7月21日に広島市の上野学園ホールで「RCC神楽スペシャル」が行われました。夏のホール神楽のイベントとして定着し、今年10年という節目を迎えました。会場はほぼ満席で、神楽ファンのみなさんの期待の高さが伺えましたよ!それでは報告です。
まずは原田神楽団「胴の口」。神楽を舞う時に、最初に演じる儀式舞の一つです。静かな囃子から始まり、段々と激しくなってくる様子がみなさんにもおわかりになったことと思います。派手な上演が多いホール神楽と言えど、やはり始まりは静かな囃子のほうが心が落ち着きますね。そしてこの演目の魅力の一つである「神楽歌」。パンフレットにも一部掲載されていたので、ご覧になりながら楽しまれた方もおられたことでしょう。また、全部はわからなくても、「神楽の声を」「御座へ参ろう」「太鼓の音は」といったフレーズが聞こえるだけでも、ちょっとだけ神聖な気分になれますね。
次は琴庄神楽団「滝夜叉姫」。先ほどの「胴の口」は奏楽メインの演目ですが、この琴庄さんの「滝夜叉姫」も、奏楽に注目。場面ごとだけでなく、舞手さんと一体化して微妙な変化をつけたりと、実に細かな表現が伝わってきました。新舞というジャンルでは、こういった表現が実に重要になってきますが、「厳島」という最新の神楽に挑戦されている琴庄さん、そのあたりの演出はさすがといったところ。そしてクライマックスの盛り上がりも見所の一つ。滝夜叉姫が面を変え、衣装を変えるごとに会場からは大きな拍手が。興奮の連続だった合戦が終わると、そこには元の五月姫の姿が。印象に残る場面ですね。
続いては吉田高校神楽部による「日本武尊」。未来の広島神楽を背負って立つ、若いみなさんの元気溢れる上演でした。広いステージの舞心地は果たしてどうだったでしょうか。きっと相当な練習を詰まれてこの日を迎えられたことと思います。舞手さんも奏楽さんも、その一生懸命ぶりがしっかり伝わってきましたよ!その中でもやはり最後の合戦がよかったですね。一つの演目の中で最も盛り上がる重要な部分ですが、舞も囃子も速くなるため、みんなの呼吸を合わせることが大事です。しかし乱れることなく、それでいてしっかり盛り上げる。簡単そうに見えて難しい部分、日ごろの練習の成果をしっかり見せていただきました。
そして原田神楽団「紅葉狩」。三人の鬼女たちによる美しい舞にまず魅せられます。ゆったりとしている舞の中に、ひらひらと舞い散る紅葉の様子が浮かんでくるようです。しかし鬼女たちが抱いてる怨念は相当なもので、その怒りを隠さず表現する言葉のくだりは、背筋がゾクゾクしますね!平維茂たちが酔い伏し、ついに恨みを晴らさんとする場面の盛り上がりは最高潮で、思わず鬼女側を応援してしまいそうになるほど。そして最初の上演「胴の口」で、神様をお呼びした原田さんですが、勢いで?チャンチキの神様も降臨されました(笑)。客席の後ろにいても、舞殿のすぐそばにいるような、神楽ならではの独特の一体感を味わうことができました。
以上四演目のご紹介でした。後半もお楽しみに!
