持っての舞を披露。四人が同じ動きをしながら、右に周ったり、中に集まったり、外に広がったりといった感じで淡々と舞われていきます。一体どんな意味合いの舞なのかわからなかったのですが、最後までしっかり見せていただきました。そしてもう一つ「松竹梅の舞」。三人の舞手さんが背中に松、竹、梅の入ったかごを背負われて舞うという内容で、とても珍しい印象を受けました。先ほどの高嶺の舞にしても、広島でいうところの「儀式舞」といった感じなのですが、儀式舞を思い起こしてみると、一人で舞う「神降し」、地域によっては「潮祓」を二人で舞ったり、そして「神迎え」では四人舞というふうに、三人での舞はちょっと記憶にありません。ということで舞手さんの舞う位置取りが非常に興味深かったのですが、舞殿の四隅に位置し、一つの隅が空いた状態で順番に周ったり、一人が待つ間に二人が交差したり、一人が中央に来て三人で同じ方向に拝んだりと、とにかく新鮮な感じで拝見させていただきました。
以上、今回は三団体六演目をご紹介させていただきました。「その2」に続きますのでお楽しみに!
(画像は主催者の許可を得て撮影および掲載しております。 撮影 yuk☆kiiさん)
2010,01,12 Tue 21:28
新着コメント