まずは原田神楽団「胴の口」。神楽を舞う時に、最初に演じる儀式舞の一つです。静かな囃子から始まり、段々と激しくなってくる様子がみなさんにもおわかりになったことと思います。派手な上演が多いホール神楽と言えど、やはり始まりは静かな囃子のほうが心が落ち着きますね。そしてこの演目の魅力の一つである「神楽歌」。パンフレットにも一部掲載されていたので、ご覧になりながら楽しまれた方もおられたことでしょう。また、全部はわからなくても、「神楽の声を」「御座へ参ろう」「太鼓の音は」といったフレーズが聞こえるだけでも、ちょっとだけ神聖な気分になれますね。
次は琴庄神楽団「滝夜叉姫」。先ほどの「胴の口」は奏楽メインの演目ですが、この琴庄さんの「滝夜叉姫」も、奏楽に注目。場面ごとだけでなく、舞手さんと一体化して微妙な変化をつけたりと、実に細かな表現が伝わってきました。新舞というジャンルでは、こういった表現が実に重要になってきますが、「厳島」という最新の神楽に挑戦されている琴庄さん、そのあたりの演出はさすがといったところ。そしてクライマックスの盛り上がりも見所の一つ。滝夜叉姫が面を変え、衣装を変えるごとに会場からは大きな拍手が。興奮の連続だった合戦が終わると、そこには元の五月姫の姿が。印象に残る場面ですね。
続いては吉田高校神楽部による「日本武尊」。未来の広島神楽を背負って立つ、若いみなさんの元気溢れる上演でした。広いステージの舞心地は果たしてどうだったでしょうか。きっと相当な練習を詰まれてこの日を迎えられたことと思います。舞手さんも奏楽さんも、その一生懸命ぶりがしっかり伝わってきましたよ!その中でもやはり最後の合戦がよかったですね。一つの演目の中で最も盛り上がる重要な部分ですが、舞も囃子も速くなるため、みんなの呼吸を合わせることが大事です。しかし乱れることなく、それでいてしっかり盛り上げる。簡単そうに見えて難しい部分、日ごろの練習の成果をしっかり見せていただきました。
そして原田神楽団「紅葉狩」。三人の鬼女たちによる美しい舞にまず魅せられます。ゆったりとしている舞の中に、ひらひらと舞い散る紅葉の様子が浮かんでくるようです。しかし鬼女たちが抱いてる怨念は相当なもので、その怒りを隠さず表現する言葉のくだりは、背筋がゾクゾクしますね!平維茂たちが酔い伏し、ついに恨みを晴らさんとする場面の盛り上がりは最高潮で、思わず鬼女側を応援してしまいそうになるほど。そして最初の上演「胴の口」で、神様をお呼びした原田さんですが、勢いで?チャンチキの神様も降臨されました(笑)。客席の後ろにいても、舞殿のすぐそばにいるような、神楽ならではの独特の一体感を味わうことができました。
以上四演目のご紹介でした。後半もお楽しみに!
2013,07,25 Thu 00:58
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では5月19日(日)『アステールプラザ神楽鑑賞会』の報告の後半です!
中川戸神楽団「茨木」。渡辺綱に左の腕を切り取られた茨木童子が腕を取り返しにきます。
さて、『茨木童子』、酒呑童子のもっとも重要な家来でありまして、大変ファンの多い鬼であります。そんなファンの皆さん、
中川戸神楽団さんのこの演目で見逃してはいけないのはやはり「一番最後」です!茨木童子が虚空飛天の妖術をもって大江山へと「飛び去り」ます!本当に飛び去ってしまいます!まさかここで浮かぶとは!と初めてご覧になった方はびっくりしますよね。
このような場面を目にしますと、神楽の〝舞台芸術化″、保存的伝承ではなく、創造的伝承もあるのだ、ということが実感されます。
最後は琴庄神楽団で「大江山」。
歴史ある大江山。
大江山の酒呑童子は都の人々、仏教・陰陽道を信仰する人々にとって「敵」でありますが彼らからしてみれば住む土地を奪ったあげく仲間だと言ってだまし毒酒を飲ませ、刀を抜いた頼光たちのほうが悪であり、都人こそが鬼であったはずです。
琴庄神楽団さんの「大江山」は、前半の鬼たちと頼光たちの宴が大変愉快にコミカルに描かれていることもあり非常に鬼たちへの同情の念がわいてきます。
「鬼に横道なきものを」という酒呑童子の最期に言ったとされる言葉には征服されていくことに対する悲痛な思いを感じることが出来ます。大江山には古代の鉄づくり、タタラの跡や銅の鉱脈があり、今から40年前に閉山された銀山もありました。
征服されるものとは土着の人々、あるいは山の神、はたまた自然そのもののことであったかもしれません。
こうやって鬼退治の物語を小難しく考えてみると時の権力者のあらゆる思惑や意図、のちの世の人々の苦し紛れの願望などが見え隠れして大変興味深いですね。
お知らせ
7月14日(日)に千代田開発センターで『月一の舞 神楽―台本作家―石丸賢太郎の世界』があります。沢山のご来場お待ちしております!
中川戸神楽団「茨木」。渡辺綱に左の腕を切り取られた茨木童子が腕を取り返しにきます。
さて、『茨木童子』、酒呑童子のもっとも重要な家来でありまして、大変ファンの多い鬼であります。そんなファンの皆さん、
中川戸神楽団さんのこの演目で見逃してはいけないのはやはり「一番最後」です!茨木童子が虚空飛天の妖術をもって大江山へと「飛び去り」ます!本当に飛び去ってしまいます!まさかここで浮かぶとは!と初めてご覧になった方はびっくりしますよね。
このような場面を目にしますと、神楽の〝舞台芸術化″、保存的伝承ではなく、創造的伝承もあるのだ、ということが実感されます。
最後は琴庄神楽団で「大江山」。
歴史ある大江山。
大江山の酒呑童子は都の人々、仏教・陰陽道を信仰する人々にとって「敵」でありますが彼らからしてみれば住む土地を奪ったあげく仲間だと言ってだまし毒酒を飲ませ、刀を抜いた頼光たちのほうが悪であり、都人こそが鬼であったはずです。
琴庄神楽団さんの「大江山」は、前半の鬼たちと頼光たちの宴が大変愉快にコミカルに描かれていることもあり非常に鬼たちへの同情の念がわいてきます。
「鬼に横道なきものを」という酒呑童子の最期に言ったとされる言葉には征服されていくことに対する悲痛な思いを感じることが出来ます。大江山には古代の鉄づくり、タタラの跡や銅の鉱脈があり、今から40年前に閉山された銀山もありました。
征服されるものとは土着の人々、あるいは山の神、はたまた自然そのもののことであったかもしれません。
こうやって鬼退治の物語を小難しく考えてみると時の権力者のあらゆる思惑や意図、のちの世の人々の苦し紛れの願望などが見え隠れして大変興味深いですね。
お知らせ
7月14日(日)に千代田開発センターで『月一の舞 神楽―台本作家―石丸賢太郎の世界』があります。沢山のご来場お待ちしております!
2013,06,30 Sun 22:37
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皆さんこんにちは!梅雨に突入いたしました。いかがお過ごしでしょうか?
さて、5月19日(日)に広島市中区のアステールプラザ中ホールで『アステールプラザ神楽鑑賞会』がありました。この日は一日天気が悪かったのですが中ホールの前には午後の開場前からかぐらー(?)の皆さんの大行列ができていました。
今回はそんな雨にも負けない熱気溢れる鑑賞会を二度に分けて報告していきたいと思います。
ところで皆さん、広島の神楽にとって「鬼」というのは切っても切り離せない存在ですよね?(上手く言ったつもりじゃないですよ?) 子供の頃は怖いと思っていた人も、いつの間にか空想上の存在であるのだと理解していく、けれどテレビなんかで「これが鬼のミイラだ!」なんてことをやっているのを観たら「やっぱりどこかにいた(いる)のかも・・」なんてロマンを懐いたりして。
しかし、今回は学問的に〈鬼〉=「時の権力者が時代に服従わぬもの(朝廷から隠れて鉱山で働く者、鉄作りをして武器や農具を蓄える地方の豪族等)をそう呼ぶことによって彼らの虐殺と略奪を正当化した」という見解をベースに神楽を観ていくことにします。
まず、はじめは宮乃木神楽団で新作「大和葛城」。この演目は「土蜘蛛」「葛城山」の演目として広く受け継がれてきたものを宮乃木神楽団さんが独自の視点と解釈から演目の再構成をしたものです。
暗い舞台から一際威光を放つ威厳たっぷりの頼光の登場から始まります。
話は中盤、
「汝知らずや我昔大和朝廷に服従わざる者ならば綱に絡められ滅び死ぬ者なり、いかに頼光、我等あじわいたる、地を這い土を喰う苦しさを、思い知れ」
迫力ある、心にグサッとくるこの口上、これこそが今回の鬼の叫び、土蜘蛛の叫びです。土蜘蛛とは、元は葛城氏などの有力な豪族が朝廷との戦いに敗れ葛城山へと逃げ隠れ住むようになり、そのような歴史の表舞台から消されながらも生き延びて天下を脅かす者たちを大和国家側が異族視して呼んだものです。
今回の宮乃木神楽団さんによる新作大和葛城、ご覧になった皆さんにはそんな蔑まれた彼らの憎しみと怒りの叫びがきっと聞こえたことでしょう。
続いて、琴庄神楽団「山姥 (やまうば、やまんば)」。この演目は金太郎、そう、坂田金時誕生の物語です。坂田金時といえばあの源頼光の四天王の一人です。金太郎出生には諸説ありますが、母親が山姥であるという伝説があります。
また、金時は、腹かけ姿(金太郎を想像してください)は鍛冶を象徴し、王の文字はマサカリの象形文字であること、伝承の地には鉄づくり・タタラ跡や銅山の跡が残されていることからいち早く鉄文化を手に入れた豪族であるとも考えられます。さてそんな金時がどのような経緯で頼光に見いだされるのでしょうか。
琴庄神楽団の山姥は、信州の明山で山賊となった血の気多い金時=怪童丸の物語から始まります。
この演目で注目は金時=怪童丸と母の別れの場面です。たびたび神楽では別れの場面が描かれますが、今回もとても素敵な別れの場面を見せて頂きました。
怪童丸=金時の舞は、これから立派に仕えていくであろうことが想像できる力強い舞でしたね。
後半に続く・・・・
さて、5月19日(日)に広島市中区のアステールプラザ中ホールで『アステールプラザ神楽鑑賞会』がありました。この日は一日天気が悪かったのですが中ホールの前には午後の開場前からかぐらー(?)の皆さんの大行列ができていました。
今回はそんな雨にも負けない熱気溢れる鑑賞会を二度に分けて報告していきたいと思います。
ところで皆さん、広島の神楽にとって「鬼」というのは切っても切り離せない存在ですよね?(上手く言ったつもりじゃないですよ?) 子供の頃は怖いと思っていた人も、いつの間にか空想上の存在であるのだと理解していく、けれどテレビなんかで「これが鬼のミイラだ!」なんてことをやっているのを観たら「やっぱりどこかにいた(いる)のかも・・」なんてロマンを懐いたりして。
しかし、今回は学問的に〈鬼〉=「時の権力者が時代に服従わぬもの(朝廷から隠れて鉱山で働く者、鉄作りをして武器や農具を蓄える地方の豪族等)をそう呼ぶことによって彼らの虐殺と略奪を正当化した」という見解をベースに神楽を観ていくことにします。
まず、はじめは宮乃木神楽団で新作「大和葛城」。この演目は「土蜘蛛」「葛城山」の演目として広く受け継がれてきたものを宮乃木神楽団さんが独自の視点と解釈から演目の再構成をしたものです。
暗い舞台から一際威光を放つ威厳たっぷりの頼光の登場から始まります。
話は中盤、
「汝知らずや我昔大和朝廷に服従わざる者ならば綱に絡められ滅び死ぬ者なり、いかに頼光、我等あじわいたる、地を這い土を喰う苦しさを、思い知れ」
迫力ある、心にグサッとくるこの口上、これこそが今回の鬼の叫び、土蜘蛛の叫びです。土蜘蛛とは、元は葛城氏などの有力な豪族が朝廷との戦いに敗れ葛城山へと逃げ隠れ住むようになり、そのような歴史の表舞台から消されながらも生き延びて天下を脅かす者たちを大和国家側が異族視して呼んだものです。
今回の宮乃木神楽団さんによる新作大和葛城、ご覧になった皆さんにはそんな蔑まれた彼らの憎しみと怒りの叫びがきっと聞こえたことでしょう。
続いて、琴庄神楽団「山姥 (やまうば、やまんば)」。この演目は金太郎、そう、坂田金時誕生の物語です。坂田金時といえばあの源頼光の四天王の一人です。金太郎出生には諸説ありますが、母親が山姥であるという伝説があります。
また、金時は、腹かけ姿(金太郎を想像してください)は鍛冶を象徴し、王の文字はマサカリの象形文字であること、伝承の地には鉄づくり・タタラ跡や銅山の跡が残されていることからいち早く鉄文化を手に入れた豪族であるとも考えられます。さてそんな金時がどのような経緯で頼光に見いだされるのでしょうか。
琴庄神楽団の山姥は、信州の明山で山賊となった血の気多い金時=怪童丸の物語から始まります。
この演目で注目は金時=怪童丸と母の別れの場面です。たびたび神楽では別れの場面が描かれますが、今回もとても素敵な別れの場面を見せて頂きました。
怪童丸=金時の舞は、これから立派に仕えていくであろうことが想像できる力強い舞でしたね。
後半に続く・・・・
2013,06,30 Sun 21:47
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6月2日(日)に千代田開発センターで、『壬生の花田植協賛神楽公演―ふるさとの神楽―』がありました。
大勢の皆さんが雨の中、遠いところではなんと滋賀県からはるばるとお越しくださいました!
壬生の花田植といえば平成23年にユネスコの世界無形文化遺産として登録されたことで有名です。今回の月一は世界に誇る貴重な文化資源の一つである壬生の花田植と協賛ということで、千代田開発センターから、花田植の会場付近である、壬生商店街入り口まで無料シャトルバスも用意されました。
それにしても壬生地区というのは1年を通して神々とともに生きる文化が沢山残っているとても素敵な地域だなあって改めて思いますね。
では、報告に入ります!
八岐大蛇は中国山地の山々から流れ出した川のことである、とよく言われます。
いつの時代も人間にとって水は無くてはならない存在であると同時に時に牙をむく恐ろしい存在でもあります。
ということでまずは、山王神楽団「八岐大蛇」。
今回、「あ!いいな」と思ったのは、お馴染みの「実はアクロバティックおばあちゃん(勝手に付けました)」の登場の時です。一生懸命翁のあとをついて歩いている(省略)おばあちゃんに会場から「がんばれよ!」の声が。やっぱりいいですね。観客と舞台の一体感、ふるさとの温かさですよ。
それにしても個人的に、山王神楽団さんの白い大蛇さんが可愛く思えて仕方がありませんでした。たぶんこれほど愛着湧くのもそれだけ面に表情があるっていうことなのでしょうか。
続いて中川戸神楽団「土蜘蛛」。中川戸神楽団さんの土蜘蛛では、「病に苦しむ頼光のために侍女胡蝶が典薬頭(てんやくのかみ)に身薬をもらいに行くが、実は典薬頭(てんやくのかみ)は土蜘蛛が化けていたものでしめしめと土蜘蛛は胡蝶になりかわる」、という場面が詳細に描かれています。中川戸神楽団さんの神楽はなるほどこういう解釈もあるのか!といつも驚かされることが多いです!
激しい野望がうかがえる変化には会場の気分も盛り上がりました!
ところで、この土蜘蛛の伝説のふるさと葛城山のふもとに建てられた神社の境内には、「蜘蛛塚」というのがあるそうですよ。
お次は大塚神楽団「道成寺(どうじょうじ)」。
この物語は、安珍という修行僧が熊野権現へお参りの途中に立ち寄った紀伊の国の宿で、宿の娘清姫に恋心をいだかれ、「参拝のあとにもう一度戻ってくるから」と言っておきながらそのまま奥州に逃げようとする・・が・・・というものです。
激しい恋心がときに女を蛇に変える!!!人生経験の豊かな観客の皆さんはもしかしたら思うところもあったかもしれません。彼女が火をはく姿は夢にも出そうな迫力でした。
だけどこの物語、怖いだけでは終わらないんです。ぜひ最後までご覧あれ!
最後は琴庄神楽団「羅生門」。(やむを得ない事情のため予定していた「滝夜叉姫」から演目の変更がありました。)
琴庄神楽団さんの羅生門は前日の中国地方選抜神楽競演大会におきまして見事準優勝に輝きました。ほやほやの羅生門ごちになりました!
ということで「さすが!」と、叫ばずにはいられなかったのは、酒呑童子が白妙に乗り移る瞬間、離れる瞬間!
白妙に乗り移った酒呑童子じゃありませんが「冥土の土産にお見せくださいやの」なすごい早変わりでした。
大勢の皆さんが雨の中、遠いところではなんと滋賀県からはるばるとお越しくださいました!
壬生の花田植といえば平成23年にユネスコの世界無形文化遺産として登録されたことで有名です。今回の月一は世界に誇る貴重な文化資源の一つである壬生の花田植と協賛ということで、千代田開発センターから、花田植の会場付近である、壬生商店街入り口まで無料シャトルバスも用意されました。
それにしても壬生地区というのは1年を通して神々とともに生きる文化が沢山残っているとても素敵な地域だなあって改めて思いますね。
では、報告に入ります!
八岐大蛇は中国山地の山々から流れ出した川のことである、とよく言われます。
いつの時代も人間にとって水は無くてはならない存在であると同時に時に牙をむく恐ろしい存在でもあります。
ということでまずは、山王神楽団「八岐大蛇」。
今回、「あ!いいな」と思ったのは、お馴染みの「実はアクロバティックおばあちゃん(勝手に付けました)」の登場の時です。一生懸命翁のあとをついて歩いている(省略)おばあちゃんに会場から「がんばれよ!」の声が。やっぱりいいですね。観客と舞台の一体感、ふるさとの温かさですよ。
それにしても個人的に、山王神楽団さんの白い大蛇さんが可愛く思えて仕方がありませんでした。たぶんこれほど愛着湧くのもそれだけ面に表情があるっていうことなのでしょうか。
続いて中川戸神楽団「土蜘蛛」。中川戸神楽団さんの土蜘蛛では、「病に苦しむ頼光のために侍女胡蝶が典薬頭(てんやくのかみ)に身薬をもらいに行くが、実は典薬頭(てんやくのかみ)は土蜘蛛が化けていたものでしめしめと土蜘蛛は胡蝶になりかわる」、という場面が詳細に描かれています。中川戸神楽団さんの神楽はなるほどこういう解釈もあるのか!といつも驚かされることが多いです!
激しい野望がうかがえる変化には会場の気分も盛り上がりました!
ところで、この土蜘蛛の伝説のふるさと葛城山のふもとに建てられた神社の境内には、「蜘蛛塚」というのがあるそうですよ。
お次は大塚神楽団「道成寺(どうじょうじ)」。
この物語は、安珍という修行僧が熊野権現へお参りの途中に立ち寄った紀伊の国の宿で、宿の娘清姫に恋心をいだかれ、「参拝のあとにもう一度戻ってくるから」と言っておきながらそのまま奥州に逃げようとする・・が・・・というものです。
激しい恋心がときに女を蛇に変える!!!人生経験の豊かな観客の皆さんはもしかしたら思うところもあったかもしれません。彼女が火をはく姿は夢にも出そうな迫力でした。
だけどこの物語、怖いだけでは終わらないんです。ぜひ最後までご覧あれ!
最後は琴庄神楽団「羅生門」。(やむを得ない事情のため予定していた「滝夜叉姫」から演目の変更がありました。)
琴庄神楽団さんの羅生門は前日の中国地方選抜神楽競演大会におきまして見事準優勝に輝きました。ほやほやの羅生門ごちになりました!
ということで「さすが!」と、叫ばずにはいられなかったのは、酒呑童子が白妙に乗り移る瞬間、離れる瞬間!
白妙に乗り移った酒呑童子じゃありませんが「冥土の土産にお見せくださいやの」なすごい早変わりでした。
2013,06,19 Wed 22:19
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皆さんおはようございます!会えない時のためにこんにちはこんばんはおやすみなさい!(何の映画のセリフでしょうか)
さて、
2月10日(日)に千代田開発センターで『月一の舞い』がありました!今回のテーマは『神楽伝説ー平家一族ー』です。
なんだかこのようなテーマを見ると日本史を改めて勉強し直したくなりますね。
まず、始めは富士神楽団「天慶新皇記」。
富士神楽団さんは今回初めて月一で舞われました。
父の所領の多くが伯父の平国香により強奪された平将門が二人の弟、将頼と将平と共に国香を討つところから始まります。
国香を取り囲む威圧感、登場の迫力から将門の怒りが伝わります。
強力な関東の支配者となる将門。
ですが
悲しいかな、あくまで一族との私闘であったものが、不本意ながらもいつからか朝廷に対して反旗を翻すかたちになります。いや、若しくは、司会の斉藤さんの説明にもあったように、本当に地方が貧しさにあえぐ時代を背景に、財力と権力を持ち始めた将門は万民和平の新しいくにづくりを目指し、反旗を翻したのかもしれない・・・
一方父である国香を将門に討たれた平貞盛(つまり将門といとこ)は藤原秀郷を味方に『天慶の乱』で将門を破ります。闘いが闘いを呼んだのですね。
将門が、「逃げてこの怨みはらせ」と二人の弟に伝える場面では何とも言えない気持ちになりました。
貞盛と秀郷の喜びの舞は、まさにその後の子孫達による平家繁栄を物語るようでした。
今回、(40代なのに30代に見える若々しい)山田団長にインタビューをさせていただきましたが、その際、「どんな思いで将門が死んだか」「将門の思いが伝われば」と話して下さいました。
神楽では悪い人として将門を描くことの悩みを抱えられていることも始まる前にお話して下さいましたよね。それゆえ未だ未完成であると。
この演目はあくまで貞盛の視点から描かれた演目ですが、皆さんはどうとらえられたでしょうか?
続いて、
東山神楽団、「滝夜叉姫」。
五月姫(滝夜叉姫)の父は、言わずと知れた将門です。
このようにテーマがあることによって独立した演目に繋がりを感じることが出来るのは月一の舞いの面白い部分であります。
天慶の乱で平将門が討たれ、一族郎党滅ぼされるもたった1人生き残った三女五月姫の物語。この物語は江戸時代の終わり、歌舞伎として発表されたそうです。
さてさて「滝夜叉姫」。団の色がとても出る演目です。怨念の塊となった滝夜叉姫も死の間際改心したと言われたりもします。 そこのところをどのように解釈し表現されているのか、毎回楽しみにしておられる方も多いのではないでしょうか?
最後、「将門のもとへ昇天」した滝夜叉姫。五月姫の顏に戻って舞っているとき、そこにまだ「鬼」を感じました。なんだか物思いに耽りそうになりました吉井です。
今回私には東山神楽団さんの滝夜叉姫、最後にまだ父の無念を思いながら悔しい思いの中死んでいった、そんな印象を受けました。
次は旭神楽団「紅葉狩」。
こちらは、「平維茂」の武勇伝で、『天慶の乱』から、およそ30年後のことです。30年という長さは、当時はどんなものだったんでしょうね~・・なんて、またまたボケッとしちゃって(笑)
はじめ、鬼女が二人登場。
鬼女が三人というのを良く見ますが今回は二人です!鬼女鬼女と言ってますが、とても落ち着いた着物、お化粧
華やかさを出すことの多い紅葉狩なのでとても珍しく思いました!
そしてまたまた変わっていると思ったのは『宴』!
ここでは楽は笛のみ。別世界に誘うような不思議な時間が流れていくようでした・・一方維茂達の酔う過程というのがなんだかとてもリアルに感じましたよ。
しっとりとした穏やかで優雅な舞。まさか、このおしとやかな人たちが鬼女なの???という印象です。
だけどその分、、姿を現すときは・・・恐ろしいかったですよね・・・
最後は
上本地神楽団「壇の浦」。
斉藤さんの「神楽・壇の浦は、清盛が築き上げた平家王国が眩しく輝くほどに、悲しい平家の最後を語り伝えるのです。」
の、言葉からすでに涙腺がムズムズする筆者(笑)
この壇之浦、やはり見所は二位尼 平時子と平知盛の親子の別れの場面です。
(釣り太郎さんも捨てがたいけど(笑))
これにて今生の別れなり
波の下にも都あり
全てを悟る母の姿。
(二位尼をされた沖本さん、本当に『母』を感じる迫真の演技でした)
知盛の叫び、
いかに義経ー!
全てを悟ったとき、母を失ったとき、それを共に見届けてきたからその叫びが痛いほど心に響きます。
本当に辛い、最期の、そして燃え尽きる為の、全てを悟った闘い。
「見るべき程の事をば見つ。今はただ自害せん。」
知盛の最期は碇を担いだとも、鎧を二枚着て錘にし入水したとも言われます。
遺体、生きたまま、いずれにせよ浮かび上がって晒し物になり辱しめを受けることを避けるためだといいます。
ここら辺で、
筆者も燃え尽きそうなのでそろそろやめておきます(笑)
今回テーマが「平氏一族」ということで先祖や歴史に思いを馳せる、そんな時間が過ごせたような気がします。
最後に、富士神楽団団長山田さんにインタビューさせてもらったときに少子高齢化の話をされていたことに触れておきます。「今はまだ後継者はいる、しかし10年後とかを考えたときに・・・」。
ファンを抱えながらも消滅していく神楽団があること。伝統とか文化とかそういうものは脆く、本当に大切にしていかないと簡単に壊れてしまうこと、色々と頭をめぐりますね。
次回「月一の舞い」は千代田開発センターにて3月10日(日)にあります。是非足をお運び下さいませ。
(吉井利佳)
さて、
2月10日(日)に千代田開発センターで『月一の舞い』がありました!今回のテーマは『神楽伝説ー平家一族ー』です。
なんだかこのようなテーマを見ると日本史を改めて勉強し直したくなりますね。
まず、始めは富士神楽団「天慶新皇記」。
富士神楽団さんは今回初めて月一で舞われました。
父の所領の多くが伯父の平国香により強奪された平将門が二人の弟、将頼と将平と共に国香を討つところから始まります。
国香を取り囲む威圧感、登場の迫力から将門の怒りが伝わります。
強力な関東の支配者となる将門。
ですが
悲しいかな、あくまで一族との私闘であったものが、不本意ながらもいつからか朝廷に対して反旗を翻すかたちになります。いや、若しくは、司会の斉藤さんの説明にもあったように、本当に地方が貧しさにあえぐ時代を背景に、財力と権力を持ち始めた将門は万民和平の新しいくにづくりを目指し、反旗を翻したのかもしれない・・・
一方父である国香を将門に討たれた平貞盛(つまり将門といとこ)は藤原秀郷を味方に『天慶の乱』で将門を破ります。闘いが闘いを呼んだのですね。
将門が、「逃げてこの怨みはらせ」と二人の弟に伝える場面では何とも言えない気持ちになりました。
貞盛と秀郷の喜びの舞は、まさにその後の子孫達による平家繁栄を物語るようでした。
今回、(40代なのに30代に見える若々しい)山田団長にインタビューをさせていただきましたが、その際、「どんな思いで将門が死んだか」「将門の思いが伝われば」と話して下さいました。
神楽では悪い人として将門を描くことの悩みを抱えられていることも始まる前にお話して下さいましたよね。それゆえ未だ未完成であると。
この演目はあくまで貞盛の視点から描かれた演目ですが、皆さんはどうとらえられたでしょうか?
続いて、
東山神楽団、「滝夜叉姫」。
五月姫(滝夜叉姫)の父は、言わずと知れた将門です。
このようにテーマがあることによって独立した演目に繋がりを感じることが出来るのは月一の舞いの面白い部分であります。
天慶の乱で平将門が討たれ、一族郎党滅ぼされるもたった1人生き残った三女五月姫の物語。この物語は江戸時代の終わり、歌舞伎として発表されたそうです。
さてさて「滝夜叉姫」。団の色がとても出る演目です。怨念の塊となった滝夜叉姫も死の間際改心したと言われたりもします。 そこのところをどのように解釈し表現されているのか、毎回楽しみにしておられる方も多いのではないでしょうか?
最後、「将門のもとへ昇天」した滝夜叉姫。五月姫の顏に戻って舞っているとき、そこにまだ「鬼」を感じました。なんだか物思いに耽りそうになりました吉井です。
今回私には東山神楽団さんの滝夜叉姫、最後にまだ父の無念を思いながら悔しい思いの中死んでいった、そんな印象を受けました。
次は旭神楽団「紅葉狩」。
こちらは、「平維茂」の武勇伝で、『天慶の乱』から、およそ30年後のことです。30年という長さは、当時はどんなものだったんでしょうね~・・なんて、またまたボケッとしちゃって(笑)
はじめ、鬼女が二人登場。
鬼女が三人というのを良く見ますが今回は二人です!鬼女鬼女と言ってますが、とても落ち着いた着物、お化粧
華やかさを出すことの多い紅葉狩なのでとても珍しく思いました!
そしてまたまた変わっていると思ったのは『宴』!
ここでは楽は笛のみ。別世界に誘うような不思議な時間が流れていくようでした・・一方維茂達の酔う過程というのがなんだかとてもリアルに感じましたよ。
しっとりとした穏やかで優雅な舞。まさか、このおしとやかな人たちが鬼女なの???という印象です。
だけどその分、、姿を現すときは・・・恐ろしいかったですよね・・・
最後は
上本地神楽団「壇の浦」。
斉藤さんの「神楽・壇の浦は、清盛が築き上げた平家王国が眩しく輝くほどに、悲しい平家の最後を語り伝えるのです。」
の、言葉からすでに涙腺がムズムズする筆者(笑)
この壇之浦、やはり見所は二位尼 平時子と平知盛の親子の別れの場面です。
(釣り太郎さんも捨てがたいけど(笑))
これにて今生の別れなり
波の下にも都あり
全てを悟る母の姿。
(二位尼をされた沖本さん、本当に『母』を感じる迫真の演技でした)
知盛の叫び、
いかに義経ー!
全てを悟ったとき、母を失ったとき、それを共に見届けてきたからその叫びが痛いほど心に響きます。
本当に辛い、最期の、そして燃え尽きる為の、全てを悟った闘い。
「見るべき程の事をば見つ。今はただ自害せん。」
知盛の最期は碇を担いだとも、鎧を二枚着て錘にし入水したとも言われます。
遺体、生きたまま、いずれにせよ浮かび上がって晒し物になり辱しめを受けることを避けるためだといいます。
ここら辺で、
筆者も燃え尽きそうなのでそろそろやめておきます(笑)
今回テーマが「平氏一族」ということで先祖や歴史に思いを馳せる、そんな時間が過ごせたような気がします。
最後に、富士神楽団団長山田さんにインタビューさせてもらったときに少子高齢化の話をされていたことに触れておきます。「今はまだ後継者はいる、しかし10年後とかを考えたときに・・・」。
ファンを抱えながらも消滅していく神楽団があること。伝統とか文化とかそういうものは脆く、本当に大切にしていかないと簡単に壊れてしまうこと、色々と頭をめぐりますね。
次回「月一の舞い」は千代田開発センターにて3月10日(日)にあります。是非足をお運び下さいませ。
(吉井利佳)
2013,02,17 Sun 11:11